『inifinite synthesis 4』インタビュー
fripSide 八木沼悟志が語る、アレンジに対するこだわり「メロディメーカーでいることが第一」
作詞家・八木沼悟志、お仕事お待ちしております
ーーしかも八木沼さんの詞が面白いのが「がんばれ!」「愛している」といったストレートな言葉は使わない。抽象性の高い、でも誰にも心当たりがある……「あっ『がんばれ』って言ってくれてる」「これはラブソングだな」とわかる言葉を選んでいる。
八木沼:そのつもりでがんばってるから、もうちょっと皆さん、作詞家としての僕にも注目してほしいんですよねえ(笑)。
ーー作曲家、アレンジャー、プロデューサーとして見られがちですよね。
八木沼:「fripSideでは八木沼が作曲するのが当たり前」って思われてるんですよね。ただ、今回のアルバムについては特に注目してもらいたい曲がありまして。それが7曲目の「under a starlit sky」なんですけど……。
ーー斎藤真也さんが作曲・編曲しているから、八木沼さんは作詞しかしていない。
八木沼:人のメロディに歌詞を当てたのは初めてだからすごい気合いを入れて書いたので、ぜひ聴いてもらいたいし、関係者の方におかれましては、ぜひ作詞家としての発注をしていただきたいですね(笑)。
ーーこの曲においては、八木沼さん流の作詞術……作曲の段階で浮かんでいたイメージを言語化するという方法は使えないわけですよね。
八木沼:斎藤さんが作曲してますからね。なので、いただいた曲を聴いているときに浮かんできたイメージを言語化するというプロセスで書いています。
ーー難産でした?
八木沼:いや。2時間で書けましたね。
ーーおーっ!
八木沼:作曲もそうなんですけど、作詞で悩むこともほとんどないんですよね。特にこと歌モノにおいては、言葉のほうが音階よりも自由度が高いですから。
ーー12音階に縛られることなく、自由にどんな言葉でも選び取れますからね。
八木沼:難産とまではいかないけど、アレンジが一番大変なんじゃないかなあ。お客さんにどう聞こえるか、つまり曲の顔になるのがアレンジじゃないですか。しかも僕の場合はメロディを第一に考えているからこそ、そのメロディが映えるアレンジにしたい。だからアレンジにはけっこう神経は使ってますよ。
ーーそんな風に神経を使っている八木沼さんが考える「fripSideらしさ」「fripSideなるもの」って言語化できたりします?
八木沼:いや、ホントに良し悪しというか、好き嫌いというか。直感的なものですね。ただ「僕らはアニソンアーティストである」というところが一つの基準にはなっているかもしれないですね。
ーー「アニソンアーティストであることが基準」?
八木沼:僕らはアルバムを制作して、その中から先行シングルをリリースするというスタイルではなく、アニメのオープニングテーマ、エンディングテーマというシングルをリリースしたあとアルバムを作るスタイルなんです。だからシングルが軸になるというか。今回であれば「マクロからミクロへの視点の移動」という構想と併せて、「killing bites」と「divine criminal」というシングル曲がまずあって、この曲の周りをどういう曲が、どういう順番で彩っていたらトータルバランスに優れた1枚のアルバムができあがるかを考えながら作業を進めることになる。だからこそ最初の話に戻っちゃうんですけど、1曲単位のビートやアレンジにはあまりこだわりがなくなっていくんです。「killing bites」と「divine criminal」を含んだアルバムというパッケージを作るとき、ほかにどんなメロディがあると美しいのか、そしてそのメロディはどういうアレンジに乗せると美しいのか、を考えることになるから、ある意味必然的にアルバム収録曲のメロディとそれに伴うアレンジが決まっていく、という感じなんですよね。
ーーではこのアルバムが今までとは肌合いが違うように感じたのは、「killing bites」がテーマソングになっていたアニメ『キリングバイツ』や、「divine criminal」がテーマソングだった『されど罪人は竜と踊る』との出合いがあったからとも……。
八木沼:言えるでしょうね。
ーーただ、他方で「実はアニメはあんまり観ないんだけど、fripSideは聴くよ」というリスナーも少なからずいらっしゃると思うんですけど……。
八木沼:そういう方にも新しいアルバムとして楽しんでいただけるようにするのは、アーティストとして当然の責任だとは思っています。だから大変といえば大変なんですよ。そうやってずっと聴いてくださっている人たちの期待というハードルもそうだし、自分自身もキャリアを積んできたことで自分に「もっともっと」を要求する、そういうハードルも年々高くなっているから。ただ、それを飛び越えられなくなったときは音楽を辞めるときだと思うし、今のところ飛び越えられなかったことはなかった自負はあります。実際、今回も飛び越えられたな、と思ってますし。なので是非手にとってこの作品を楽しんでいただきたいですね。
(取材・文=成松哲)
■リリース情報
『inifinite synthesis 4』
発売:2018年10月10日(水)
価格:初回限定盤(CD+Blu-ray) 5,300円(tax out)
初回限定盤(CD+DVD) 4,800円(tax out)
通常盤(CD) 3,000円(tax out)
<収録楽曲(全14曲)>
1. Edge of the Universe
2. killing bites
(TVアニメ『キリングバイツ』オープニングテーマ)
3. divine criminal
(TVアニメ『されど罪人は竜と踊る』オープニングテーマ)
4. snow of silence
5. white relation(IS4 version)
6. colorless fate -version 2018-
7. under a starlit sky
8. breaking dawn
9. one dream
10. adverse wind
(中国スマホゲーム『とある魔術の禁書目録』主題歌)
11. beyond the horizon
12. you only live once
13. close to you
14. Like a blink, a short night.
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