HKT48 宮脇咲良らIZ*ONE専念は改革の始まり? 田中秀臣が48グループのグローバル化を読む

 おそらく宮脇ら三人が、現在のイメージのままで二年半後戻ってくることはないだろう。いまのファンの人たちにはそれは不安でもあり、また同時にその期間も変わらず応援を続けることで、彼女たちを通して世界のアイドル市場の鼓動をともに共有できる。その意味では、日本のアイドルの特徴といえる、未完成なアイドルがファンと感情を共有しながら成長の物語を織りなす、というビジネスモデルが、グローバルな場面で体験できるかもしれない。つまり彼女たちのファンもまたグローバル化の中で大きく変容するだろう。これは画期的なことになる。

 もちろん不安もあるだろう。特に中心メンバーである宮脇と矢吹が抜けたHKT48には人気の面で不確実性が大きくなる。だが、他のHKT48のメンバーにとっては、このエースふたりの不在はチャンスである。矢吹と共に“なこみく”と称される田中美久や田島芽瑠ら総選挙の上位陣、また個人的に推すが小田彩加にも飛躍の機会になる。もちろん先日の『AKB48グループ第2回ユニットじゃんけん大会~空気を読むな、心を読め!~』で優勝した新星、松田祐実(AKB48の多田京加とのユニットFortune cherryで優勝)にも注目が集まるだろう。HKT48はその誕生からアイドル激戦区といわれる福岡でもまれ、そして日本のアイドルの中心地である東京圏から離れてはいるものの、その知名度と人気はAKB48グループの中でも上位をキープし続けている。アイドルの玄界灘ともいえる荒波でもまれたHKT48にとって、同グループにとっての新しい成長が始まると期待したい。

 もともとその誕生の時からHKT48は国際市場をターゲットにしていた。福岡空港のハブ空港としての位置づけを活用して、韓国、中国など国際的な市場に自らおもむき、または海外からのファンやエンタメ業界からの発注に柔軟に応えることを目的にしていたといわれている。その可能性は残念ながらいまのところ本格的なものになってはいない。

 今回の宮脇、矢吹、そして本田の海外市場への挑戦と飛躍は、AKB48グループの念願だった海外市場への本格的参入の扉をひらく、大きな革新(イノベーション)になることだろう。三人に激励を心から送りたい。

■田中秀臣
1961年生まれ。現在、上武大学ビジネス情報学部教授。専門は経済思想史、日本経済論。「リフレ派」経済学者の代表的論客として、各メディアで発言を続けている。サブカルチャー、アイドルにも造詣が深い。著作に、『AKB48の経済学』、『日本経済復活が引き起こすAKB48の終焉』『デフレ不況』(いずれも朝日新聞出版社)、『ご当地アイドルの経済学』(イースト新書)など多数。『昭和恐慌の研究』(共著、東洋経済新報社)で第47回日経・経済図書文化賞受賞。好きなアイドルは、櫻井優衣、WHY@DOLL、あヴぁんだんど、鈴木花純、26時のマスカレイド、TWICE、NGT48ら。Twitterアイドル・時事専用ブログ

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