菅原卓郎&滝 善充が語る、キツネツキを通して気づいたこと「9mm自体の面白さを見つけた」

 9mm Parabellum Bulletの菅原卓郎と滝 善充が、2017年に結成した“キツネツキ”。その名前然り、菅原がボーカル&ギター、滝がドラム(!)を務める編成然り、「取り憑かれメンバー」と称して様々なバンドマンが参加するライブ然り、気になるポイントが満載のバンドだが、このたび1stアルバム『キツネノマド』がリリースされる。そこで、アルバムの収録曲の話を入り口として、二人に数々の謎を解き明かしてもらった。(高橋美穂)

滝 善充「(ドラムを叩きたいという欲求が)元から物凄くあった」

ーー歌詞や曲や活動など、このバンドのいろいろなところが、キツネツキという名前に引っ張られているような印象があるのですが、そもそも名前の由来って?

菅原卓郎

菅原卓郎(以下、菅原):人を食ったような名前にしたかったんですね。だから、キツネツキっていう回文にして。歌詞も、バンド名のテンションに合わせて書いていったんです。コンセプトっていうほどでもないんだけど、「こんぐらいにしよう」っていうくらいの塩梅ですね(笑)。曲も、簡単にしようってね。

滝 善充(以下、滝):そう(笑)。あとは日本っぽさや、妖怪的な感じが出ればいいなって。それこそ、最初の頃から、童謡のような世界観も出せればなっていうアイデアもありましたね。それで、童謡の本物(のカバー)もやっちゃったっていう(笑)。

菅原:でも、一生懸命その世界観を作ろうっていうのでもなくて、さっき言った“塩梅”みたいなものを積み重ねていったっていう。シリアスにならないように気を付けています。それが、このバンドを回す……。

滝:ポイントです。

ーー(笑)。それにしても、キツネツキって、ふと思い浮かぶような名前じゃない気がしますが。

菅原:いや、ふと思い浮かんだんです。バンド名を考えるのが好きなバンドマンっているんですよ(笑)。(マキシマム ザ ホルモンの)マキシマムザ亮君とか。僕もそうなんですよね。で、組む予定もないのに、バンド名になりそうな言葉をメモしていて、その中に“キツネツキ”があったんです。そもそもアルカラのフェスに出るために組んだので、出たとこ勝負で、観る人もなんだかわかんない状態に、キツネツキっていう名前が合ってるなって。

滝:そうそう。でも時間が、まーあんまりにもなかった(笑)。それでも曲を作ったんですけど、そういうところからも、すぐに覚えられるように、曲が簡単になったんです。しかも、最初のライブでは橋本塁さん(カメラマン)がベースを弾いてくれたので、ベース初心者の塁さんでも弾ける曲、っていう。

滝 善充

ーーなるほどね。でも、『キツネノマド』の1曲目「ふたりはサイコ」は、簡単というイメージからはみ出している曲だと思うんですけど(笑)。

二人:ははははは!

菅原:そう思ってもらえて嬉しいです。まさに、二人だけど「二人なのか!?」って思わせたくて、サウンドをデザインしたので。

ーーまさに、この二人がサイコということを証明するような曲だと思います(笑)。自己紹介的な意味合いで作ったところはあるんですか?

菅原:いや、タイトルと曲が別々に同時進行するように出来上がっていったんです。滝が曲を作ってきて、僕が……バンド名と同じように、タイトルのアイデアだけ書き溜めているメモもあるんですね(笑)。そこから、この曲は「ふたりはサイコ」にしよう、ってくっ付けて、歌詞を書いていきました。

ーーこの曲、滝さんのドラムに対する本気度も表れているような激しさがありますが、ドラムを叩きたい! という欲求はあったんですか?

滝:元から物凄くあったんです。

菅原:元はドラマーなんですよ。

滝:一応ギターが先なんですけど、中3で受験のために一旦やめてしまって、高校からはドラムを叩いていたんです。

菅原:その後も、叩ける場所は、常に探してたよね。9mmのライブでも、終わって、ステージからみんながはけたかな……っていうときに、滝だけがまだいて、ドラムを叩き出して、おっとまだ何かやってるぞ? って他のメンバーが出ていって、ギャーン! ってやったりね(笑)。

滝:パンクなセッションをね。

ーーちなみに、キツネツキの曲は、ギターとドラム、どちらで作っていますか?

滝:ギターですね。簡単なところで、何となくドラムがちょっとあって、っていう。卓郎には伝わるような感じにして、終わりにしています(笑)。

ーーまずは断片だけ作る、という感じ?

菅原:いや、断片なんだけど完成しているんです。

滝:だから、曲が1分とか2分で短いんですけど。そのへんを精査していって、3分4分を目指したりとかは、キツネツキではあまりやらないっていう。

菅原:そもそも、アルバムを作ろうとも思っていなかったんですね。ライブをやろう、でも曲がないと出来ない、っていう感じだったので。曲作りも9mmでいったら、これにギター足してベース入れてボーカル入れてハモりを考えて……ってやっていくんですけど。

ーー構築していくわけですよね。

菅原:そうです。でもキツネツキは「もうこれでいい」って。頑張りたくないので(笑)。ザ・クロマニヨンズの(甲本)ヒロトさんやマーシー(真島昌利)さんが語っているインタビューを読んだんですけど、かいつまんで言うと、「すっごく簡単に出来る曲しかやんないんだ。じゃないと、ライブで100以上のことができないから。100出来るような曲だけを用意しておいて、120をライブでやるんだ」っていう話をしていて。キツネツキでは、自分らなりに、それをやってるんです。

ーー9mmは構築美が魅力ですもんね。そういった意味では、真逆というか。

菅原:やっぱり、構築癖がついちゃってて。

滝:そう。

菅原:気を抜くと重厚にしちゃうんです。でも、キツネツキでは、滝がステージでギターを弾かなきゃっていうプレッシャーがないライブをやりたいっていうスタートだったから、そこで「この建築を作り上げてさ……」とか、やりたくないんです(笑)。シンプルな状態で、エネルギーだけ発揮できるように。

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