菅原卓郎&滝 善充が語る、キツネツキを通して気づいたこと「9mm自体の面白さを見つけた」

菅原&滝が語る、キツネツキでの“発見”

菅原卓郎「谷川俊太郎さんが好きで、好きなバンドと同じくらい影響を受けている」

ーー障害物競走じゃなくて100mダッシュ、みたいな?

菅原:競争ですらないです。鬼ごっこぐらいな感じ(笑)。

滝:ただ走り回っている(笑)。

菅原:うわーい! あれ、誰が鬼だっけ? みたいな(笑)。

ーー(笑)。そういう発想を聞くと、いろんな楽曲にユーモアが盛り込まれているところも必然だったのかな、っていう。

菅原:そうですね。

ーー「ふたりはサイコ」の〈(All Winner Ring Sun)〉が“おいなりさん”に聴こえるところ、すごく面白かったです(笑)。これ、卓郎さん、英詞じゃなくて“おいなりさん”って……。

菅原:歌ってますよ(笑)。俺たちキツネツキだし、ここはひとつ“おいなりさん”ぐらい歌うか、って。

ーーこの曲、ライブではお客さんが“おいなりさん”って歌ってるんですか?

菅原:歌ってますねえ。

ーーいい絵ですね(笑)。

菅原:平和というか、間抜けですね(笑)。

ーーお客さんもキツネツキ的なグルーヴを感じているのかもしれない(笑)。

菅原:コアな人たちは、あいつらはどうやらふざけようとしていると察してくれているんでしょうね。また、近年デビューしたバンドとかと一緒にフェスに出る機会があると……。

滝:僕らも新人なんでね。そういう場所だと、9mmに詳しくない人たちにも観てもらえる。

菅原:「あの人9mmっぽいよなあ? なんかもじゃもじゃしてるし」みたいな(笑)。でも、曲はこんな感じだし、ライブも……、このインタビューと同じようなテンションなんですけど(笑)。とは言え、さっきの話のように、ライブで120を出すために曲をシンプルにしているから、ふわーっと弾いてても音が爆発するんですよね。

滝:流してるくらいでやっても、すごくパンチがあるんです。

ーーなるほどね。次に気になったのは、「てんぐです」。インパクト絶大なタイトルですけど、曲調はおしゃれですよね。 

菅原:そうですね。

ーーそこに「てんぐです」と名付けたのは、何故だったんでしょう。

菅原:これは歌詞が先だったんです。「てんぐです」って歌詞を書いたから、曲を付けて、って。

ーー滝さんのセンスがすごい!(笑)。

滝:結構さわやかな曲になりましたね(笑)。仮の歌詞を見ながら曲を作りだして、どう考えても和風だよなって思っていたんですけど、出来なくて、切り口を変えたんです。そうしたら、ファンキーで70年代アメリカンな、ちょっとシティポップな感じに落ち着いたっていう。

菅原:曲がシティポップだから、てんぐが街に降りてきた歌詞に変えたんですよね。

ーー曲に引っ張られて、歌詞の物語が変わったんですね。

菅原:そうですね。まあ、てんぐ自体がカッコいいと思っていて。でも、ただてんぐのことを書こうとしたら、キツネツキのテンションにはならないので、「てんぐです」にしようと(笑)。でも、実はただのラブソングなんですよね。

ーーこのアルバム唯一のラブソングですよね?

菅原:そうですね。

ーー衝撃的です(笑)。そして、「ちいさい秋みつけた」「小ぎつね」「証城寺の狸囃子」と童謡のカバーも収録されています。この選曲というのは? 「小ぎつね」はわかりますが、「証城寺の狸囃子」はキツネからのイメージなのでしょうか?

菅原:まんまです(笑)。裏はないです。

滝:キツネといったらタヌキでしょ、っていう。

ーー二人なら、他の童謡のカバーもできそうですけどね。

滝:でも、意外と合う童謡がなくって。「ちいさい秋見つけた」が出てきて、本当によかったです。

ーー切なさと、ほんのちょっとの怖さが、キツネツキに合いますよね。どれも童謡とはいえ、3曲それぞれの色が出たカバーになっていると思います。

滝:同じような感じでアレンジしたんですけど、メロディと歌詞でここまで雰囲気が変わるのか、って。童謡はすごいなと思いました。

ーー子どもまで対象を広げて活動していって欲しいと思います。

菅原:『NHK みんなのうた』目指してね(笑)。

ーーオリジナル曲でも、「まなつのなみだ」はジブリ感があるというか、抒情的な映像にもマッチすると思いました。歌詞もすべてひらがなですし。

菅原:歌詞をひらがなにするときは、よりあいまいに、ドリーミーにしたいからなんですよね。僕、谷川俊太郎さんが好きで、好きなバンドと同じくらい影響を受けているんですけど、キツネツキはそういうところが出やすいっていうか。歌詞と詩の間、詩として読んでもいける歌詞になっているっていう。この曲の歌詞は、ちょっとだけ真面目だね。

滝:曲も真面目だよ。

菅原:曲の真面目さを感じ取って歌詞を書くとか、歌詞の真面目さを感じ取って曲を書くとか、お互いやってきたから。

滝:説明を受けなくても、落としどころがわかるんですよね。

菅原:あと、ジブリ感もあるんですけど、CMの『そうだ 京都、行こう。』みたいな映像に、もともと入っていた音を消してこの曲を流しても、ばっちり合うんですよ。

ーー確かに! 可能性が広がりますね。

菅原:作詞・作曲チームとして、こんなことも出来ますよ、っていうのが、いろんな人に伝わるといいですね。お題があった方が強いしね。

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