欅坂46 平手友梨奈、“女優”としての変化と成長 個人PVから感じる唯一無二の魅力
欅坂の個人PVの中で最高傑作にあげる人が少なくないのが、3rdシングル『二人セゾン』に収録されている『てち浪漫』。欅坂が初主演を務めたドラマ『徳山大五郎を誰が殺したか?』(テレビ東京系)の豊島圭介監督が手がけた。和風旅館のような部屋で、真っ赤なワンピースに真っ赤なピンヒールを履いた平手が「あなたのそのかかとに踏まれたい」という手紙を投げ捨て、カメラ目線で「どうしてそんなことばかり言うのですか? 頭おかしいんじゃないですか?」と呆れた表情で言う破壊力。また「できればもう一度だけ逢ってもらうことはできないだろうか」という手紙には、「ずっと待っててそこで。行くかも知れないし、行かないかも知れない。バイバイ」と答え、大人を弄ぶような何とも言えない笑顔で手を振る。江戸川乱歩や夢野久作の世界に出てくるような少女のエロチシズムを意識した作品であるが、この現代において、当時15歳だった平手が、少女にしか出せない儚い色気を見事に表現した。
平手の一つひとつの意味深な表情や仕草は、本当に世の中を軽蔑しているのでは? と思わせるほど実にリアル。ドラマで気心の知れた豊島監督が、言葉にするには難しい平手の魅力を、見事に具現化した作品だと言える。「あなたは私の形のことしか言わない、本当に見えているんですか、私のこと」と問う平手は、単純に美少女と言うより、禁断の色気という言葉が頭に浮かぶ。平手の繊細な演技が見られ、個人的には『響 -HIBIKI-』に匹敵するインパクトある作品だと思う。
数々の監督によって演出されてきた個人PVは、テレビドラマではできない実験的なものも少なくなかったため、役者としての様々な可能性を広げてきた。改めて見ると、歌のパフォーマンスの成長とはまた違った、女優・平手友梨奈のモラトリアム期が味わえる原点として、実に興味深い。
(文=本 手)