ELISA『DIAMOND MEMORIES 〜All Time Best of ELISA〜』インタビュー

ELISAが語る、これまでの道のりと新たな野望「私の10年はどこを振り返っても輝いていたと思う」

「一度夢を掴んだのに、このあとどうすればいいんだろう?」

ーーそして“上履き水着写真”も功を奏して(笑)、めでたく歌手デビューと相成ったわけですけど、アニメソングに明るくなかったELISAさんにとって、毎週テレビから自分の声が流れて、CDショップやアニメショップに自分のCDが並んでいる状況っていかがでした?

ELISA:まったく実感が湧かなかったですね。おかげさまで『euphoric field』って初動で3万枚くらい売れたらしいんですけど、アニメイトさんに行って私のCDを見ても、これホントのことかな? っていう感覚がずっとありました。最初に「あっ、歌手になったんだ」って思えたのは、当時全然しゃべったことのない同じクラスだった男の子がCDを持ってきて「サインください」って言ってきたときでした。

ーーところが今回のベスト盤に収録されている曲のほとんどがアニメやゲームのタイアップ曲になっている。つまり、その後きちんとアニソンアーティストとしての個を確立なさっている。いつ頃、ご自身の実感と周囲の状況に折り合いを付けられるように?

ELISA:徐々にって感じです。イベントに呼ばれるとそこには大先輩がたくさんいらっしゃるじゃないですか。皆さんのステージを観ていたら「ここで止まってちゃダメだ」って思えるようになったし、とはいえ2ndシングルの『HIKARI』をリリースした頃は、曲の途中でスッと手を前に伸ばそうって決めてたのに、いざ本番になったら恥ずかしくて中途半端にしか伸ばせなかったなんてこともあって。それもまた「いつまでも駆け出し気分じゃダメだ」って感じさせてくれたし、あとファンの皆さんの「ELISAには活動を続けてほしい」っていう思いをひしひしと感じることもあって、それに背中を押されたこともありますし。ライブを通じていろんなことを肌で感じるということを積み重ねてきた結果、今のELISAになれたのかな、って思ってます。

ーーご自身にとってエポックメイキングだった楽曲があったりはしない?

ELISA:「God only knows」は事件でした。

ーー先ほどおっしゃっていたとおり9分超え、しかも5幕構成の楽曲ですもんね。

ELISA:しかもこの曲ってベスト盤だと次に収録されている「集積回路の夢旅人」との連作だから実際はさらに長いんですよ(笑)。「クラシックの経験もあるし、歌えるだろう」っていう自信はどこかにあったんですけど、それでも大変でした。15時間くらいかけて、意識もうろうとなりながら30トラックぶんの声を重ねてました。あと、このベスト盤ってディスク1がジェネオン時代にリリースした曲で、ディスク2が今所属しているソニーでリリースした曲っていう構成になってるんですけど、ディスク1で言うなら「Wonder Wind」も印象に残ってます。

ーーアニメ『ハヤテのごとく!!』のオープニングテーマで、初期のヒット曲です。

ELISA:この曲が『ハヤテのごとく!!』のオープニングに決まったって連絡が来たとき、ちょうど学校で居残り勉強をさせられてたんです。だからその連絡には「あっ、そうですか。おつかれさまです」くらいの簡単な返事をしていたんですけど、あとから事の重大さに気付くという。「えっ、さっき言ってた『ハヤテのごとく!!』ってこのあいだまでKOTOKOさんがオープニングを歌ってたアニメじゃん!」って(笑)。でもさっきもお話ししたことなんですけど「HIKARI」みたいなバラードから、爽やかな「Wonder Wind」や9分超えの「God only knows」まで、当時からいろんな曲を歌わせてもらえたのは本当に私の財産になってますね。

ーー「SCARLET WINGS」みたいな高速ロックチューンもあるし。

ELISA:BPM200ですからね。この曲をリリースした直後に、デビュー当時からお世話になっているディレクターさんが私の当時の様子を見て「ELISA、もう限界でしょ? 1回休もう」って言ってくださったのをきっかけに活動を休止するんですけど、たぶんファンの皆さんはビックリしたと思いますよ。活動休止前の最後の曲がBPM200だから「いや、さっきまで元気に歌ってたじゃん」って(笑)。

ーー今でこそそうやって笑い話にできているけど、当時は周囲の人が見てわかるくらい心身ともに疲れていたわけですよね。

ELISA:そうですね。だから「休もう」って言われたときは「休んでいいんだ!」って思ったんですけど、いざ休んでみたら、今度はまあ罪悪感と後悔が襲ってきて。「みんなが背中を押してくれたからステージに立てていたのに、なにも自分の口から発表することなく歌うことを終えちゃっていんだろうか?」とか「一度夢を掴んだのに、このあとどうすればいいんだろう?」とか「生きる意味なんかないんじゃないか?」って考えながら1日中空ばっかり見てました。

ーー歌いたいという気持ちが戻ってくるまでにも時間がかかった?

ELISA:いや、歌いたい気持ちはあるんだけど、身体がついてこない感じでした。だからお休みしていた頃は「このまま、ここに住みたい!」っていうくらいカラオケに通ってましたし(笑)。

ーー具体的に気持ちと身体のバランスがとれるきっかけになった出来事ってありました?

ELISA:「もう1回歌いたい」「今度はこういう曲を皆さんの前で歌ってみたい」って思えるきっかけになったのは、映画の『フィフス・エレメント』ですね。あの映画の中に青い宇宙人が出てくるじゃないですか。

ーー「ディーバ」でしたっけ? オペラ風の曲を歌う宇宙人。

ELISA:あの歌を聴いて、そういう曲にチャレンジしてみたいっていう気持ちが湧いてきた面はありますね。それでソニーさんに移ることが本決まりになったときに「今、私はこういう曲を歌いたいんです」っていうお話をさせていただいて、とにかく高音を活かした「Shout my heart」を復帰作としてレコーディングしたんです。

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