ゆず、歌う楽しさ伝えるエンターテイナーへ クレヨンしんちゃん主題歌「マスカット」などから考察

 それを大きな規模で示したのが、昨年の12月に発表された「ゆず2018プロジェクト with 日本生命」である。新メンバー2018名を募集するという大胆なプロジェクト内容は、ファンのみならず大きな話題になった。新メンバーを含めた2020名で新曲「うたエール」を制作し、彼らの原点である横浜・伊勢佐木町にてMV撮影を決行したことは、ゆずという存在がいまや「2人」だけのものではないということが改めて示されているようでもある。

ゆず「うたエール」Music Video

 デビュー10周年までの間にも「アゲイン2」や「栄光の架橋」といった応援ソングが歌われてきたが、これらの楽曲と近年の楽曲は決定的に違う部分がある。それは、ゆずから送られるエールの言葉だけではなく、「一緒に歌うこと」に重点を置いているところだ。〈僕と共に行こう〉(「アゲイン2」)から〈届け 僕らの声〉(「うたエール」)に変化してきたように、「ゆずの2人 対 リスナー」というよりも、「ゆずの2人 と リスナー」という要素が強くなっていると感じる。これは、ゆずの2人が作品に必要ないと感じて収録されてこなかったというインストver.が、近年の作品には収録されるようになり、さらに今回の『マスカット』にはシングルとして初めてカラオケver.が収められたことも、多少なりとも関係しているのかもしれない。自分たちの“思い”をリスナーへ託したい気持ちが、以前よりもずっと強く彼らの活動からは伝わってくるのだ。

 「うたエール」は今年の西日本豪雨災害を受け、先月に弾き語りバージョンが配信リリースされたが、これにも“歌でエール”を送るという2人のスタンスへのこだわりが感じられた。僕が君に歌うのではなく、僕と君で〈謳おう〉、そんな気概が彼らの祈りと共に込められているように思える。

(撮影:太田好治)

 こういった近年のゆずのモードを踏まえ、今回の楽曲「マスカット」や『クレヨンしんちゃん』とのタッグは、「一緒に歌う」ことを重点に置きながら、再びその層をぐんと広げ、新たなスタンスを強固なものにする起爆剤になったと言える。ゆずは歌を届けるアーティストという括りから脱し、今後は「歌うこと」の楽しさを全ての世代に伝えるエンターテイナーとしての地位をますます築いていくことになるだろう。

■渡邉満理奈
1991年生まれ。rockin’on.comなどのWEB媒体を中心にコラム/レビュー/ライブレポートを執筆。趣味は読書でビートたけし好き。

ゆず『マスカット』

■リリース情報
『マスカット』
発売:8月1日(水)

会場限定盤(CD+ゆずマン×クレヨンしんちゃんオリジナルハンドタオル)¥926+税
通常盤(CDのみ)¥800+税

※会場限定盤のみ、『YUZU ARENA TOUR 2018 BIG YELL II~Great Voyage~』にて販売。

<収録曲>
M-1.マスカット
M-2.OLA!!
M-3.マスカット(ガイドメロディー付きカラオケ)
M-4.OLA!!(ガイドメロディー付きカラオケ)

特設サイト

配信シングル「うたエール(弾き語りバージョン)」
配信期間:7月20日(金)0:00~12月31日(月)23:59
※収益金の全額を西日本豪雨による被災地・支援団体へ寄付

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ゆず オフィシャルサイト

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