Juice=Juice、3年ぶり×23曲×8人の歌が凝縮! 新作『Juice=Juice#2 -¡Una más!-』レビュー
7人時代ライブ曲
Never Never Surrender(作詞:児玉雨子 作曲:星部ショウ 編曲:大久保薫)
TOKYOグライダー(作詞:唐沢美帆 作曲:星部ショウ 編曲:松井寛)
メンバーが7人になってから発表されたライブ限定曲は2曲で、「Never Never Surrender」は2017年10月28日『Juice=Juice LIVE AROUND 2017 ~Beyond the Beyond~』金沢Eight Hall、「TOKYOグライダー」は11月11日の同ツアーの大分DRUM Be-0公演にてそれぞれ初披露。今回のアルバムで初音源化となる。
「Never Never Surrender」はEDMビートにバグパイプ等のケルト音楽要素を組み入れた力強くもみずみずしいサウンド。曲終盤での高木紗友希のフェイクも聴きどころだ。「TOKYOグライダー」はラグジュアリーな雰囲気のジャズファンク歌謡で、16ビートならではのノリと、それを歌いこなすメンバーの力量が堪能できる好ナンバーだ。編曲の松井寛は前作アルバム収録曲「生まれたてのBaby Love」以来2回目の起用となる。
8人時代新曲
シンクロ。(作詞:井筒日美 作曲:星部ショウ 編曲:浜田ピエール裕介)
素直に甘えて(作詞:NOBE 作曲:星部ショウ 編曲:鈴木俊介)
禁断少女(作詞・作曲:大橋莉子 編曲:平田祥一郎)
そして残る3曲が、本アルバム用に制作された完全新曲。3曲とも今年6月13日に加入した稲場愛香(元カントリー・ガールズ)を含む8人、つまり現在のJuice=Juiceメンバーによる歌唱となっている。
「シンクロ。」はフォークトロニカ風のトラックで優しく綴るミディアム曲。2番サビ終わりの稲場愛香パート〈不安までがシンクロしてた〉が綺麗にハマっており、Juice=Juiceの歌声のパレットにまた新たな一色が加わったことを感じさせる。
「素直に甘えて」はボサノバ。イントロ含め曲の端々で奏でられているゴージャスな音色は、『ルパン三世』などでおなじみの大野雄二サウンドを連想させるところもある。1番サビ終わりの梁川奈々美の〈覚えて CHERRY〉という抑制の効いた歌い方などは、新境地といえるだろう。
「禁断少女」は80年代PWL(SAW)サウンドを素地としたシンセ/ダンスポップ曲。歌詞も含め、いわゆるアイドルポップスの王道に則ったオーソドックスな作りだが、それをJuice=Juiceが歌うことにより、ハイクオリティかつ普遍的なラブソングとして結晶化された。作詞作曲の大橋莉子はSUPA LOVE所属の22歳現役女子大生コンポーザーで、ハロプロだとつばきファクトリー「低温火傷」の作曲、「純情cm」の作詞作曲を手がけており注目の作家だ。
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ここまで見てきた全23曲が、ディスク1ではリリースの新しい順、ディスク2では起伏のある曲順で収録されている。楽曲ごとに様々な音楽ジャンルを志向し、それを高い歌唱力で表現している、という点は前作アルバム『First Squeeze!』と同様で、Juice=Juiceの最大の魅力だ。本アルバムでは、そこに新メンバー3人が加わったことで、歌声のバリエーションの幅がさらに広がっているのが特徴といえる。
個人的な本アルバムのベストチューンは「禁断少女」。アルバムの曲順でも終盤のクライマックスに配置されているこの8人曲のすぐ次に、5人時代のベスト歌唱のひとつである「大人の事情」へと繋がれているのがなんとも心憎い。また、「シンクロ。」の歌詞はJuice=Juiceというグループそれ自体のことを歌っているようにも読み取れて味わい深い。そしてアルバムラストに置かれた「Wonderful World (2018 English Ver.)」は、この曲のみ英語詞で毛色が違うということでボーナストラック的な位置づけと考えることもできるのだが、でも実際に聴き返してみると、他の曲とは異なるそのフロウが実に心地よく、日本のみに留まらず世界へ羽ばたいていくJuice=Juiceの姿をつい夢想してしまう。このレビューを読んでくれたあなたも、本アルバムから自分のベストチューンを探し出してみてほしい。
■ピロスエ
編集およびライター業。企画・編集・選盤した書籍「アイドル楽曲ディスクガイド」(アスペクト)発売中。ファンイベント「ハロプロ楽曲大賞」「アイドル楽曲大賞」も主催。
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