『ゲスの極み乙女。6th Anniversary live「乙女は変わる」』レポート

ゲスの極み乙女。が6年かけて拡張してきた独自の音楽世界 演出的にも進化したNHKホール公演レポ

 ゲスの極み乙女。が6月22日に東京・NHKホールでワンマンライブ『ゲスの極み乙女。6th Anniversary live「乙女は変わる」』を開催した。

 昨年5月にZepp Tokyoで行われた活動再開後初ライブ以降、ゲスの極み乙女。の東京でのワンマンライブにはほとんど足を運んできた。回を重ねるごとに進化していくバンドの演奏とステージ演出。結成6周年を記念して行われた本公演では、キャリアを総括するような楽曲が披露されながらも、ゲスの極み乙女。の奏でる音楽世界は、この先に向けてまだまだ拡張し続けていることを確信した。

 まず、ステージ演出にもさらなる工夫が見られた。昨年9月の野音ライブや、今年3月の『MTV Unplugged』でも演劇的な側面が感じられていたが、今回のライブではステージ上に舞台が設置され、ダンサーも登場した。

 「私以外私じゃないの」では白い衣装の5人の女性ダンサーと、黒い衣装の1人の男性ダンサーSHIMIZU MASHがステージに現れた。SHIMIZU MASHは舞台の上と下を自由にダイナミックに動き回っていた。コンテンポラリーダンスの要素もありながら、その動きには何かに追われているかのような切迫感があり、ダンスという枠組みを超えた“身体表現”のように感じられた。平井堅や米津玄師など、そのパフォーマンスにおいてダンサーとコラボし、自身の表現をさらに深めるアーティストが増えてきた昨今。そういった意味でも、今回のゲスの極み乙女。のステージにダンサーが登場したことは興味深い。続く「無垢な季節」でも、舞台の上でハンドマイクで歌う川谷絵音の左右でダンサーが踊り、今までのライブとは異なる緊張感を生んでいた。

 MCでは川谷が「初めてこの4人でスタジオに入った日、ちゃんMARIのトートバッグに“ゲスの極み乙女”と書いてあって、そこからバンド名をとった」と、結成秘話をあらためて語った。当時、川谷はindigo la Endを、休日課長は会社勤めで、ちゃんMARIとほな・いこかも別のバンドを組んでいた。どこか川谷のサイドプロジェクトのような気軽さで始まった印象もあったが、それから6年、ゲスの極み乙女。は各々のプレイヤビリティの高さとキャラクターの強烈さで瞬く間に名前を広げ、今や他の誰にも似ないバンドとして確固たる立ち位置を築いている。

 川谷が「当時はギャグみたいな曲とか不満を言ってる曲、悲しい曲が多かったけど、前向きな新曲ができました」と言って披露したのは、「もう切ないとは言わせない」。ウェットなギターと、流麗なピアノの音色が心地よい。メロディの綺麗さとリズムの複雑さが絶妙なバランスで成り立っており、まさにゲスの極み乙女。の真骨頂と言える楽曲だろう。

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