レジーのJ-POP鳥瞰図 第22回

けやき坂46は“アイドルらしくない”の対極を進む 多様化し、外部とつながるシーンの現在地

「アイドルらしくない」の対極を進むけやき坂46

けやき坂46『走り出す瞬間』

 欅坂46のアンダーとして活動が始まったけやき坂46が、その支持を一気に拡大している。今年の1月には武道館での3日間公演(もともとは欅坂46のライブだったが急遽変更になったもの)を成功させ、現在行われている全国ツアーも各地で大盛況。この4月から6月にかけては地上波での冠番組が2つ同時に放送されるなど(テレビ東京系『ひらがな推し』、日本テレビ系『KEYABINGO!4ひらがなけやきって何?』)、どのアイドルよりも勢いがあると言って差し支えのない状況になっている。

 これまでもけやき坂46は、すっかりアイドルファンクの金字塔的に受け入れられている「誰よりも高く跳べ!」(欅坂46『二人セゾン』のカップリングとして発表)や杉山勝彦作による美しいメロディに丁寧なボーカルが映える「沈黙した恋人よ」(欅坂46『真っ白なものは汚したくなる』に収録。けやき坂46のメンバー5人によるユニット、りまちゃんちっくの楽曲)など、ファンの間で熱く受け入れられている楽曲を発表してきていた。そんな楽曲も含めて6月20日にリリースされたのが、彼女たちのフルアルバム『走り出す瞬間』である。

 今作の核となっているのはやはり前述した「誰よりも高く跳べ!」「沈黙した恋人よ」だが、他にもギターとストリングスが引っ張るトラックに爽やかな歌が乗る「ひらがなで恋したい」やエレポップテイストの「ハロウィンのカボチャが割れた」などはグループの新たな代名詞となる可能性を秘めているように思う。また、昨今の欅坂46が展開している「大人への反抗」的なメッセージも「こんな整列を誰がさせるのか?」あたりに散りばめられているが、現時点ではあくまでも表現手法の一つにとどまっている。この先グループとしてどういう舵取りをしていくのかはまだわからないが、現時点では多様な表現がバランスよく配置されているように思える。

 「反抗」的メッセージを強め、そのシンボルに平手友梨奈を配し、ある意味で平手に依存するような構造になっている(それゆえ「平手不在」の今の状況がことさら不安定に見える)欅坂46と比べると、「欅坂46が先鋭化していく中で置いてきぼりになってきたものが、けやき坂46にはある」と言えるだろう。

 平手を「ロックな存在」「反抗の象徴」といった形で持ち上げ続けてきた欅坂46の構造は、ある意味ではここ数年のアイドルシーンのあり方を象徴している。いわゆる「アイドル戦国時代」以降のアイドルシーンは、AKB48をとりまく「恋愛禁止」「大人によって作られた存在」というパブリックイメージからいかに距離をとるか、端的に言ってしまえば「耳目を引く変わったことをいかにやるか」という競争によって駆動してきた。

 そんな状況だからこそ、けやき坂46のやっている「ギミックや過剰なメッセージ性に頼らない」「ど真ん中のポップソングをストレートに歌い踊る」というこねくり回さないスタイルが、余計に輝きを放つ(「ひらがなで恋したい」の〈単純で明快なひらがなで恋したい〉という歌詞は、グループのスタンスをストレートに表すメッセージとなっていると言えるだろう)。数多のアイドルが「アイドルらしくないアイドル」を目指している現状において、けやき坂46のようなアイドルが「逆に異色」なものとして支持を集めるという不思議な状況が生まれつつある。