ドレイク「Passionfruit」は“ジャンルレスな音楽”の象徴に Corneliusカバーが示す楽曲の現代性

『MTV Unplugged』の取り組みにも近い?

 海外ではストリーミングが主流になって2~3年が過ぎました。そうなると当然、各サービス間で競争が生じます。ではリスナーはどのサービスを選ぶかというと、たとえばGoogleやApple、Amazonは、スマートスピーカーやiPhoneなどハードウェア側からアプローチすることができる。でも、SpotifyはITテクノロジー企業ではなくて、音楽企業です。音楽ファンがSpotifyを選ぶ必要性を常にアピールしていくために、プレイリストやDiscover Weeklyなどのリコメンデーションに加え、Spotifyオリジナル楽曲は大きな吸引力になる。リスナーにとっても、アーティストの今までにない側面を楽しめる機会になります。

 ひょっとしたら、1989年から始まった『MTV Unplugged』に近いと言えるかもしれないですね。80年代は“MTVの時代”と言われていて、MVを大量に流すことによって音楽業界が変わってしまった。ただ、MVはあくまでアーティスト側がプロデュースするもので、MTVはそれを流すチャンネルを持っていたにすぎない。そこで普段のアーティストイメージとは異なる新たなコンテンツを自社で作ろうと始まったのが『MTV Unplugged』で、のちにNIRVANAやR.E.M.がアコースティックセッションをする看板番組になりました。そういう意味でも、『Spotify Singles』は『MTV Unplugged』的な位置づけで、リスナーにアーティストの新たな表現を提供する機会と言えると思います。

(構成=若田悠希)

関連記事