アルバム『cocoon』インタビュー
androp 内澤崇仁、Aimerコラボ曲で伝えたメッセージ 「音楽は人を救うものだと信じてる」
「いちばん剥き出しの歌が歌えた」
ーーAimerさんから「Memmento mori with Aimer」に関するコメントをいただいているのですが、オファーを受けたとき「大切な作品に必要としてくださったこと、すごく嬉しかったです」と感じたそうですね。
内澤:僕もさきほど読ませてもらいましたけど、そんなふうに思ってくれてたんだなってビックリしました。オファーした段階では、デモ音源をお渡ししてなかったんです。もっと完成させてから聴いてもらいたかったし、その時点では「LとRに分かれていて、二つの声によって想いが絡まり、最後に1曲になる楽曲です」ということを文面で伝えただけだったので。Aimerさんが参加してくれることが決まってから、歌詞の言い回し、歌い回しも変えたんです。
ーー「Memento mori」というタイトルからもわかるように、死生観が強く表れた歌詞ですよね。
内澤:はい。自分のなかにある死生観は、これまでのandropの楽曲にもけっこうな割合で出てきていたと思います。ただ、ここまで直接的に表現したことはなかったんです。最後の<悲しみなど腐るほどある/生きてくんだよ/どうせ消え去る前に>という言葉はずっと前から自分のなかに存在していて、そこから含まらせていったというか。曲のタイトルも歌詞を全部書いてから、最後に決めたんです。この歌詞にいちばん合うのは「Memento mori」だろうなと。
ーー内澤さんの根本にある想いが表れた歌詞と言えるのかも。
内澤:そうだと思います。ライブ中も「この一瞬は二度と戻ってこない。後悔しないライブにしたい」と想いを込めながらやっていることが多いので。
ーーAimerさんが「Memento mori」のデモ音源を聴いたのは、彼女のライブにも参加していたギタリスト・藤岡幹大さんの訃報が届いた直後だったとか。
内澤:ツアー中だったし、大変な時期だったと思いますが、そのときの想いもしっかり歌のなかに込めてくれたんだなと。レコーディングのときも、特に要望は何もなくて、こちらから「こういうふうに歌ってほしい」「こういう考えで歌ってほしい」みたいなことは言っていないんです。Aimerさんが感じたままに歌ってもらうことがいちばんだと思っていたし、僕自身もそれを求めていたので。素晴らしかったですよ、本当に。歌が上手なのはもちろんなのですが、表現力も人並み外れていて。デモをお渡ししたのはレコーディングの前日だったんですが、短い時間のなかでしっかり聴き込んでくれていて、メロディ、歌詞、歌い回しがしっかり体に入っている状態だったんです。こちらとしては「パートに分けて、少しずつ歌ってもらってもOKです」という感じだったんだけど、長尺の曲にも関わらず、頭から最後までフルで歌える準備をしてくれていた。そうやって100%の状態で臨んでくれたことがすごく嬉しかったですね。
ーーAimerさんのコメントによると、彼女が自身の曲で出し慣れている音域よりも、全体にキーが高めだったそうですね。
内澤:もともとは誰に歌ってもらうかわからない状態で作っていたので、それは危惧したところでもあったんですが、景色を生かすためにそのままのキーでAimerさんに歌ってもらいたかったんです。すごく音域が広いシンガーなので大丈夫だとは思ってましたけど、響きの良いところを探ってくれたみたいで。コメントで「声の女性性も意識した」とおっしゃっていますが、そのおかげで、自分のレコーディングのときは男性的な、力強い方向に振り切ることができたんです。特に最後の部分は叫ぶように歌っているんですよ。Aimerさんもすごく感情的に歌ってくれたから、「ここは思い切り気持ちをぶつけるべきだろうな」と思って。アルバムのなかでも、いちばん剥き出しの歌が歌えたんじゃないかな。