『OFF ROAD』インタビュー

DOBERMAN INFINITYが語る、“OFF ROAD”の走り方 「苦難を乗り越える過程を楽しんでいる」

 DOBERMAN INFINITYが、4月18日に3rdアルバム『OFF ROAD』をリリースした。同作には、「DO PARTY」「あの日のキミと今の僕に」「Shatter / DOBERMAN INFINITY×AK-69」などのシングル曲に加え、夏フェスでも披露した「#PLAY」や北海道日本ハムファイターズ・西川遥輝選手の登場曲として制作された「THE NAME」、P-CHOによるプロデュースチーム・OLDMANWILDIN’の初作品「OFF ROAD」など、計12曲が収められている。SWAYのデザインによる、オフロード車がタイヤ痕を残しながら突き進んでいくジャケットも印象的な本作には、どんなコンセプトがあるのか。メンバーに話を聞くと、結成から今日まで彼らがひた走ってきた「OFF ROAD」の道筋と、その根底にあるヒップホップ観が浮かび上がってきた。(編集部)【※インタビュー最後にプレゼント情報あり】

P-CHO「現実はそんなに甘くなかった」

P-CHO

ーーアルバム表題曲の「OFF ROAD」は、P-CHOさん、JAY'EDさん、NAOtheLAIZAさんによるプロデュースチーム「OLDMAN WILDIN」が手がけたそうですね。

P-CHO:OLDMAN WILDINは昨年からはじまったプロジェクトで、スタジオに入って色々と試してきたんですけれど、今回『OFF ROAD』というアルバムを出すにあたって、表題曲を任せてもらえることになりました。タイトルはDOBERMAN INFINITYのメンバーで決めたもので、この3年の活動を改めて振り返ったときに、もっとも適した言葉として出てきたんです。というのも、僕たちの夢は全国アリーナツアーで、2018年にはそれを叶えている予定だったのですが、現実はそんなに甘くなかった。がむしゃらに頑張ってきたけれど、その道のりは振り返れば「OFF ROAD」のように荒れていたなと。ただ、「OFF ROAD」をひた走ることこそがDOBERMANらしさでもあり、それは僕らが掲げている「オールラウンドヒップホップ」というスタイルにも通じるんですよね。そこで、「荒れた道だって楽しんで走っていこう」という想いを込めて、このタイトルが決まり、OLDMAN WILDINではそのコンセプトをサウンドにも落とし込むことに注力しました。

ーーOLDMAN WILDINでP-CHOさんはどういった役割を?

P-CHO:楽曲のリファレンスを提示するのが、僕の役割のひとつです。テーマに合わせて「こういうイメージの曲をやりたい」という楽曲を探してきて、トラックメイカーのNAOtheLAIZAに渡します。NAOtheLAIZAはそれに対してビートを作ってきてくれるので、「もう少しアコギを効かせてほしい」とか、何度かやり取りをして、楽曲をイメージに近づけていきます。そこに、JAY’EDがメロディを乗せて、僕がラップのトップラインを作っていくという感じです。OLDMAN WILDINでは良いキャッチボールができていて、すごくやりやすいですね。

GS「心をひとつにするきっかけに」

GS

ーーDOBERMAN INFINITYの中では、制作におけるそれぞれの役割はあるのでしょうか?

SWAY:楽曲にもよりますが、基本的にはみんなフラットな関係です。たとえば今回の「OFF ROAD」なら、みんなで歌詞を書き上げて振り分けをしていったり、「#PLAY」ならそれぞれのパートをそれぞれが書くという感じです。みんなで話し合ってテーマを決めて、そのテーマをもとにそれぞれが書いてくるというパターンもあります。和気あいあいとしているというか、みんなで下ネタばかり言ってるときもありますね。ときどき奇跡的に、その下ネタからリリックが生まれたりもします(笑)。

KAZUKI:でも、思い返すと根詰まってるときほど全然進まなかったりして、逆にくだけた雰囲気のときのほうがサクサク仕上がっていったりもするので、僕らみたいな制作の仕方の場合、冗談をいうのも大事ですよね。

SWAY:それで頭が回転したりもするからね。まあ、下ネタに関してはCHOさんがエキスパートですよ。

P-CHO:えー!

ーー皆さんの「楽しみながら進んでいく」というスタンスが垣間見れた気がします(笑)。ところで今回のアルバムでは、かなり幅広く色々な楽曲に挑戦していますね。

GS:アリーナツアーに向けて予定を組んでいたのが、思い通りにいかなかったことで、現実を突きつけられた気持ちでしたが、メンバーが改めて心をひとつにするきっかけにもなりましたし、その心境はアルバムにも投影されていると思います。シングルには毎回テーマがあって、それに沿った内容になるのですが、それは小説や映画でいえば短編作品のようなもので、一方でアルバムは長編作品なんですよね。いま、僕らが抱いている心境や感情のすべてを詰め込んで届けることができる。今回の『OFF ROAD』は、道無き道を自分たちらしく歩んできた僕らの軌跡を詰め込んだ作品で、客観的に見ても「DOBERMAN INFINITYは完璧なグループではないけれど、それが良いんだ」と思える内容になったと思います。それは諦めとかではなくて、そうやって苦難を乗り越えて勝っていく過程にあることを楽しんでいるんですよね。

ーー1曲1曲、何かしらの挑戦をしていて、綺麗にまとめるよりも攻めていこうとする姿勢が感じられる作品で、そこが頼もしくも感じました。KUBO-Cさんは今作にどんな想いを?

KUBO-C:「OFF ROAD」イコール“自分らしく”というところに重点を置いている作品で、それはうまく表現できているとは思います。シングルになった「DO PARTY」や、未発表だった「THE NAME」など、アルバムを制作しようとなった時点ですでに5曲あったのですが、それ以外はすべて新曲で、「OFF ROAD」というコンセプトに沿って一本筋の通った作品に仕上げることができたかなと。

KAZUKI「余韻のあるボーカル処理を目指した」

KAZUKI

ーー今回、KAZUKIさんはソロ曲「Baby」にも挑戦しています。

KAZUKI:ソロの曲に関しては、これまではバラード寄りの切ないR&Bが多かったので、それとはちょっと違う角度の楽曲に挑戦しました。ライブで披露することも踏まえて、大好きなR&Bのマナーも取り入れつつ、明るさのある楽曲にしました。DOBERMAN INFINITYの楽曲のひとつでもあるので、ボーカルとして自分がメンバーのみんなに何を提供できるのかも意識しつつ、パフォーマンス全体の中でひとつの武器になるような楽曲にしたつもりです。最近のR&Bだと、トーン・スティスとかH.E.R.とかをよく聴いていて、ああいう感じの余韻のあるボーカル処理を目指しています。日本のR&BではJ-POP的に割と芯のある歌声を聴かせるものが多くて、それももちろん良いのですが、また別のアプローチにチャレンジしてみたという感じです。

ーーR&Bシンガーがメンバー内にいるというのは、DOBERMAN INFINITYというヒップホップグループの大きな特徴であり、強みでもあると感じています。バラード曲「あの日のキミと今の僕に」のような楽曲を作れるのも、DOBERMAN INFINITYならではかと。

GS:DOBERMAN INFINITYは挑戦するのが好きなんですよね。怖いもの知らずというか。ヒップホップグループだと、なかなかバラードに挑戦することはないと思うんですけれど、だからこそ逆にどんな反響があるのか楽しみだったし、実際に喜んでくれるファンも多かったです。実は、結成当初からいつかはバラード曲に挑戦しようと、アイデアを温めていたんですよね。だから「あの日のキミと今の僕に」は満を辞しての制作だったし、一方で初めての挑戦だから産みの苦しみもありました。

SWAY:「あの日のキミと今の僕に」は架空の物語で、主人公が僕らじゃないから、いつもの制作とはだいぶ勝手が違かったです。メンバーで話し合って架空の男女を設定して、その物語を作っていったんですけれど、ふたりの性格を細かに決めていかないと歌詞にまで落とし込めないんですよね。

GS:「彼は絶対にこんなこと言わないよ」とか「この心境は理解できない」とか、いろいろ話し合いました(笑)。僕らの誰でもない男性で、出身地から性格まで一から作っていきました。

P-CHO:5人それぞれ恋愛観も違うし、しかもラップとして韻も踏まなきゃいけないから本当に大変でした。「彼のへこみ具合はどのぐらいなの?」とか、「どれだけその彼女のこと引きずってるの?」とか、そこまで考えてラップにしていったので。

GS:でも、この曲に挑戦したことで確実にグループのレベルは上がったし、ひとつ殻を破れたと思います。アルバムではバラードに味をしめて、新たに「春風」というバラードにも挑戦しているんですよ。一曲作って終わりじゃなくて、またひとつ、DOBERMAN INFINITYに新しい表現の方向性ができたなと思っています。

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