Block B、iKON、WINNERなどのメンバーも 韓国で盛り上がる“アイドルラッパー”のソロ活動
韓国のアイドルポップスにHIPHOPが根づいていることは周知のことだろう。韓国で近年のHIPHOPジャンル一般化への大きなきっかけになったと言われるサバイバル番組『SHOW ME THE MONEY』(以下、SMTM)はアイドルラッパーが優勝したシーズン3、準優勝したシーズン4をピークに現在はシーズン6を終え、現役アイドルはほぼ参加しなくなった代わりに若手ラッパーのアイドル化とも言える逆転現象も起きつつある。並行するように2013年頃からのHIPHOPアイドルブームは2015年をピークに徐々に沈静化してきた。
しかし一方で、BTS(防弾少年団)のJ-HOPEのようにアイドルグループに所属する特に男性アイドルラッパーが、ミックステープやトラックを発表するケースは増えている。今回はソロでHIPHOPトラックをリリースしているアイドルラッパーを何人か紹介したい。なお、BTSメンバーのミックステープに関しては別途記事で触れる予定であり、今回は含まれていないことをお断りしておく。
ZICO(Block B)
まず現在の韓国のアイドルラッパーの中で、別格な存在とみなされているのが、Block BのリーダーZICOだろう。デビュー前からラップユニットのGeeksや『SMTM 3』ファイナルラウンドに残ったGiriboy等人気ラッパーが所属するBuckwildsやDo’main等のヒップホップクルーに所属し、現在もDEANやCrush等が所属するFANXYCHILDを率いている。
クリアな発音・多彩なフロウ・パンチラインの効いたリリックといった技巧的な点だけでなく、作詞作曲プロデュースまでヒップホップトレンドを牽引する一人とも言える。BIGBANG以降の若手男性アイドルソロでは現在最も音源が売れる存在であるが、コリアンヒップホップアワーズ(旧HIPHOPPLAYA Awards)にもノミネートされており、大衆性だけでなくヘッズからの評価も兼ね備えている。昨年リリースした2ndミニアルバム『Television』収録の「ANTI (Feat. G.Soul)」は自身に向けられるアンチコメントの投稿主になりきったリリックで、自分に向けられた刃を外部へと反転させて突きつけるような洞察力の鋭さを見せた。一方で自身がプロデュースを務めるBlock Bの楽曲では、メンバーに合わせてヒップホップに留まらない多彩な音を作り上げ、時に叙情的なリリックも見せている。デビュー以降紆余曲折ありながらも、ぶれずにアイドルとラッパー活動を並行して地道に続けて来たことが、今の大衆認知度と業界からのリスペクトとして結実したのだろう。
BOBBY(iKON)
ZICOと並んでアイドルラッパーとして高い実力を持ち、一般層にも認知されているiKONのBOBBY。韓国生まれだが家族と共にNY留学中に現地のYGオーディションに合格し、中学生ながら単身ソウルでYG練習生になった帰国子女だ。iKONとWINNERが対決したデビューサバイバル『WIN』でも評価されていたが、BOBBYを一躍有名にしたのは『SMTM3』での優勝だろう。Vasco(現Billy Stax)のようなベテランから若手ラッパーまでが参加した大会で、大手事務所の有名アイドル練習生という立場は注目と反感を集めたが、メンターであったDok2とThe Quiettにも助けられ優勝した。
最大の特徴は一聴してわかる唯一無二の個性がある唸るようなフロウと、どこかセクシーなハスキーで低いトーンの声だろう。リリックが聴き取りづらいという批判もあるが、ヒップホップメディアのインタビューでYoung ThugやRich Homie Quanのようにあえて発音を潰しているようなラップに憧れるとも発言している。昨年リリースした初のソロアルバム『LOVE AND FALL』では全曲の楽曲制作に参加し、甘い歌声のラブソングから自伝的なナンバー、swagの効いたラップまで多彩な面を見せた。iKONの創作面でも、やはりラッパーでありリーダーのB.Iの片腕的存在として多くの楽曲に参加している。
MINO(WINNER)
現BRANDNEW MUSIC所属のラッパーHanhaeと共に、デビュー前のBlock Bに参加していたのがWINNERのMINOだ。家庭の事情でBlock Bとしてはデビューしなかったが、その後BoMというボーカルグループでデビューし(2013年に解散)、スカウトでYG練習生になった直後にデビューサバイバル『WIN』に参加して翌年WINNERとしてデビューした。グループは新人賞を総ナメにする等デビュー直後から人気を得たが、MINOがラッパーとして評価されたのは『SMTM 4』だろう。3でのBOBBYの優勝を受け、4にはアイドルラッパーが過去最多数参加。大手事務所の人気グループからの参加ということもあり、プログラム中でもしばしばdisのターゲットにもなった。途中で歌詞の内容が議論になり謝罪する等の問題がありつつも、最終的にはBasickに次いで準優勝を果たした。
番組内でリリースした「Fear(feat.SOL)」は内面の弱さをストレートに吐露した歌詞が共感を呼び、同番組最大のヒット曲となった。MINOのラップスタイルは、低いトーンの声でありながら歌詞はクリアに聞こえ、さらに歌詞のユニークさに定評がある。リリックの頭がカナダラ(ハングルのアイウエオの様なもの)順になっていたり、シリアスな歌詞にユーモアのある擬音をあえて入れたりとセンスのあるライムと言葉選びが特徴だ。所属しているWINNERでは、リーダーYOONとラッパー兼ダンサーHOONと共同で曲を作るケースが多く、トレンディからセンチメンタルまでソロと比較するとより爽やかな作風が多い。