Nulbarichのライブに感じた“バンドであること”へのこだわり ワンマンツアー東京公演レポ

 先にも書いたように、あまりセトリには触れられないし、自分としても触れたくないのだが、1曲、始まった瞬間に鳥肌が立った曲があって、それが「In Your Pocket」だった。去年の暮れにリリースされたEP『Long Long Time Ago』に収録されたこの曲は、Nulbarichが最初に“化けた”瞬間の曲だと私は思っている。リフやドラムのループを主体とし、現行のR&Bやヒップホップとも共振するサウンドメイクを見せたこの曲は、しかしながら、どんな海外のポップスとも違う、Nulbarich独自の荒々しさや重さを孕んだ曲となっていた。

 ポップスとは、時代の雰囲気を利用して作られるものではない。むしろ、作り手が、その独自の人生観や文化土壌、指向性を発露させた結果、どうしようもなく時代のムードを“言い当ててしまう”、そういうものだと思う(たとえば、ジャスティン・ティンバーレイクの新作がそうであったように)。「In Your Pocket」もまさにそういう曲だった。たった2年弱の間に、初めてのツアーやワンマン、さらにジャミロクワイの前座での武道館公演などを体験し、激動の季節を過ごしてきたNulbarich。そんな彼らの擦り切れながらも発光せずにはいられないバンドの生命力のようなものが、「In Your Pocket」には刻まれていて、そんなバンドの生命力がモダンなサウンドスタイルと自然に結びつくことで、本当に特別な曲になった。ここで生まれた方向性が、アルバム『H.O.T』に宿る深く重厚な質感を決定づけていたといえる。この日、MVと同じように、スポットライトのなか、JQが「In Your Pocket」を歌い出した瞬間……この瞬間は本当に美しかった。暗闇のなかで、Nulbarichというバンドの生命が輝きだすような、宝石のような光景だった。

 この日アナウンスされ、すでに大きな話題にもなっているが、11月には日本武道館でのワンマン公演も決定した。最初にも書いたが、とんでもない速さだ。いま、ここまで“売れる”という現象を体現している存在もそうはいない。では、ここでひとつの問いが生まれる。「この時代、“売れる”とは一体、どういうことだろうか?」と。それは作品のセールスやストリーミング回数によって決まるのだろうか? もちろん、それはそうだろう。だが、個人的に“売れる”という現象には不可欠なポイントがあると思っていて、それは、“どれだけ多くの人に期待されるか?”ということだ。“期待される”ということは、すなわち“続きを見たい”と思わせることであり、もっと大きく言えば、聴き手に“明日を生きたい”と思わせることに他ならない。きっといまの時代、“続き”を期待されずとも数字を稼ぐ方法はある。でも、やっぱり私たちは“続き”を見たい。

「続き、歌いたくないなぁ……」

 この日、ある曲の途中、JQはそう口にした。それは、歌ってしまえば曲が終わってしまう、音楽が鳴りやんでしまう……そんな思いから発せられた言葉だった。それだけ彼にとって、音楽を他者と共有する空間は尊く、大切なものなのだ。でも、私たちはわかっているし、JQ自身もきっとわかっている。Nulbarichには“続き”がある、と。武道館という続きが、そして、きっとその先にも続くであろう、“続き”が。だって私たちは、道の途中で出会ったから。

■天野史彬(あまのふみあき)
1987年生まれのライター。東京都在住。雑誌編集を経て、2012年よりフリーランスでの活動を開始。音楽関係の記事を中心に多方面で執筆中。Twitter

■リリース情報
Nulbarich 2nd フルアルバム『H.O.T』
発売中
価格:【通常盤】2,800円+税
【初回限定盤】3,500円+税/CD+BONUS CD

<収録曲>
・H.O.T(Intro)
・It’s Who We Are
・Almost There 
・Zero Gravity
・Handcuffed
・In Your Pocket
・See You Later(Interlude)
・Supernova 
・ain’t on the map yet 
・Follow Me
・Spellbound
・Construction(Interlude)
・Heart Like a Pool

<BONUS CD>
1.It’s Who We Are
2.Lipstick
3.Everybody knows
4.Spread Butter On My Bread
5.On and On
6.Ordinary
7.NEW ERA
8.Follow Me

<CDパッケージ>
初回限定盤には、初ワンマンツアー『Change the Track』ファイナル公演・LIQUIDROOMのライブ音源を収録したCDを付属。

■配信情報
・「ain’ t on the map yet」
2月21日より、主要配信サイト及びApple Music、LINE MUSIC、AWAなど主要定額制音楽ストリーミングサービスにて先行配信予定。
・2ndフルアルバム『H.O.T』
3月7日より、主要配信サイト及びApple Music、LINE MUSIC、AWAなど主要定額制音楽ストリーミングサービスにて配信予定。

<各チェーン特典>
購入者に、先着で“特製ステッカー”をプレゼント。
対象店舗など詳細はオフィシャルサイトにて。
※各特典ともに数に限りあり。
※一部、特典の取扱いが無い店舗あり。

■イベント情報
『TOWER RECORDS presents “Nulbarich プレミアムライブ“』
日程:6月8日(金)
時間:開場19:30/開演20:00
場所:東京都内某所(※当選者のみに案内)
参加方法:予約優先で、TOWER RECORDS 全国各店/TOWER RECORDS ONLINEにて、3月7日発売(3月6日入荷)のニューアルバム『H.O.T』購入者に、先着で “イベント応募券”をプレゼント。“イベント応募券”に記載された応募方法に従い、応募すると抽選で、300名を招待。
※“イベント応募券”は無くなり次第終了。また、いかなる場合においても“イベント応募券”の再発行不可。
応募締切:4月8日(日)終日
当選案内:当選者には4月22日(日)までに、応募時に登録したメールアドレスに当選通知を送付。
詳細は、オフィシャルサイトにて。

■ツアー情報
『Nulbarich ONE MAN TOUR 2018 “ain’t on the map yet” Supported by Corona Extra』
3月28日(水)仙台Rensa(※SOLD OUT)
4月6日(金)広島クアトロ(※SOLD OUT)
4月7日(土)福岡イムズホール(※SOLD OUT)
4月13日(金)名古屋ダイアモンドホール(※SOLD OUT)
4月25日(水)東京・Zepp DiverCity Tokyo(追加公演)

■ライブ情報
4月28日(土)or29日(日)宮城・ARABAKI ROCK FEST.18
5月3日(木)埼玉・VIVA LA ROCK 2018
5月19日(土)大阪・METROCK 2018
5月27日(日)東京・METROCK 2018
6月2日(土)or3日(日)静岡・頂 -ITADAKI- 2018

■関連リンク
Nulbarich オフィシャルサイト
Nulbarich オフィシャルTwitter
Nulbarich オフィシャルFacebook
Nulbarich オフィシャルモバイルサイト「Hometown」

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