『Fate/Grand Order Original Soundtrack Ⅱ』リリース記念特別企画(その1)

DracoVirgo×毛蟹が語る『Fate/Grand Order』の魅力と「清廉なるHeretics」制作秘話

「セイレム」の世界観を補足するために選んだ“ルターのモチーフ”

――みなさんは『Fate/Grand Order』に、どんな魅力を感じますか?

SASSY:僕は今回のデモをもらってから、世界観を知るためにも『Fate/Grand Order』を初めてプレイしたんですが、世界観がしっかりしていて、ストーリーに引き込まれて、刺さるようなワードがたくさんあって。まだ「セイレム」までは行けてないので、プレイが終わった後に聴いたらきっとまた聞こえ方が違うんだろうなと、今からワクワクしていますね。

MAAKIII:物語だけでなく、曲にまで謎解きの要素があるのも楽しいですよね。毛蟹さんが色んなヒントを歌詞の中に隠しているだけに、ゲームの中だけではなく、それを聴いた人たちが歌詞の解釈を色々推理することでも盛り上がって楽しんでくれるというか。

――ネタバレになってしまうかもしれませんが、たとえば歌詞の中に込めたギミックの中で、教えてもらえるものはありますか?

毛蟹:たとえば、歌詞に「セイレム」のストーリー&楽曲の宗教的な雰囲気を補足するために宗教革命のマルティン・ルターのモチーフを入れ込んだりしています。MAAKIIIさんが歌う主旋律には「鍵」(=天の国の鍵)や「七つ」(「ひとつの嘘を本当らしくするためには、いつも七つだけ嘘を必要とする。」=ルターの名言)といった言葉を入れていますし、コーラスの部分は歌詞として表記しない方向で話していたので、ここには際どい言葉も入れられると思って、そこにもルターにまつわるワードを入れました。それから、コーラスで「Foreigner」と聞こえる部分があると思うんですけど、あれは「Foreigner」ではないんですよ。実は「falling down」という言葉が当たっているんですね。でもコーラスのディレクションの段階で「Foreigner」と聞こえるように歌った方が響きが綺麗だったので、その様な感じで歌ってください、とコーラスをやっていただいた貝田由里子さんにお願いをして、色んな意味を持ってに広がるようにしました。これは本当に偶然だったんですけど、そのコーラスを先に用意していたら、ちょうど新クラス「フォーリナー」の実装が発表されて驚きました。

――先に情報を知っていたわけではなかったんですか? ものすごい話ですね……! 

毛蟹:偶然引き寄せてしまったみたいです(笑)。僕は原典にあたる『Fate/stay night』の頃から『Fate』シリーズが大好きなんですけど、先ほどもお話したように、このシリーズはとにかくキャラクターが魅力的で。特に『Fate/Grand Order』では登場人物もどんどん多くなって、それぞれのキャラクターごとに背負っている業や背景のようなものがあって。しかも、その作品内でのキャラクターの多さと、キャラクター一人ひとりの掘り下げ具合が、反比例していないところが本当にすごくて。普通はキャラクターが増えるにしたがって、「広く浅く」になるかと思いきや、そうではなくて、「広くて深い」。しかも、登場人物には歴史や神話の偉人が多くて、それを調べる楽しさもあります。それぞれの偉人が史実とは違う登場の仕方をするので(歴史の異変を修正する物語のため、登場人物の性別が変わっていたり、史実とは違う状況に巻き込まれていたりする)、そこでまた別の広がりがありますよね。

――また、時限でストーリーが解放されていく仕掛けによって、ゲーム内の時間軸と現実の時間軸がリンクする瞬間があったりするなど、他にも色々な仕掛けが用意されています。

毛蟹:そういえば、僕は今回の「セイレム」も時限式でストーリーが解放されるものになるとは知らないまま曲を作っていたんです。それもあって、「セイレム」の最初のシナリオと「清廉なるHeretics」がゲーム内で最初に公開されたときに、その時点ではシナリオより曲に詰めていた情報量の方が結果多くなって、それが伏線に感じられて謎解きの楽しさを増してくれた部分もあったのかもしれないです。これも偶然だったんですが、だからこそ面白い形になった部分もあったのかな、と思いました。

「清廉なるHeretics」がもたらした縁と経験

――この作品ならではなのかもしれませんね。毛蟹さんは『少女終末旅行』のOP曲「動く、動く」や、『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』のキャラソン「君と続く物語」など、他にもアニメ/ゲーム関連の楽曲を担当していますが、『Fate/Grand Order』の楽曲を担当する際に特に感じた魅力や、違いのようなものはありましたか?

毛蟹:『Fate/Grand Order』って、世界観が完全に確立されていて、お客さんもすでにそれを分かっているという部分がありますよね。その世界観の枠が、すごくしっかりしているというか。それもあって、ユーザーのみなさんの期待に沿えるように、作品の世界観の枠内にきちんと的を用意して進んでいくということは意識していました。そして、僕はもともと作品のいちファンでもあったので、ある種ファン目線で楽しませていただくような部分もありました。ファンだった作品で、ファンだったアーティストの方と一緒に作業をさせていただいたので。

――今回の「清廉なるHeretics」は、みなさんにとってどんな楽曲になりましたか。

MAAKIII:これはもう、本当に出会いや縁のようなものがあって、私たちDracoVirgo自身も、ここからはじまったことがすごく大きかったと思います。このタイミングで、毛蟹さんと「清廉なるHeretics」を担当させてもらったことで、私たち自身も見えてきたものがたくさんありました。私たちの激しさやダークさ、その中にある力強さというものに改めて気づくことができたし、クラシックの要素が加わった楽曲にも挑戦したいとも思っていたし、DracoVirgoとして向かう矢印のようなものも、「清廉なるHeretics」の作業の中ですごく見えてきた部分がありました。私たちのこれからにとっても大切な経験になりました。

毛蟹:僕にとっては夢のような時間でした。最初のデモの段階では苦戦しましたけど、それ以降は1ミリの負荷もない、何のストレスもない時間で、楽しさとクリエイティビティが両立していて、そこから学ばせてもらえたことが本当にたくさんありました。SASSYさんのフレーズ、mACKAzさんのフレーズ、MAAKIIIさんの歌、そのすべてを僕の糧や経験値にしていただいた感覚でした。

MAAKIII:その楽曲が配信リリースの際にランキングで1位になって、結果として残ったということも、思いが強かっただけにとても嬉しかったですね。いいものを作って、それが人に伝わったという実感が得られることって、生きていてもなかなかないことだと思うので。それを噛み締められたことも、私たちの自信や糧に繋がりました。

mACKAz:何より、ゲーム/アニメ好きが集まって、いい作品が作れたことが嬉しかったです。好きなもののために集まって、一緒に何かを作っていく楽しさを改めて感じました。

SASSY:僕も音ゲーをやってなかったら、ドラムをやっていなかったりする人間なので、今回の作業はとても楽しかったです。あと、今回毛蟹さんの作業の中で感じた、音を可視化していく作業にもすごく刺激を受けました。毛蟹さんは世代としては僕らよりも年下ですけど、ルーツになるような音を共有している部分もありますし、また何か一緒に作業をさせていただけたらとても嬉しいです。いい出会いをいただけて、本当に感謝しています。

【その2:北川勝利(ROUND TABLE)と宮川弾に聞く、『Fate/Grand Order』〈新宿幻霊事件〉テーマソングに隠された秘密
【その3:『Fate/Grand Order』1.5部楽曲はどのように生まれた? TYPE-MOON・芳賀敬太に聞く

(取材・文=杉山仁/撮影=林直幸)

『Fate/Grand Order Original Soundtrack Ⅱ』

■リリース情報
『Fate/Grand Order Original Soundtrack Ⅱ』
発売:2018年3月28日(水) 発売 
価格:4,104円(税抜3,800円)
仕様:全3枚組
初回仕様特 :三方背ケース

<収録楽曲リスト>
【Disc1】
1.Epic of Remnant
2.Lose Your Way
作詞:宮川弾 作曲・編曲:北川勝利 歌:ROUND TABLE feat. DAN
3.悪性隔絶魔境:新宿
4.幻霊都市
5.アンチヒーローズ ~BATTLE 3~
6.歌舞伎町の怪人
7.Dance with Black ~子犬のワルツより~
8.Stormfang ~FATAL BATTLE 3~
9.その命題 ~GRAND BATTLE 2~
10.Indelible illusion
作詞:Yamachang 作曲・編曲:高慶CO-K卓史 歌:YURIKO KAIDA
11.伝承地底世界:アガルタ
12.新天地に舵を切れ
13.密告の不夜城
14.エルドラドの女王
15.幻想空中都市:ラピュタ
16.それぞれの理念 ~BATTLE 4~

【Disc2】
1.moon salto(Ⅱ) ~FGO~
2.spinal sg coaster
3.BB channel ~FGO~
4.anima ataraxia ~FGO~
5.深海電脳楽土 SE.RA.PH:BATTLE FINISH
6.spinal swan coasterⅠ
7.spinal swan coasterⅡ
8.spinal swan coasterⅢ
9.一刀繚乱
作詞:毛蟹 作曲・編曲:西岡和哉 歌:六花
10.屍山血河舞台:下総国
11.刀匠の庵
12.血風 ~BATTLE 5~
13.御前也
14.極限の刻へ
15.鏖殺を斬る ~英霊剣豪七番勝負~
16.勝負あり
17.エミヤ ~無元の剣製~
18.残焔
19.清廉なるHeretics
作詞・作曲・編曲:毛蟹 歌:毛蟹 feat. DracoVirgo
20.禁忌降臨庭園:セイレム
21.迷信の町
22.異端の夜
23.魔女裁判
24.恐怖への呼び声 ~BATTLE 6~

【Disc3】
1.日差しの中で ~FGO~
2.ぐだぐだショップ大炎上 ~寺~
3.ぐだぐだショップ大炎上 ~誠~
4.cha cha ka wa ii !!
5.激突する魂 ~FGO~
6.光と闇 ~FGO~
7.運命 ~剣舞~
8.BURN OUT!
作詞:毛蟹 作曲・編曲:家原正樹 歌:乃藍
9.デッドヒート・サマーレース!:マップテーマ
10.Crazy Machines
11.Overtake
12.Venus Racer ~SUMMER BATTLE 2~
13.デスジェイル・サマーエスケイプ:マップテーマ
14.Connacht Breaker ~SUMMER BATTLE 3~
15.light step ~FGO~
16.超絶縦長魔城:チェイテ
17.エリチャンファイト
18.天然特撮魔城:チェイテ
19.ハロウィン・ストライク!:ショップテーマ
20.The Sun in the Abyss

タイトル名:Fate/Grand Order(フェイト/グランドオーダー)
ジャンル:FateRPG(フェイトRPG) iOS/Androidにて好評配信中
開発・運営:DELiGHTWORKS Inc.(ディライトワークス株式会社)
製作:TYPE-MOON / FGO PROJECT
価格:基本無料(アプリ内課金あり)
公式サイト:https://www.fate-go.jp/
公式Twitter:@fgoproject(#FGO)
著作権表記(C)TYPE-MOON / FGO PROJECT

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