森朋之の「本日、フラゲ日!」vol.89
米津玄師、w-inds.、雨パレ.……日本の音楽シーンをアップデートする新作
“Awesome City Tracks”シリーズ、ベスト盤のリリースを経て、新たなタームに突入したAwesome City ClubのニューEP『TORSO』。「『今の自分達を、良い所も、恥ずかしい所も、全て見てもらおうじゃないか』という気持ちで今回EPを作りました」というatagi(Vo/Gt)のコメント通り、サウンド、歌詞の両面において、メンバー自身の憧れ、欲望をストレートに反映させた楽曲が並んでいる。ネオシティポップのムーブメントともに登場したAwesome City Clubは、決して音楽センスの良さを頼りに音楽を生み出しているのではなく、“こんな自分でいたい”“こんなバンドになりたい”という強い思いに導かれて活動を続けている。本作に込められた濃密なエモーションこそが、その証左なのだと思う。
2016年の秋にロンドンに拠点を移し、ヨーロッパ、アジア各国で積極的なライブ活動を展開。ヨーロッパ各国のSpotifyでも確実に実績を残すなど、海外でのブレイクを明確に視野に入れはじめたThe fin.の約3年3カ月ぶりのニューアルバム『There』。ジャミロクワイ、パッセンジャーなどの作品を手がけたことで知られるブラッドリー・スペンスをプロデュースに迎えた本作には、ソリッドに削ぎ落とされたアンサンブル、インディーロックとオルタナR&Bがナチュラルに混ざり合う楽曲、そして、生々しいライブ感を備えたボーカルがバランスよくレイアウトされている。音像は完全に2018年の洋楽だが、メロディの端々に日本的なオリエンタリズムを感じ取れるのも興味深い。
■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。