『the tripod e.p.2』インタビュー

m-floが語る、再結成への想いとそれぞれの現在地「今は間違ってることが面白いと感じられる」

LISA「最初にこのリリックで行って本当によかった」

――今回のシングルは、まずどの曲ができあがったんですか?

☆Taku:「never」です。映画のタイアップの話が先にあって、映画の世界観として、バラードでお願いしますって言われて。そのお題に見合ったトラックを何曲か作って、LISAがメロを書くところから始まりました。

――久しぶりに聞くLISAさんのメロディやソングライティングに対してどんな印象を受けましたか?

☆Taku:メロディはパワーアップした印象ですね。この人、やっぱり1本、筋が通ってるなって。人間として老舗感があるっていうか(笑)、ブレない。

LISA:ありがとう。

☆Taku:そこは変わらないけど、ライティングスピードは早くなってるなって。あと起伏の出し方とかが上手くなってるなとか、そういう変化は感じました。

——歌詞はどんな思いで書いたんですか?

LISA:これはもう「ラブレター to m-flo」です。再始動する自分たちの1発目で、さらにバラードということになると、どうしても私の伝えたい思いが先に来てしまって。それにファンに向けてのラブソングでもあるんです。なので、すごくストレートに書いたし、レコーディングのときも唯々ハートで歌いました。歌詞があまりにもど直球なので、スタジオに入ったときウルッと来たほど。VERBALもラップで私の気持ちに応えてくれてグッときたし、再始動の最初にこのリリックで行って本当によかったなって思いました。

VERBAL:ラップは、LISAが書いた歌詞に対して書きたいと最初から思ってたんです。LISAの歌を聞いてから書いた方が思いをまっすぐにぶつけられるし、実際、LISAがスタジオで歌ってるエネルギーを感じて、あのリリックが出てきたんです。レコーディングが終わったあと、LISAに「ありがとう」って言われたのが印象的でしたね。3人のコミュニケーションがばっちり取れた曲だと思うし、ファンの人も聞いて安心できる内容になっていると思います。

――☆Takuさんがビートメイクでこだわった部分は?

☆Taku:LISAが歌うところはバラードだということをすごく大事にして、VERBALのラップのところは、そのバラードの中にUSのヒップホップの音色をどうやって混ぜていくかっていうことを意識しました。

――言わば王道のJ-POPバラードに、最近のエモトラップを入れたところに新しさを感じました。

☆Taku:ありがとうございます。そこに気づいてもらえて良かった。

――しかもトラップじゃなくて、もう一歩進んでエモトラップを入れる。そこが☆Takuさんらしいセンスだなと。

☆Taku:入れたかったんですよね。それが僕の中のm-floっていうか。引っ張られるんですよ、2人に。VERBALはLISAの歌を聞いて歌詞を書くっていうけど、僕は2人のメロとラップが出来上がってきてからビートを構築していくから、そういうのはLISAとVERBALと一緒にやってるからこそできることだと思うんです。

m-flo / never(映画「去年の冬、きみと別れ」Special Edit)

――「No Question」はリズミカルな曲ですが、「never」とは逆のベクトルで作ろうという意識が働いて作った曲なんですか?

☆Taku:m-floっていろんな表現をしてきたし、バラードもm-floだと思うんです。LISAがいた頃の「Yours only」とか「Come back To Me」とか、あとLISAじゃないけど「let go」とか。でも、それ以外の部分でもっともm-floらしい曲を作りたかった。それが「No Question」なんです。目指したのは今と過去の融合。この曲は、本当にリブートっていうことを意識しました。

――この曲を聴いたとき、「come again」の面影がうっすらとありつつ、決して過去の焼き直しではないと思ったんです。

☆Taku:「come again」とか「Hands」とか、『EXPO EXPO』(2001年3月発売2ndアルバム)と『Planet Shining』時代の要素は意識したんです。だから、楽器もウッドベースに渡辺等さん、ストリングスに河野伸さん、ギターに石成正人さんと、当時やってた人たちに声を掛けて作ってる。だけど、出してる音は今のフューチャーベースなんです。しかも間違ったフューチャーベース。

――まっとうなフューチャーベースじゃないというか。

☆Taku:そう。いい表現じゃないかもしれないけど、間違えたいんですよ。なぜなら、3年くらい前から自分たちの過去の作品を聴いても、すごく新鮮に感じるようになって。昔は聴くのがすごく嫌だったんです。だけど、なぜ今、フレッシュに感じて、タイムレスに感じるかっていうと、「come again」とかツーステップっていわれるけど、全然ツーステップじゃないんですよ。ツーステップのセオリーで考えると、使ってる楽器とかが全然違う。以前はそれをネガティブに考えてたんです。でも、今はその間違ってることが面白いと感じられるようになって。今回のアレンジ面ではそこをすごく意識したんです。

m-flo / No Question (EDIT Ver)

――あと、「No Question」はVERBALさんのラップが面白かったです。特にセカンドヴァース。いい意味で昔のVERBALさんっぽいっていうか、ちょっとハチャメチャ感があって。

VERBAL:ありがとうございます。実は、「never」の制作がスタートした時から、LISAにずっと「最近のVERBALのラップってつまんないよね」って言われてて(苦笑)。かっこいいって言ってくれるんですけど、仰っていただいたように、昔のハチャメチャ感がないと。ちょっとセーブしすぎてる、みたいな。

LISA:かっこいいだけじゃんって。VERBALはもっとブッ壊れてたし、クレイジーだったし。けど、その言葉選びと言葉遊びがないから、それを戻してくれ! って。「ちょっとつまんないから面白いの書いて欲しい!」ってさらっと言ったよね(笑)。

VERBAL:もうちょっと優しく言ってくれたけどね(笑)。でも最近は同じテーマで書くことも増えてて、次はどうしよう? っていうくらいなタイミングで言ってくれたれたから、その言葉がスコーンと頭に入ってきて。昔ってどんなだったっけ? と思って、デビュー前から取ってあるリリックノートを見返したんですよ。

☆Taku:それ、印刷して本にしようよ(笑)。

VERBAL:やだよ(笑)。9割9分使えないものだし、日記っぽかったりするから恥ずかしいんですけど、当時の思いとか熱がそこにはあって。この頃の自分って何言ってるかわからないけど面白いなと思って、いくつかノートにメモっていったんです。それをスタジオに持ち込んで、LISAの歌を聞いてから、言葉を組み合わせていったら段々こういう感じになっていったんです。

――LISAさんは「No Question」の歌詞をどんな思いで書いたんですか?

LISA:歌詞で言ってる通りですよ。「いろいろ許されない世の中なら全て投げ出して、I don’t care!」みたいな。

VERBAL:そういう意味では「come again」っぽさはあるかもしれないね。もう過去を忘れて、みたいな。

LISA:そうかもね。でも、あの曲は私もVERBALもメッセージがちょっと強めじゃん。「Ten Below Blazing」(『Planet Shining』収録)寄りになってるから少し怒りもあるし。でもこれは、私たちにとって面白くないんだったら別にいらないし、みたいな。一言で言うと「で?」みたいな曲(笑)。でも、「で?」っていう曲は、日本のポップスではあまり書けない曲でもあると思うんですよね。

――怒りを通り越して呆れる、みたいな。

LISA:これはトラックがすごくパワフルだったんですよ。いつも☆Takuから最初に渡されるのはシンプルなコードがついてるくらいなんですけど、なぜか結構トラックができた状態で渡されたので、そのサビのパワーを聞いた時に、これは優しい方向の歌詞ではないなって。このサウンドに合うのはやっぱりこういう「I don’t care! It’s OK!」っていう感じだと思ったんです。

☆Taku:この曲に関しては、3人とも強いメッセージがあったかもね。僕もトラックに込めたメッセージが強かったし。

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