ジャニーズWESTが『WESTival』で示す振り幅の広さ グループは今後どう化けていく?

 安室奈美恵の最後のベストアルバム『Finally』が再び2位に浮上。『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)出場の効果もあってか売り上げはさらに伸び続けており、ついに200万枚の大台を突破した。もっとも、ここに収録されているのはあくまでも「安室奈美恵のこれまでの足跡」であり、今の時代のポップスに関する最新モードが提示されているというわけでは必ずしもない。「安室ちゃん懐かしい! やめちゃうならCD買おう!」という層が動いたからこそこの数字が叩き出されていると考えるのが自然であり、DJ和の2000年代ミックスアルバムがいまだロングヒットを続けていること(今週も6位)などを見ても、CDを買うという行為において「思い出をなぞる」という意味合いが強まっているのが感じられる直近のチャートである。

 さて、今回取り上げるのは初登場1位を獲得したジャニーズWESTの『WESTival』。2014年のデビュー以来4枚目のオリジナルアルバムで、前作『なうぇすと』に続く1位を記録した。

 現時点ではジャニーズ事務所における最後のCDデビュー組である彼ら(最近ではジャニーズJr.内のグループにもスポットライトが当たるようになってきているが、CDデビューはまだである)の最新作は、「一般的なジャニーズのイメージ」をそのままトレースしたかのような作品となっている。これぞジャニーズという感じのディスコ歌謡「もう1%」「人生は素晴らしい」、KinKi Kids「硝子の少年」的な哀愁シティポップテイストの「おーさか☆愛・EYE・哀」、時代の流れに目配せしたEDM〜トロピカルハウス調の「Baby Good!!!」、スカロックのパーティーチューン「OH LA LA」、クリスマスのイルミネーションが似合うロマンチックなミディアムナンバー「Parade!!」など、音楽的な統一感はないが、「この振り幅の広さがジャニーズ」と言いたくなるような多様性を楽しめる。

 もっとも、おそらく彼らにとって重要なのはそんな「多様性」の先に何を見出すかだろう。ジャニーズ事務所全体を見てみると、関ジャニ∞が全方位的に支持を拡大して新しいスター然とした立ち位置を獲得し始めている一方で、それによって不在となりつつある中堅層の強化が急務となっている。特に楽曲面においては、Hey! Say! JUMP以降のグループから明確な代表曲がなかなか生まれていない。昨年はSexy Zoneがメロウな「ぎゅっと」で新たなステージに踏み出した感があるが、ジャニーズWESTにも「バラエティに富んだ」と形容されるフェーズの次の段階として「この人たちと言えばこれ」という形で認識されるフックを生み出すことが重要になってくると思われる。

 ジャニーズWESTにとって今作は4枚目のアルバムだが、大先輩の4枚目のアルバムリリース時を振り返ってみると、SMAPはそれ以降の音楽的な充実につながる指針がやっと示されたタイミングであり(『SMAP 004』)、嵐についてもまだまだ「国民的アイドル」と呼ぶには程遠い状況であった(『いざッ、Now』)。こう考えると、ジャニーズWESTの今後の「化け方」は全く想像がつかない。デビュー5年目となる2018年、彼らはどんな展開を見せてくれるのだろうか。

■レジー
1981年生まれ。一般企業に勤める傍ら、2012年7月に音楽ブログ「レジーのブログ」を開設。アーティスト/作品単体の批評にとどまらない「日本におけるポップミュージックの受容構造」を俯瞰した考察が音楽ファンのみならず音楽ライター・ミュージシャンの間で話題に。2013年春にQUICK JAPANへパスピエ『フィーバー』のディスクレビューを寄稿、以降は外部媒体での発信も行っている。

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