村尾泰郎の新譜キュレーション:特別編
村尾泰郎が選ぶ、2017年USインディーベスト10 実験精神と歌心を併せ持つ必聴作揃う
最後に、今年インディーを卒業してメジャーデビューしたアーティストも入れておきたい。The NationalやDirty Projectorsと並んで、ブルックリンシーンの中核だったGrizzly Bear『Painted Ruins』は、幻想的なサウンドはそのままにエレクトロニックな音色と力強さを増したビートが印象的。名門<アトランティック>に移籍したThe War On Drugsの『A Deeper Understanding』は、バンドの中心人物、アダム・グランデュシエルの滋味溢れる歌とサイケデリックな浮遊感を漂わせたサウンドで、アメリカンロックのメインストリームに切り込んだ。また、元バンドメンバーのカート・ヴァイルが、オーストラリアのシンガーソングライター、コートニー・バーネットとコラボレートした『Lotta Sea Lice』も充実した内容だった。
インディーらしい実験精神を感じさせながも、じっくり聴かせる歌心も併せ持ち、そこにはアメリカンロックの歴史がしっかり受け継がれている。そんなアーティスト達の作品が並んだ2017年。改めてUSロックシーンの層の厚さを感じさせた。
■村尾泰郎
ロック/映画ライター。『ミュージック・マガジン』『CDジャーナル』『CULÉL』『OCEANS』などで音楽や映画について執筆中。『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』『はじまりのうた』『アメリカン・ハッスル』など映画パンフレットにも寄稿。監修を手掛けた書籍に『USオルタナティヴ・ロック 1978-1999』(シンコーミュージック)などがある。