黒猫チェルシー 渡辺大知が語る、音楽と役者活動のバランス「両方で自分を保っているところがある」

渡辺大知が語る、音楽と役者活動のバランス

「何をやれば楽しいのか、マジメにバカをやれるかが大事」 

ーーNHKの連続テレビ小説『まれ』(2015年)をはじめ、この数年は役者としても幅が広がっています。

渡辺:役者もしっかりやろうと覚悟を決めてから、不思議といろいろな話をいただけるようになったんですよ。あとはこういうインタビューで自分の思いを語らずとも、「渡辺という人は音楽と映像、どっちもやらないとあかん人なんやな」と思ってもらえるような活動をしていかないと。「音楽がないと生きていけない」というミュージシャンもいると思いますけど、僕はそういうタイプではないんですよね。とにかくカッコいいヤツになりたい、カッコいい表現がしたいっていうだけなので。それは何や?って言ったら、ムリせず、自分らしいことをやることなんです。自分にしかできないことをやろうとしている人はカッコいいと思うし、僕もそういう人になりたいので。

ーーバンドの調子が戻ってきたのも大きいんじゃないですか? シングル「ベイビーユー」の初回盤特典映像に収録されているメンバーの飲み会の映像からも、今の黒猫チェルシーの状態の良さが伝わってきました。

渡辺:あの長いヤツですね(笑)。眠くなりませんでした?

ーー前半はかなりユルいトークでしたけど(笑)、後半はめちゃくちゃ濃密なトークが展開されていて。バンドの危機についてもガッツリ話してますよね。

渡辺:そうですね(笑)。4人揃って飲むのはガチで初めてだったし、めちゃくちゃ楽しかったんですよ。後半は酔っぱらって頭の回転が遅くなってますけど(笑)、「あのときはこう思っていた」みたいなこともちゃんと話せたのは良かったです。何て言うか、あの座談会をやったことで「バンドは家だな」って思えたんですよね。バンドという家があるから、外に出れるというか。メンバーも別のバンドとか、サポートの仕事を精力的にやっているし、そこで得たものを黒猫チェルシーという家に持ち帰ることができれば、それでいいんじゃないかなって。あとね、黒猫チェルシーはのびのびやらないとダメなバンドだと思うんです。ちょっと肩の力を抜いた状態じゃないと、いい音楽が作れないバンドなんだなって、10年目にして実感しました(笑)。

ーー飲み会の映像でも話してましたけど、かなり煮詰まってる時期もあったようですね。

渡辺:煮詰まるというか、赤黒い泥みたいなものにまみれてるというか。思い出したくもないですけど(笑)、「どん底ってこういうことか」っていう時期もありましたからね。「次のアルバムが売れなきゃ死ぬ」くらいの気持ちだったこともあるんですよ。ストイックではなくて、強迫観念みたいに曲を作っていたというか。そうじゃなくて「自分たちはどういうことでワクワクできるのか?」というのが大事なんですよね。今回のシングルもそうだったんです。「ベイビーユー」という表題曲ができて、「カップリングはどうする?」という話になって。候補曲も何曲があったんですけど、表題曲とカップリングの2曲でシングルにするだけでは自分たちが楽しめないと思って。「このシングルをどれだけおもしろくできるか?」ということを考えて、「ベイビーユー」が5曲っていうシングルになったんですよ。

ーー表題曲「ベイビーユー」のほか、4人のメンバーがそれぞれ監修した別バージョンがそれぞれ収録されていますね。

渡辺:そうやって音楽でおもしろがってないとダメなバンドなんです。「自分たちに求められていることは?」みたいなことを考えているのは最悪だし、不健康ですからね。何をやれば楽しいのか、マジメにバカをやれるかが大事なんです、ホントに。

ーー「ベイビーユー」の初期The Beatles的なイメージは、この曲だけではなくて、今のバンドのモードにつながってるんですか?

渡辺:あ、そうかもしれないですね。好きなバンドは4人ともバラバラなんですけど、完全に一致しているのがThe Beatlesで。あとはRed Hot Chili Peppers、ゆらゆら帝国、XTCとかかな。だから自然と好きなようにやったら、4人のルーツであるThe Beatles的な感じになるのかなと。

ーー本当に楽しみながら音楽をやれているんですね。

渡辺:今がいちばん楽しいですからね、バンド。いつからこんなに楽しくなったのかは覚えてないですけど(笑)。ただ、一人一人の時期は違えど、腹を括るタイミングがあったんだと思います。デビューしたレコード会社との契約が切れたことも大きかったですね。CDを出すことができなくなっても、やっぱり曲は作りたいわけですよ。そういう時期にグッと染み入るような曲ができたり、「バラードを書きたい」と思ったりして。僕ら自身はそういう曲を求めてたんですよね。「もっとオールドスクールなロックンロールをやらないといけないのかな」と思ってたけど、そういうことじゃないなって。そこからは好きな曲、作りたい曲を作るようになったので。

ーー今年2月にリリースされたアルバム『LIFE IS A MIRACLE』はまさにメンバーの自由なクリエイティビティが発揮された作品でした。

渡辺:うん、4人それぞれのルーツが垣間見れる曲が多いので。自由に好きなことをやると、いままで聴いてきた音楽の要素が出てくるんですよね。どんなものにシビれてきたか? というのが自然と感じられるというか。

ーー今年9月にはソロの弾き語りライブも開催しましたが、“渡辺大知”として歌う場合はルーツがさらに強く出てくるんでしょうか?

渡辺:ルーツが出るかどうかはわからないですね。ソロのライブは「自分自身が100%出せればいい」という感じでやっているので。黒猫チェルシーとして歌うときは、自分のなかにある憧れだったり、「本当はこういうことをやりたい」という理想に近づける感覚があるんです。「バーン!」「ジャキーン!」みたいな感じでやるためには、やっぱり澤のギターがないとダメだし、岳ちゃん、啓ちゃんの力が必要なので。弾き語りは黒猫チェルシーのライブを良くするための修行のひとつというところもあるんですよ。実際にやってみて「バンドとは違う、弾き語りの良さもあるよな」と気付いたりもしましたけどね。

ーーひとりで歌うことを体験することで、歌に対する意識も深まったのでは?

渡辺:それはめちゃくちゃあります。弾き語りといってもコードしか弾けないから、歌でどれだけ表情を付けられるかが大事になってくるんですよ。「言葉とメロディをどれだけ歌にできるか?」ということも考えるようになりましたね。メロディに言葉を乗せて発すれば歌になるかといえば、そうじゃないので。言葉の重みについても意識するようになりましたね。人間の口から言葉が出れば、良い悪いは別にして、目の前の人に何かが伝わってしまう。こうやって喋ってるときもそうですけど、どんな些細な言葉であっても、何も感じないということはないんですよね。歌はその最たるものだと思うし、バンドのなかの言葉の部分を背負ってるということは、もっと考えていきたいです。

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ーー来年の結成10周年については?

渡辺:デビュー10周年は派手にやりたいと思ってるんですよ。ちょうど東京オリンピックだし、2020年っていうキリのいい年なので(笑)。結成10周年はバンド結成日の3月17日のライブ(2018年3月17日に渋谷CLUB QUATTOROで開催される『第1回輝く!10周年ゴールデンライブ〜栄光のワンマン〜』)にすべてをかける感じですね。

ーー期待してます。紆余曲折を経て、ようやく黒猫チェルシーにとっていちばん良いバランスに辿り着いたんでしょうね、きっと。

渡辺:辿り着いたかどうかわからないですけどね。単純な天秤ではなくて、いろんな要素が重なって今のバランスがあると思うし、「この先も迷いなく進めるはずだ」というわけではないので。もちろん今は自信を持って楽しめているし、それが自分たちの強味になっているのは確かですけど、先のことはわからないです(笑)。

 (取材・文=森朋之/撮影=下屋敷和文)

■リリース情報
『ベイビーユー』
発売:2017年12月13日(水)
価格:初回生産限定盤(CD+DVD) ¥2,000 (+tax) 
   通常盤 (CD ONLY) ¥1,200 (+tax)

<収録内容>
M-1.ベイビーユー
M-2.ベイビーユー —宮田岳ver.—
M-3.ベイビーユー —澤竜次ver.—
M-4.ベイビーユー —岡本啓佑ver.—
M-5.ベイビーユー —渡辺大知ver.—

<初回生産限定盤・特典映像>
1.ベイビーユー -Music Video-
2.「はじめての“のみかい”!〜密着!黒猫チェルシー結成10周年にして初4人飲み会の全貌〜」

■映画情報
映画『勝手にふるえてろ』
原作:綿矢りさ著『勝手にふるえてろ』文春文庫刊 監督・脚本:大九明子 
出演:松岡茉優 渡辺大知(黒猫チェルシー) 石橋杏奈 北村匠海(DISH//)他配給:ファントム・フィルム
(C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会
公式サイト

■ライブ情報
『黒猫チェルシー 結成10周年記念LIVE』
・2018年3月5日(月)神戸VARIT.
『第1回 輝く!10周年ゴールデンライヴ 〜宿命のツーマン〜』
VS OKAMOTO’S
OPEN/18:00 START/19:00 チケット前売り:¥3,500(D代別)

・2018年3月17日(土)渋谷CLUB QUATTRO
『第1回 輝く!10周年ゴールデンライヴ 〜栄光のワンマン〜』
OPEN/17:15 START/18:00 チケット前売り:¥3,500(D代別)
※両公演共に、チケット一般発売は2018年1月14日(日)

■関連リンク
HP
Twitter
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チェキプレゼント

渡辺大知(黒猫チェルシー)のサイン入りチェキを2名様にプレゼント。応募要項は以下のとおり。

<応募方法>
リアルサウンドの公式Twitterをフォロー&本記事ツイートをRTしていただいた方の中から抽選でプレゼントいたします。当選者の方には、リアルサウンドTwitterアカウントよりDMをお送りさせていただきます。
※当選後、住所の送付が可能な方のみご応募ください。個人情報につきましては、プレゼントの発送以外には使用いたしません。
※当選の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。

<応募締切>
12月27日(水)まで

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