嵐が示した“アルバム”というフォーマットの可能性 宗像明将の『「untitled」』評

 通常盤にのみ収録されているDisc 2は、嵐というグループの楽曲のバラエティを補強しているかのようです。相葉雅紀・大野智・櫻井翔による「バズりNIGHT」は、1990年代ヴェルファーレのパラパラを髣髴とさせます。松本潤・二宮和也・大野智による「夜の影」は艶やかなR&Bナンバー。相葉雅紀・二宮和也による「UB」はアコースティック感覚が強いサウンド。松本潤・櫻井翔による「Come Back」はヒップホップ。そして、ボーナストラックの「カンパイ・ソング」はパーティーチューンです。

 『「untitled」』というアルバムが真に衝撃的なのは、嵐ほどのアーティストが「アルバム」というフォーマットを駆使してここまで攻めてくるのかという点です。すでに古いものとされているCDというメディアの可能性さえ提示しています。しかし、それは間違っても懐古的ではなく、2017年のJ-POPとして高い強度を誇るサウンド。だからこそ『「untitled」』という冒険作は成立しているのです。なにしろ、ほぼ実験作なのですから。

■宗像明将

1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter

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