森高千里がたどり直す“変化の時期”ーー歌手デビュー30周年、3ツアー再現ライブの意義とは
森高の一連のセルフカバーには、2つの傾向がある。1つは本人がドラムを叩くなど人力演奏にポイントを置き、今の彼女にふさわしいよりオーガニックでナチュラルな響きを曲に与えようというもの。また、森高は音楽活動の本格的再開後、tofubeatsとのコラボで「Don't Stop The Music feat.森高千里」を制作しただけでなく、森高豆腐として過去曲のリメイクも行っていた。そこでトライしたように、自分の曲を現在のダンス・ミュージックへとアップデートすることも、200曲セルフカバーにおけるもう一つの方向性となっている。10月の公演で90年代前半のツアーのセットリストを再現するといっても、過去のアレンジをそのままなぞるとは考えにくいし、曲によってセルフカバーでみせたような2方向のリアレンジがされるのだろうと予想する。
ブレイクした時点でのビジュアルが強烈だったけれど、彼女はそのイメージに縛られることなく変化し、今もなお力むことなく変化し続けている。素敵な歳の重ねかたをしている人だと思う。
■円堂都司昭
文芸・音楽評論家。著書に『エンタメ小説進化論』(講談社)、『ディズニーの隣の風景』(原書房)、『ソーシャル化する音楽』(青土社)など。