『真夏の全国ツアー 2017』ライブレポート(その2)

乃木坂46は次世代を“育てながら勝つ”グループに 神宮公演に感じた、東京ドームへの確かな架け橋

「みなさんにとって、2期生はどう見えていますか?」(寺田蘭世)

 乃木坂46の2期生は、グループの歴史にもっとも振り回されていたメンバーといってもいい。3期生のように一塊になる間もなく堀未央奈が選抜のセンターに抜擢されるなど、2期生全体として活動する期間は少なく、個々のメンバーがバラバラの歴史を積み上げてきた。しかし最近は堀・新内眞衣・北野日奈子・寺田蘭世が選抜入りを果たし、アンダーのセンターを渡辺みり愛が、フロントを鈴木絢音と山崎怜奈が務めるなど、快進撃が続いている。堀は先日のインタビューで、この勢いを喜ぶとともに「私は頼りない人間なんですけど、私なりにみんなを支えたい」と語ってくれた(参考:乃木坂46 堀未央奈、“2期生の躍進”を語る「頼りない人間だけど、私なりにみんなを支えたい」)。だが、このライブで堀が見せたのは、支えるどころか背中で2期生を引っ張るほどのオーラ。1曲目「バレッタ」を披露する前の静かな動きですら、鳥肌が立つほどの気迫を感じさせた。

 そこから北野が選抜入りし、新内がOL兼任アイドルという道を歩み始めたタイミングの表題曲「気づいたら片想い」をパフォーマンス。寺田が上記の言葉を客席へ投げかけ、続けて北野と新内が13thシングル『今、話したい誰かがいる』の選抜に2期生メンバーが入らなかった苦い思い出を振り返り、「悔しく、つらい日々を過ごしたときの曲」(新内)と話した後、2期生全員を含むアンダーメンバーとしてカップリングに収録された「嫉妬の権利」を披露。その鬼気迫るパフォーマンスは、この日のハイライトといえるエモーショナルさを存分に含んでいた。

 過去のインタビューで北野も語ってくれていたが、この期間で2期生全体の絆が深まったからこそ「今までのことよりも、ここからの成長のほうが大事だよねって話もした」し、現状の大逆転が生まれているのは間違いない(参考:乃木坂46北野日奈子と寺田蘭世が明かす、“アイドルの楽しさ”と“3期生募集への焦り”)。MCで彼女たちは涙ながらに自分たちの話をしたが、寺田が「私たちが次の乃木坂の歴史を作っていく」と語ったように、逆境を乗り越えたからこその強さを身に着けた。2期生はもう、グループの歴史を引き継ぐだけでなく、さらに上へと引っ張ることのできる存在だ。客席を走り回って披露した「そんなバカな」と「人はなぜ走るのか?」の“爆レス祭り”(伊藤かりん命名)や、研究生時代の楽曲である「ボーダー」、初めての2期生オリジナル曲「かき氷の片想い」、そして最後に披露した「きっかけ」を見て、そんなことを思わずにはいられなかった。18thシングルに収録されることが決定した2期生による新曲「ライブ神」も、その勢いを裏付けるものになるだろう。

「運命というのは、努力した人に偶然という橋を架けてくれる」(1期生パフォーマンス前ナレーション)

 1期生のパートの前には、これまでの快進撃をまとめたVTRがビジョンに映し出されるとともに、西野七瀬が好きだという映画『猟奇的な彼女』の「運命というのは、努力した人に偶然という橋を架けてくれる」という最後のセリフを引用し、「彼女たちの前に橋は架かった」というナレーションが流れ、メンバーが一人ひとり呼び込まれる。最後に名前を呼ばれた生駒里奈がセンターポジションに位置取ってスタートしたのは「制服のマネキン」。かつてはその少年性で楽曲の世界観を体現していた生駒は、大人びた彼女なりのパフォーマンスで、別の解釈を与えているかのようだった。

 西野七瀬はMCで「1期生が好きです。みんなの顔を見ていると初期の頃を思い出すし、初めから頑張ってきたと思うとじわっとくる」と語る。2期生や3期生に比べ、1期生は「〇〇期だから」という連帯感よりも、自分たちが最初から一緒にいることで構築された、曖昧だけど強固な絆のようなものを彼女の言葉から感じることができた。

 また、1期生の強みはグループの積み上げてきた歴史の長さであり、ユニット曲の多さだ。ファンから熱狂的な支持を得ている「他の星から」や「あらかじめ語られるロマンス」と、1期アンダーメンバーによる「欲望のリインカーネーション」などが次々に繰り広げることができるのは彼女たちならでは。「転がった鐘を鳴らせ!」「ロマンティックいか焼き」など、ライブ定番曲も6年の歴史を積み上げ、今や日本屈指のタレント集団になった彼女たちによる圧倒的なスター性をもってパフォーマンスされた。そんなワチャワチャ感も出しつつ、最後はしっかり「命は美しい」「何度目の青空か?」で締めるのも彼女たちらしい。

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