ケツメイシ、BUMP、ミスチル、高橋優……今夏注目のシングルに見る“青春”のカタチ
ケツメイシ「はじまりの予感」MV
そんな中、夏ソングの名手・ケツメイシも新曲「はじまりの予感」をドロップする。「夏の思い出」を筆頭に「よる☆かぜ」「また君に会える」「男女6人夏物語」「お二人Summer」「カリフォルニー」「LOVE LOVE Summer」「ヤシの木のように」など、ケツメイシの夏にまつわる楽曲は枚挙にいとまがない。今回の新曲「はじまりの予感」は、思いがけずふとしたきっかけで抱く恋心を歌った、夏ソングなのにどこか切ない雰囲気のミドルチューンだ。
ライブの演出等からコミカルなイメージの強いケツメイシ。現在敢行中のツアーのタイトルも『KTM TOUR 2017 幻の六本木大サーカス団「ハッキリ言ってパーティーです!!」』ときている。『はじまりの予感』のジャケットでも、ファンモンの“顔ジャケ”芸のパロティでアンタッチャブルの柴田英嗣を起用するという大胆な施策を打ち、そのエンタメセンスはJ-POPアーティストで最も成功した例のひとつと言っていいだろう。
しかし、切なさや涙を誘うメロディメイキングもまた、J-POPシーンで随一の腕。特に今回は階段式に音階が上がっていくサビをはじめ、歌メロの美しさが際立っている。内情を見てみると作曲およびトラックメイキングには、Jazzin’ parkの栗原暁と久保田真悟、TINYVOICE PRODUCTION所属のクリエイター・Tasuku Maedaが参加しており、打ち込みのリズムにシンセサイザーやピアノが絡むドラマティックなアレンジには、彼らの手腕も一役買っているようだ。
歌詞は、相手がふと微笑んでくれたこと、目が合ったことから、恋が始まる淡い予感に胸高鳴るという内容。こうした出会いの瞬間のドキドキ感は、年齢や性別に限らず誰でも体験したことがあるはずだ。例えばサビの<久しぶりなんだ こんな風な気持ち/ 出会えた奇跡は はじまりの予感/ただ君が 輝いて見えた/はにかんだ 微笑み/時が止まるほど 見つめ合って>。特別パーソナルな内容ではない普遍的な言葉を選ぶことで、彼らの曲は老若男女の共感を得ているのだと思う。人生の機微に触れる、言わば人の“青春”的感情を呼び起こすケツメイシの夏のライブラリに、またひとつ新しい名曲が追加された。
■鳴田麻未
1990年東京都生まれ。ライター、編集者。2009年に都立工芸高校グラフィックアーツ科を卒業。同年夏から2016年まで7年半にわたって音楽ニュースサイト「音楽ナタリー」編集記者として、ニュース記事執筆、特集制作、企画、営業を行う。2017年1月より独立。