フジロック、今年注目の洋楽アクトは? 新進気鋭からレジェンドまで出演者徹底解説!

<Red Marquee>

The Strypes

 平均年齢16歳の可愛い顔をしたガキどもが、初期ストーンズやゼムやヤードバーズやドクター・フィールグッド顔負けの渋いブルース・ロックをやる……おっさんから10代の少女までを熱狂させたアイルランドの4人組。20歳になった今年リリースされた3作目『Spitting Image』では、音楽性の幅をぐっと広げ、正統派のブリティッシュ・ロック・バンドとして、余裕と貫禄さえ感じさせるバンドに成長しました。

The Strypes - Great Expectations

The Strypes - Behind Closed Doors

Slowdive

 英シューゲイザーの淡い花、スロウダイヴが再結成、フジロックで初来日を果たしたのは2014年。しなやかで優美で耽美的で女性的な昔のスロウダイヴのイメージのままのライブで古くからのファンを感激させましたが、今年出た22年ぶりの新作『Slowdive』では、アレンジにメリハリがつき、リズムも強調され、歌メロが前面に出たポップなサウンドと、The xxに通じるモダンなクールネスが打ち出されて、新しい時代のスロウダイヴを聴くことができました。3年ぶりの苗場。果たしてどう変わっているか。

Slowdive | Pitchfork Live

Slowdive - Sugar for the Pill (Official Video)

Maggie Rogers

 米メリーランド出身の女性シンガー・ソングライター。ファレル・ウィリアムスに見いだされてデビューを飾った23歳です。

Maggie Rogers - folk (Pharrell's feedback)(マギーの歌を初めて聴いて涙目になって感動するファレルの映像)

 まだEPを1枚出しただけの新人ですが、注目度は早くもVIP級。確かに若い頃のジョニ・ミッチェルに通じる声の魅力、歌の力、そして楽曲の良さと三拍子揃い、大物の雰囲気は十分です。EPではファースト・アルバムのころのロードにちょっと似た感じのエレクトロニック・ポップになっていますが、ライブではどうなのか。いずれにしろこれこそ先物買いというもの。要注目です。

Maggie Rogers - Alaska

Maggie Rogers - Dog Years

<Sunday Session>

Goldroom

 LA出身のプロデューサー、ジョシュ・レッグのユニット。昨年ファースト・アルバム『West of the West』をリリースしていますが、それまでに何枚ものシングルをリリース、チャーリーXCX、チャーチズ、ジャネット・ジャクソンなどのリミックスでも知られていました。女性ボーカルをフィーチャーした、ちょっと80年代っぽいノスタルジックでメランコリックなR&B/エレクトロニック・ポップで、3日間の疲れを癒やしてくれそうです。

Goldroom - Lying To You

Goldroom - Spread Love (Official Audio)

TroyBoi

 イースト・ロンドン出身の気鋭のTRAP系プロデューサー。エキセントリックでファンキーなトラックも魅力たっぷりですが、若さいっぱいでぐいぐい煽り盛り上げるDJプレイは見物です。

TroyBoi - Afterhours (feat. Diplo & Nina Sky) [Official Music Video]

TROYBOI in The Lab #SmirnoffHouse at Nocturnal Wonderland

<Field of Heaven>

Thundercat

 インパクト抜群のジャケと共に大きな話題となった新作『Drunk』で、一躍新時代の黒人音楽の最注目アーティストとなったサンダーキャット。ベーシストとしてスーサイダル・テンデンシーズやフライング・ロータス、ケンドリック・ラマーなどに参加、スパイスの利いた見事なプレイを披露しながら、自身のソロでは徹底してソフト&メロウなAOR/フュージョンを展開しています。正直彼のソロはあまりに洗練されすぎていて、もう少しハード・エッジなところが欲しいとも思ってしまうのですが、彼のジャズ、ファンク、ソウル、ロックを横断するクロス・カルチュラルな才能はホンモノでしょう。

Thundercat - 'Them Changes' (Official Video)

Thundercat - A Fan's Mail (Tron Song II) (Live on The Current)

Trombone Shorty & Orleans Avenue

 ニューオリンズ出身の売れっ子トロンボーン・ショーティ。2010年フジロックでの熱いステージが忘れられない人も多いでしょう。U2、グリーン・デイ、ジェフ・ベック、レニー・クラヴィッツなどトロンボーン奏者として客演も多い人ですが、やはり自身でボーカルもとるバンドでのプレイが一番。ニュー・オリンズ・ファンクの伝統にしっかり根ざしながら、ロックもブルースもソウルもごった煮した究極のミクスチャー・ミュージックです。最新アルバム『Parking Lot Symphony』も最高。

Trombone Shorty & Orleans Avenue @ l'Olympia • 2013

Trombone Shorty - Fire And Brimstone

Sturgill Simpson

 米ケンタッキー出身、海兵隊時代に日本滞在経験もあるというシンガー・ソングライター。昨年発表したサード・アルバム『A Sailor's Guide to Earth』が全米チャート3位に入る大ヒットとなって一躍アメリカのカントリー~ルーツ・ロックを代表する存在となりました。ソウルフルなボーカルのスケールの大きさは見事。ニルヴァーナの「In Bloom」を取り上げ、オルタナ・カントリーに仕上げた手腕も要注目です。

Sturgill Simpson - "In Bloom"

Sturgill Simpson - "Brace For Impact (Live A Little)"

■小野島大
音楽評論家。 時々DJ。『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』などに執筆。著編書に『ロックがわかる超名盤100』(音楽之友社)、『NEWSWAVEと、その時代』(エイベックス)、『フィッシュマンズ全書』(小学館)『音楽配信はどこに向かう?』(インプレス)など。facebookTwitter

■ライブ情報
『FUJI ROCK FESTIVAL’17』
日時:2017年7月28日(金)、29日(土)、30日(日)
場所:新潟県 湯沢町 苗場スキー場

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