森朋之の「本日、フラゲ日!」vol.56
Cornelius、清水翔太、ハルカトミユキ、LILI LIMIT、NUUAMM…新作の“歌とリズム”を聴く
エレクトロ、トロピカルハウス、ネオソウルといった海外シーンの潮流を感じさせるバンドサウンドとJ-POPの王道とも言える日本語の歌を融合させてきたLILI LIMITの新作『LAST SUPPER EP』は、より共感度の高いポップスを志向した4曲入りEP。本作のコンセプトをもっともわかりやすく示しているのがリードトラック「LAST SUPPER」。別れを決めた<僕ら>が<せっかくなら後味がこの先も続くように>と<最後の晩餐何を食べようかな>と考えているという切ない歌なのだが、軽やかに飛び跳ねるリズムとポップに振り切ったメロディによって、とことんブライトなポップチューンとして成立している。<思い出モニュメント>のリフレインをはじめ、一瞬で耳に残るキャッチーなフレーズを作れることもこのバンドの大きな武器だろう。
青葉市子、マヒトゥ・ザ・ピーポー(GEZAN)によるユニット・NUUAMMの2ndアルバム『w/ave』。前作『NUUAMM』同様、ふたりだけの親密な空間で制作されたという本作は、青葉市子の美しく凛としたギター、マヒトゥのサイケデリックなサウンドメイク、そして、ふたりが紡ぎ出す、寓話と現実が溶け合うような歌の世界がひとつになった作品に仕上がっている。コンセプトは“人間がいなくなった都市と、そこで踊る幽霊のためのサウンドトラック”。現の世界にしっかりと軸を起きながら、豊かで(ときに恐ろしい)イマジネーションの海にどこまでも深く潜れることこそが、このユニットの特性だろう。シアトリカルな要素を自然に取り入れたふたりのボーカリゼーションもきわめて興味深い。
■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。