“女の子が憧れる女の子”が牽引? TWICE、Def Will、FAKYらガールズグループの台頭を読む
振り返ればいつでも、時代を牽引するガールズグループがいた。90年代を席巻したUKのSpice Girlsがいれば、2000年代のアメリカではDestiny’s Childが世界中の女の子たちを率いていたし、2010年代に入っては何と言ってもK-POPシーンから出てきた個性と才能に溢れる幾つものガールズグループが、世の女性たちの意見を代弁してきた。今年は、BIGBANG やiKONらを輩出してきたYG ENTERTAINMENTが2NE1のデビュー以来、実に7年ぶりに送りだすガールズグループ、BLACKLPINKや、日本や台湾出身のメンバーも擁するTWICEなど、K-POPのシーンでもガールズグループが再注目されそうな予感だ。特に扇情的でスリリングなイメージをうまく利用しているBLACKPINKは、ガールズグループ史を塗り替えるポテンシャルを秘めているし、よりドラスティックにワールドワイドな面を押し出しているTWICEも、今後の活躍が楽しみなところである。
そんな世界中でガールズグループが台頭してきている中、日本でも、ヒップホップ的な側面にフォーカスしたE-girls出身のスダンナユズユリーや、小室哲哉がプロデュースを手掛け、YouTubeを駆使したプロモーションも話題の5人組、Def Willといったガールズ・グループがデビューを果たしたばかり。メンバー全員が色違いの同じ衣装を着て、同じ振付をこなすようなこれまでのアイドル・グループとは異なり、それぞれの個性や才能(ルックスやこれまでの経験、そして語学的な面までも)を思い切りアピールしているのが彼女たちの特徴でもあるといえる。2017年の今、新たな女の子たちのロールモデルとして求められている“女子像”を具現化したグループが目立つのが、昨今のガールズグループの特徴ともいえるだろう。
そして、いよいよこの夏、もう一組の実力派ガールズグループがここ東京からデビューする。
“フェイクなフリして、とことんリアル”なスタイルを追求するガールズグループ、その名もFAKYは、Anna、Lil’ Fang、Mikako、そしてAkinaの4人グループ。ニュージーランドで生まれ、その後、香港やフィリピンで幼少期を過ごしたリーダーのAnna、エッジーなショートカットがリマーカブルで、日本のヒップホップ作品にも親しんで以来、デビュー前にはクラブで洋楽曲のカバーなどを披露してきたというLil’ Fang、甘いルックスかつナチュラルな存在感を放つMikako、そして、アメリカ人の父親を持ち、沖縄とカリフォルニアで育ったというAkina(なんと、FAKYへ加入するためにカリフォルニアから帰国したそう!)と、それぞれ異なるバックグラウンドを持つ4人が集結した。それぞれが、すでにモデルや女優、そして海外アーティストとのコラボなどの経験を持つ女の子たちだ。このFAKY、すでにアンテナの高いリスナーからは高評価を得ており、昨年は『SUMMER SONIC』や『a-nation stadium fes』、そして今年は海外アクトが軒並み揃った『POPSPRING』など、並み居るフェスにも出演し、迫力あるパフォーマンスを披露してきた。
FAKYの楽曲から放たれるのは、芯が強そうで何でも跳ね返してしまいそうな意志の強さだ。定型のアイドル歌手のように甘ったるい声で与えられたメロディを歌うだけではないスタイルは、まさにFAKYが持つダイナミズムが反映されたもの。実際、彼女たちの楽曲を聴くと、伸びやかなアドリブやソリッドなコーラスなど、歌唱力においても細部にわたって平均以上の実力を兼ね備えていることに気がつく。例えば「Surrender」では、トロピカルなバイブスも感じさせる高揚感たっぷりのトラックとメンバーのコーラスワークの相性は抜群で、J-POPシーンの枠には収まらないような可能性を感じさせるには十分の出来。MVでも、シャープな動きのカメラワークと4人のクールな佇まいが強調されていて、普通のガールズグループとは一線を画す雰囲気だ。MVといえば、「Surrender」のほか、「Candy」や「Are You Ok?」など、多種多様なFAKYのスタイルをビジュアライズした映像群はどれも見ごたえたっぷりで、彼女らのYouTubeコンテンツ再生回数は累計500万回を超えるほどの人気を誇る。
そんなFAKYが、いよいよ6月にメジャーデビューを迎える。エアアジアのCMソングとしても選出された「Somebody We’ll Know」や、MTV VMAJ2016において最優秀新人ビデオ賞にもノミネートされた「Candy」、そして、MONDO GROSSOの活動再開も話題に新しい大沢伸一が手がけた「Keep Out」など、新録4曲を含む全6曲で構成されるミニアルバム『Unwrapped』が、avexよりリリースされることが決定したのだ。
FAKYも、同じ“世界基準”を目指す他国のガールズグループに負けず劣らず、今よりもっと濃厚なFAKYワールドを構築していってほしいと願う。彼女たちのSNSを眺めていると、個々の美麗でキュートなルックスはもちろん、何より彼女たちに「かっこいい」と憧れている女性ファンが多いことにも気がつく。歌にダンス、ファッションやメイク、これからが個性の伸ばしどころだろう。とにかく、FAKYなら今だ日本のガールズグループが見たことのない景色を見せてくれるのではと、期待が高まるばかりだ。
可愛いだけではなく、強さやシニカルさ、そしてセクシーさを磨き上げていくようなガールズグループが国内からも多く登場する今の状況は、嬉しくもあり頼もしくもある。 <女の子が憧れる女の子>の台頭は、シーンの活力になるだけではなく、パワフルな女性の活躍を後押しする大きなきっかけにもなるはず。個性豊かな彼女たちの魅力を、これからも余すところなく堪能していきたい。
■渡辺 志保
1984年広島市生まれ。おもにヒップホップやR&Bなどにまつわる文筆のほか、歌詞対訳、ラジオMCや司会業も行う。
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