佐藤広大が語る、ブラックミュージックの影響生かした“表現の幅”「絶対必要なパズルのピース」

佐藤広大、ルーツの影響生かした“表現の幅”


 
曲の中だったら虚像を作れる

ーールーツをうかがうと、今回の「MONEY IN THE BANK」によりうなずけますね。制作の最初のイメージはどんなものでしたか?

佐藤:ギター・カッティングやBPMも含めて80年代の音楽をリバイバルさせることで、新しさに繋げたいなと思ってました。

ーーああ、あのカッティングを聴いたとき、Chicのナイル・ロジャースが浮かびました。曲はどんなふうに?

佐藤:『スノーグローブ』に収録した「Diamond Dust feat. EXILE SHOKICHI」を作ってくれた作家陣が、「これはどうだい?」と渡してくれたのが、まさに描いていたイメージにピッタリで、即決しました。80年代にフォーカスしながら、現代のニュアンスもしっかり入ったものにしたかったんです。

ーーポイントはどこでしたか?

佐藤:ボーカルの扱い方ですね。Bメロでは、けっこうオートチューンをキツくかけてます。その金属っぽい響きは今っぽくて、BPMは80年代のKool & the Gangの「Fresh」風。で、そこにトークボックスが入ってる。僕の中ではトークボックスは90年代の象徴なので、80、90、2000年代と、僕が通ってきた道が凝縮されてるわけです。

ーー歌詞がセクシーで、『ミッション:インポッシブル』のトム・クルーズが浮かんだりします。その世界観はどういうふうに?

佐藤:完全なる妄想です。主人公はまったく僕とは異なる人物。僕はそんなにヤンチャに恋を進めるタイプではないので(笑)。

ーーウハハ。そうなんですね。

佐藤:慎重に、丁寧に、です(笑)。でも、曲の中だったら虚像を作れるじゃないですか。その醍醐味をめいっぱい活用しました。

ーー〈MONEY IN THE BANK〉ってフレーズもハマッてます。

佐藤:その言葉からのインスピレーションで想像を膨らませていったんです。ちょっとミステリアスな疾走感のある曲なので、なんかこう一歩一歩こっそり近付いてく強気な男が思い浮かんだ。その男性が、銀行のお金を盗むような感じで女性のハートを盗むっていうのはどうだろうと。それこそトム・クルーズやルパン三世ですよね。ヤンチャで、ちょっと危なっかしくて、だけど自信があって、最終的には結果オーライで盗み出しちゃうみたいなキャラクターを作りました。

ーーコミカルなポップさも感じられて素敵です。

佐藤:サビは特にキャッチーだと思います。“ウォウウォウウォッオー”とか〈MONEY IN THE BANK〉とか、ライブでみんなが声を出しやすい仕掛けにもなってます。

ーーサウンドに関して、広大さんからのこだわりは、やはりトークボックスの現代風な使い方みたいなところでしたか?

佐藤広大:そうですね。今回はちょっと控えめに使ってますけど。

ーーフレーズのカッコよさやモジュレーションの効かせ具合などいろいろあると思うので、けっこうテイクを重ねたんじゃないですか?

佐藤:はい。特にイントロ部分は最後まで粘りました。盗む前から盗むまでを追った歌詞なので、「だんだん近付いてきてる」という躍動感を、トークボックスの使い方の変化で表現したかったんです。

ーー歌うという部分で心したことはありますか?

佐藤:リズムにはこだわりました。1番、2番ともAメロの頭の部分のグルーヴには特に。あと、録り方でいうと声をダブルにするのにWAVES Doublerという機材を使ったことです。

ーーダブルにはなってるなと思ってたんですが。

佐藤:普通ダブルって、まず1テイク歌を録って、重ねるためのもう1テイクを録って作りますよね。でも、WAVES Doublerで、1テイクをコピーして、重ねる用にボリュームなどを調整してダブらせるんです。そうすると独特のツヤが出て、さらにそこにオートチューンがかかると、ちょっと金属っぽい鳴りになる。

ーー2回録って重ねるのとは全然違う響きになるんですね。

佐藤:そうなんです。本来ダブルは、録った2つの声のズレによって厚みが出るんですけど、この曲に関しては、そういう厚みじゃないほうがむしろいいと思ったんです。

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