乃木坂46 3期生に感じる“可能性” 単独公演がもたらした大きな意味とは

乃木坂3期生に感じた“いくつかの可能性”

 歌パートでは、「君の名は希望」で、大薗桃子がピアノ伴奏を担当したことも注目を浴びた。乃木坂46において、ピアノ伴奏といえば音大にも通う生田絵梨花の名前が真っ先に挙がる。そんな先輩の影もちらつくが、ピアノというのは弾き手次第で音色が全く変化することを、大園の演奏で改めて思い知らされた。生田がおしとやかに楽曲の切ない雰囲気を強めるプレイだとすれば、大園の伴奏は純粋に音と遊ぶような、軽やかなテンポが印象的だった。先述したお見立て会の記事で、大園の異端さについて書いたが、今回の公演を見てもなお、彼女の可能性は底が知れない。

 千秋楽の公演では、そんな大園が喉を潰してしまう場面も見受けられた。初めてのロングランに、身体もまだ慣れていなかったのだろう。「きっかけ」のAメロ頭、掠れた声を絞り出すように歌う彼女の姿を受けて、もう一段階ギアが入ったようにほかの11人の雰囲気は一変。鳥肌ものの歌唱を見せてくれたことも記しておきたい。

 12人それぞれの持つポテンシャルについて書き記すことは難しいが、全公演を通して活躍したメンバーといえば、MCを務めた梅澤美波と伊藤理々杏だろう。梅澤はその大人びた雰囲気と言動で場を速やかに進行してみせれば、伊藤は元気一杯ながら的確に他のメンバーを扇動する。伊藤に関しては、オーディション時のSHOWROOMからその適性があるのではないかと感じていたが、ここまで早い段階で開花すると末恐ろしさすら覚える。

 最後に、この日初披露された新曲「思い出ファースト」についても触れたい。この曲はほかの乃木坂46楽曲と比較してもとりわけ明るいもので、AKB48の夏曲と言われてもおかしくないくらい、ギターサウンドが目立つ王道グループアイドルソングだ。選抜表題曲でこれまで披露されてきた夏曲よりもとりわけ明るいこの曲をもって、3期生は彼女たちにしか出せない、新たな乃木坂46のオリジナリティを会得したといえる。

(取材・文=中村拓海/写真提供=(C)乃木坂46LLC)

■5月14日(日)夜公演セットリスト
1.三番目の風
2.ガールズルール
3.夏のFree&Easy
4.インフルエンサー
5.ここにいる理由
6.命は美しい
7.制服のマネキン
8.ダンケシェーン
9.他の星から
10.あらかじめ語られるロマンス
11.せっかちなかたつむり
12.偶然を言い訳にして
13.悲しみの忘れ方
14.何度目の青空か?
15.きっかけ
16.君の名は希望
17.ぐるぐるカーテン
18.裸足でSummer
19.ロマンスのスタート
20.おいでシャンプー
21.思い出ファースト
En1.シャキイズム
En2.ハウス!
En3.乃木坂の詩
WEn.三番目の風

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