渡辺志保の新譜キュレーション 第8回

USヒップホップ主要都市アトランタで今誰がアツい? 現地のヒットチューンを渡辺志保が解説

 突然ですが、私、5月の大型連休を利用してアメリカのジョージア州はアトランタまで弾丸旅行に行ってまいりました。実は昨年の同じ時期にもアトランタを訪れており、同市への訪問はこれで3回目。アトランタといえば、90年代初頭から常にヒップホップ(そして主にブラック・ミュージックをマーケットとした音楽産業)が非常に盛んで、訪れるたびにその街の熱気にヤラれてしまい、また行きたくなってしまうのです……というわけで、今回は私がリアルにアトランタで体感した最新ヒップホップ・ヒット・チューンを紹介させて頂きます!

SahBabii "Pull Up Wit Ah Stick" Feat. Loso Loaded (WSHH Exclusive)

 まず一発目は、サー・ベイビーのシングル「Pull Up Wit Ah Stick ft. Loso Loaded」。アトランタには幾つかヒップホップ専門ラジオ局が存在しますが、その中でもダントツの人気をほこるのは<HOT 107.9>でしょう。そして、ラジオにチューン・インするたびにこの曲がかかっていました。もともと、彼が2016年に発表したミックステープ『SANDAS』に収録されていた本曲ですが、ネット上の口コミとラジオをきっかけにじわじわとヒット。サー・ベイビーはシカゴの有名なギャング・メンバーだったという父親、そしてT3という名前で活動するラッパーである兄を持ち、13歳の頃にアトランタへ引っ越してきたそう。この「Pull Up Wit Ah Stick」も、ややドリーミーなシンセが効いたトラックにメロディアスなサー・ベイビーのフロウが乗っておりやもするとソフトな印象を受けますが、アトランタのフッド、そして大量の銃をフィーチャーしたMV(そもそも、stick=銃という意味ですが)はかなりハードコアなもの。しかし、サー・ベイビー自身はドラッグや酒はやらないそうで、往来のラップ・ソングとは違うものを作りたい、とインタビューで語っていました。プラス、彼は真面目に高校も卒業していて、きちんと教育を受けることの重要性も語っています。自分のスタイルを「メロディック・トラップ」と説明している彼ですが、すでにドレイクやヤング・サグらと交流を持ち、この「Pull Up Wit Ah Stick」はつい先日、あのウィズ・カリファもリミックスを作って発表したばかり。

 つい最近、メジャーのワーナー・ミュージックと契約を結んだこともあり、次のスターダムに乗っかるアトランタの新星としてダントツの注目を浴びている存在なので、是非ともチェックして頂きたいと思います。

 そして、二曲は私が去年から大注目しているYFN・ルッチの新曲を。昨年、ミックステープ『Wish Me Well vol.2』からのシングル「Key To The Streets」がスマッシュ・ヒットを記録した彼ですが、最近、最新EP『Long Live Nut』をリリース。そして、そのリード曲として発売された「Everyday We Lit」がめちゃくちゃキテます!

YFN Lucci - Everyday We Lit (Official Video) ft. PnB Rock

 ”昔は何もねえところからスタートして、すべて自分の力で成し遂げた。今やリッチになって、俺たちってば毎日イケてるんだ“と少しの哀愁バイブスも込めてラップするルッチ、そしてゲストのPnB・ロックからは、まさに最先端のアトランタ・バイブスを感じます。加えて、つい最近、リル・ヨッティとウィズ・カリファが参加したオフィシャル・リミックスも発表されたばかり。 こうして、たくさんのラッパーが参加したリミックスが作られるということは、それだけ多くの支持を集めているということ。最近は売れっ子になってあまりアトランタにはいないそうなのですが、間違いなく彼も次のヒットメイカー予備軍! ということで、引き続き注目したいと思っています。

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