『いつかのエキストラ、ライブオンステージ。』ツアーファイナルレポート

Creepy Nutsは、いつかのエキストラから最高のエンターテイナーへ 思い出の場所で見せた進化

 登場するのはメンバー2人だけ。照明もセットも至ってシンプル。けれども2人の想像力とユーモアにかかれば、すべての出来事が極上のエンターテインメントに変わるーー。そんなこのユニットの独自性が、全編を通して伝わってくるようなステージだった。『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)でもお馴染みの最強のフリースタイラー・R-指定と、『DMC JAPAN DJ CHAMPIONSHIPS 2016』のシングル部門で2位になった日本屈指のターンテーブリスト/トラックメイカー、DJ松永によるヒップホップ・ユニット、Creepy Nuts。この日は彼らが『助演男優賞』をリリースして全国を回ってきたツアー『いつかのエキストラ、ライブオンステージ。』のツアー・ファイナルだ。

 会場の恵比寿リキッドルームは、以前R-指定が『UMB2014』でDOTAMAとのMCバトル中に<ワンマンやったけど/お客さんガラガラ>とライブをディスられ、<いつかここをワンマンで満員にする(意訳)>と返した思い出の場所。今やR-指定とDOTAMAは『フリースタイルダンジョン』の朋友となり、Creepy Nutsも人気を拡大。この日は文字通り、満員の観客が詰めかけることとなった。ステージ上にCreepy Nutsの2人が登場すると、まずは熱量全開の「助演男優賞」でスタート。「たりないふたり」「爆ぜろ!!」を経て、R-指定が観客のお題でフリースタイルをする「聖徳太子スタイルフリースタイル」では、フロアから挙がった<メソポタミア文明><誕生日>、会場のリキッドルームに引っ掛けた<エビスビール>、<MOL53(=もえるごみ:ラッパー)><シスコ坂(=渋谷・宇田川町にあるヒップホップの聖地のひとつ)><たりないふたご><あっちのサイモンの方がかっこいいもん(=2013年の『戦極MCバトル』でチプルソが繰り出したディス)>をすべて回収して見事なフリースタイルを披露。続いてDJ松永が超絶技巧の指さばきを披露し、こちらも驚きに似た声が漏れる。日本屈指のラッパーとターンテーブリストならではの特徴を生かした立ち上がりだ。

 

 とはいえ、彼らの最大の魅力は、何と言っても全編に詰め込まれたユーモアだろう。序盤のMCではDJ松永の声が枯れたことをネタに「全国を回って、最後に(ラッパーではなく)DJの声が枯れた」と笑いを誘い、「どっち」に続いてSNSをテーマにした「教祖誕生」を披露する際には、R-指定が「私の体にネット評論家の守護霊を降ろしたいと思います」と時事ネタを絡めて会場がまた笑いに包まれる。以降も「みんなちがって、みんないい」のアウトロで鳴らしたレゲエホーンをネタに「スベッてもこれを鳴らせば盛り上がって便利」「新学期の自己紹介で面白いことを言おうとして変な空気になったら使ってほしい」「後でfirestorageにアップするからダウンロードして」とひたすら楽しそうで、どんな観客でもすぐさま自分たちの世界に引き込むライブ・アクトとしての圧倒的な華がある。これは彼らが普段からバンドやアイドルを筆頭にした様々なアーティストとの対バンを繰り返す中で積み上げてきたものなのだろう。セット中盤にはCreepy Nutsとして最初に作った曲「シラフで酔狂」でブチ上げ、アンセム「合法的トビ方ノススメ」でフロア後方まで一体となってジャンプ。観客を一瞬たりとも飽きさせずにステージが進んでいく。

 ここでふと、今回のセットは過去曲を間に挟みながら、『助演男優賞』の楽曲をトラックリスト順に披露していることに気づく。『助演男優賞』は、彼らが全編を通して「自分の人生の主役になる」過程を表現した作品でもある。その内容に呼応して、R-指定がイケてない青春時代を振り返り、2人がなぜヒップホップにハマったのかを説明。「世間に抱いている劣等感や負の感情を、アートでひっくり返して一泡吹かせてやろう。そういう精神性が、俺はヒップホップやと解釈したんです」と告げて観客から大きな拍手が起こると、「朝焼け」や「未来予想図」ではぐっとパーソナルな空間に観客を引き込み、本編最後はR-指定のソロ作『セカンドオピニオン』の「イマジン」へ。

 

 アンコールではトリビュート盤に提供したASIAN KUNG-FU GENERATIONの「リライト」を経て、DJ松永が「フィーリングで決めた」「人間的にビビッと来た」と童貞消失や結婚の報告を思わせる口ぶりからはじまったMCでCreepy Nutsのメジャーレーベルとの契約を報告。R-指定が「DJ松永は童貞のままです!!」とつけ加えたのを受けて笑いが起こったり、「ありがとう」と謎のレスポンスを返したりして俄然盛り上がるフロアに向けて、「俺らはたぶん、メジャーに行ってもこんな奴らです」と「使えない奴ら」を披露してステージを終えた。

関連記事