太田省一『ジャニーズとテレビ史』第三十一回:『24時間テレビ 愛は地球を救う』

嵐 櫻井&NEWS 小山&KAT-TUN 亀梨の『24時間テレビ』メインパーソナリティーが意味するもの

 もちろんこれは、ジャニーズがMCを務める番組の数の多さから考えれば不思議ではない。しかし、最近は特にグループの枠にとらわれないジャニーズならではの過去のエピソード、それにまつわる思いが語られるようになった印象がある。

 そうしたなかには、真剣な内容のものも目立つ。楽屋裏やプライベートでのエピソードなど笑えるネタ的なものも当然あるが、過去の仕事上の苦悩や互いのあいだのわだかまりのような重めの話題にもふれられるようになった。

 たとえば、櫻井翔と小山慶一郎がMCの番組にもそんな面がある。櫻井がMCの『櫻井・有吉THE夜会』(TBS系)では、滝沢秀明(タッキー&翼)や岡田准一(V6)が出演し、Jr.時代にあった相手への複雑な胸中や自分の取るべき道に悩んだことなどを櫻井と率直に語り合っていた。また小山がMCの『チカラウタ』(日本テレビ系)では、北山宏光(Kis-My-Ft2)がバラエティのMCを目指すことの大変さと覚悟を同じ道の先輩である中居正広から得た教えとともに語ったこともあった。

 奇しくも今年の『24時間テレビ』のメインテーマは「告白」。放送は8月なのでまだ具体的な内容は明らかではないが、さまざまな立場の人たちが秘められた思いを打ち明けることになるのだろう。そしてそれは、いま述べたような最近のジャニーズのテレビ出演時の変化ともオーバーラップするところがある。

 昨年2016年のメインパーソナリティーだったNEWSの手越祐也、増田貴久、加藤シゲアキは、本番を前にした昨年夏、ひとりずつ『チカラウタ』に出演した。NEWSは何度かのメンバー脱退を経て現在の4人体制になったが、その間グループとして苦境を迎えた時期もあった。そうしたことも踏まえつつ3人は、それぞれが個人で抱えていた悩みや挫折感、そのなかから見出した活路などを小山慶一郎の前で告白していた。

 KAT-TUNもまた、同じくこれまで順風満帆だったとは言い難いグループだ。やはりメンバーの脱退が重なり、3人になった。現在グループは2016年5月から「充電」期間に入っている。ただ亀梨和也をはじめ、上田竜也、中丸雄一のソロ活動はそれぞれ順調で、そろそろグループ活動再開の機も熟してきたように見える。そのなかでの今回の亀梨のメインパーソナリティーとしての出演が、なにか再始動のきっかけにもなるのではないかと期待は高まる。

 「告白」は勇気のいることだが、そうすることがひとつの大きな区切り、そして次へのステップにもなる。「もう一度、チャレンジ」から始まった『24時間テレビ』とジャニーズの歴史。今回はそんな再チャレンジ、再スタートを実感できるものにしたい、というのが番組、そしてメインパーソナリティー3人の願いであるのかもしれない。

■太田省一
1960年生まれ。社会学者。テレビとその周辺(アイドル、お笑いなど)に関することが現在の主な執筆テーマ。著書に『SMAPと平成ニッポン 不安の時代のエンターテインメント』(光文社新書)、『ジャニーズの正体 エンターテインメントの戦後史』(双葉社)、『中居正広という生き方』(青弓社)、『社会は笑う・増補版』(青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』『アイドル進化論』(以上、筑摩書房)。WEBRONZAにて「ネット動画の風景」を連載中。

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