乃木坂46、個人PV復活の意義とは? グループの躍進支える企画の重要性

 最新作である『インフルエンサー』の個人PVにも、注目すべき作品がいくつも存在すると香月氏は語る。

「まずは何といっても伊藤万理華さんです。福島真希氏と組んだ『まりっか’17』に続く新作『伊藤まりかっと。』は、個人PVにおけるオリジナルソングものの新たな傑作と言えるでしょう。また、ドラマ作品に定評のある湯浅弘章氏の手がけた秋元真夏さんの『水槽の中』は、公式YouTubeにアップされる予告をドラマの前編として使用し、DVDではその続きを収録するという、予告映像を効果的に活用した手法を用いています。山岸聖太氏の監督した井上小百合さんの『春の棒、暴れるきみは盆踊りの季節を待つ。』は、山岸さんが近年手がけている個人PVに共通する風景が登場することもあり、山岸氏が撮ってきた一連のドラマを、同じ敷地内で起きている群像劇のように解釈することもできます」

期間限定公開!伊藤万理華 17th個人PVフルバージョン『伊藤まりかっと。』

 続けて、今回初参加となる3期生の個人PVからも、オススメをピックアップしてもらった。

「3期生の中でも秀逸な作りだと思ったのは、山田篤宏氏が監督した山下美月さんの『山下美月の二重奏』ですね。こちらも公式YouTubeの予告を上手く駆使して、付属DVD収録の本編と重ねることでドラマの複数の層を楽しむことができます。また、個人PVがグループの特色として定着したからこその観点で作られているのが、頃安祐良氏による久保史織里さんの『個人PVについて私が知っている五、六の事柄』や、真壁幸紀氏と飯塚貴士氏が手がけた梅澤美波さんの『はじめての個人PVを見る日』です。個人PVをメタ的に捉えるような視点も入っていて、個人PVになじんだファンにとっては新たな刺激になるでしょう」

乃木坂46 山下美月 『山下美月の二重奏』

 最後に、この個人PVが乃木坂46にもたらすものについて、香月氏はこう語る。

「MVなどを含めて乃木坂46の映像作品に厚みがあるのは、このような積み重ねの成果でもあると思います。柳沢翔氏が監督を務めた16thシングル表題曲『サヨナラの意味』のMVは、スタッフィングも含めて、個人PVを含めたこれまでの映像コンテンツの集大成といえる作品でした。デビュー以来のこの蓄積があってこその細やかさや厚みは、一朝一夕に生み出すことのできないものです。今後の乃木坂46についても、このようにして作り上げた引き出しの豊富さがあれば、映像周りのクリエイションは揺るがないでしょう」

 アイドル界で揺るぎない立場を築き、そのうえでクリエイティブも充実期を迎えている乃木坂46。その裏側にはしっかりとした基盤が作られていたことを、この個人PVは証明している。

(文=中村拓海)

関連記事