最終回直前!『カルテット』劇伴に込められた“仕掛け”を現役作曲家が紐解く
ストーリーを彩るクラシック作品
音楽を担当したfox capture planは、ジャズのフィールドを中心に活動するアーティストということもあり、劇伴でもジャズのエッセンスが取り入れられた楽曲が見られたが、そういった中で数多く聴かれたクラシック作品との、ハイブリッドともいえるかのような音楽の使用も新鮮に聴こえた。そこで、前項に加え、本作で使用されたクラシック作品について少しだけ補足する。
【マスカーニ作曲「カヴァレリア・ルスティカーナ 間奏曲」】
先述のキスシーンは、巻幹生と早乙女真紀が初めて結ばれたシーンであるが、この際に使用されていたマスカーニ作曲「カヴァレリア・ルスティカーナ 間奏曲」は、巻幹生が妻を背に失踪してしまうシーンや、二人が離婚を決め指輪を外すシーンでも使用されているのだ。この2人が関わる大切なシーンでは必ずと言っていいほど使用され、その曲調もあり特に別れるシーンでは映像と劇伴との間に多少の距離が生まれることで映像がかえって印象的に映るといった効果も感じられた。ちなみに、この楽曲が使用される歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」は「恋愛のもつれ」や「生活が苦しい人々」も描かれているため、2人のストーリー上の設定と共通している部分もあった(第6、7話)。
【サティ作曲「ジュ・トゥ・ヴ」(クラシック作品に分類していない資料もある)】
世吹すずめが不動産屋でのアルバイトの面接で「大歓迎ですよ」と言われ採用が決まったシーンで、サティ作曲「ジュ・トゥ・ヴ」が劇伴として使用された。この楽曲は「あなたが欲しい」という日本語の副題も付いている本来はかなり強烈な歌詞の「恋の歌(シャンソン)」である。しかし、不動産屋の社長による「大歓迎ですよ」という言葉と「あなたが欲しい」をかけたようなコメディ要素を含んだドラマならではの音楽演出とも解釈できる(第8話)。
第1話で使用された、カルテット演奏による状況内音楽であるドラゴンクエストの「序曲」が最終回の予告編で再び顔を見せた。音楽と同じように、本編でも第1話の内容が最終回の紐解きに関連しているのか……。様々な角度から注目される最終回となりそうだ。
■タカノユウヤ
作曲家、編曲家。東京音楽大学卒業。
「映像音楽」「広告音楽」の作曲におけるプロフェッショナル。
これまでに様々な作品に携わるほか、各種メディアでも特集が組まれる。
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