『GLORY ROAD TO BUDOKAN COUNTDOWN LIVE』レポート(2)

THE COLLECTORSの存在感、the pillowsのロマンーー“先輩と後輩”による幸せな一夜について

 渋谷クラブクアトロで開催中の、日本武道館に向けたTHE COLLECTORS壮行会『GLORY ROAD TO BUDOKAN COUNTDOWN LIVE』。先週2月5日は盟友の怒髪天。2週目となる2月12日はthe pillowsが登場した。もともとコレクターズの大ファンとして知られ、怒髪天・増子直純が「山中(さわお・Vo.&Gt.)にモッズ教えたの、俺だからね!」との言葉を残していた、まさに後輩中の後輩バンドである。

 

 ただし、山中がMCでさりげなく言ったように、「31年目のザ・コレクターズ、28年目のザ・ピロウズ」である。阿吽の呼吸ですぐに会場の空気を作りあげるところはベテランの風格だし、サポートの有江嘉典(Ba.)もすっかりバンドに馴染んでいる。曲が終わったタイミングで場内が静まりかえると、山中が「俺、人気ねぇなぁ」といじけてみせるシーンも。笑ってしまう。この子供っぽさというか少年性こそが、ピロウズ最大の魅力であろう。

 山中さわおが書く曲は、“君に向けたラブソング”というよりも、“好きなものを好きと言い続ける僕のうた”に近いと思う。君が好き、と同じくらいロックンロールが好きで、このバンドが好きで、その想いをひたすら追いかける。世の中が変わり、周りがみんな聞き分けの良い大人になってしまっても、僕は変わらずここで夢を追う。青臭いくらいの少年性は、つまり褪せることのないロマンの塊だ。3拍子で進むミドルバラードの新曲「どこにもない世界」の美しさと、そこから続く「Fool on the planet」、〈全てが変わっても僕は変わらない〉という歌詞の強さに一番グッときた。

 

 2013年から活動を再開した今のピロウズは、一時期のオルタナ路線ではなく、ごくまっとうなギターロック/ロックンロールで勝負している。同じコード進行の曲を作り、似たようなメロディを当てるバンドは、そこらのライブハウスに星の数ほど転がっているかもしれない。ただ、自分が信じた夢の大きさひとつで固定ファンを獲得し、2009年には武道館公演も成功させたピロウズは、やはり他にはないワン&オンリーのバンドなのだ。最後はアッパーに締めくくり、ステージを去る4人。山中は「じゃ、武道館で会おうぜ」と、我が事のようなセリフを投げかけていた。

 

 そしてコレクターズだ。ラフなジーンズ姿で登場する古市コータロー(Gt.)の、さりげない手癖のようなストローク。その瞬間、音の太さにびっくりする。やみくもにボリュームがデカいわけではないのだが、一音ごとの安定感と安心感、存在感とでもいうべきものがケタ違い。それは加藤ひさし(Vo.)も然りで、大柄な体躯から出る声は低音域から高音域まで自由自在。キーの高いところは多少きつそうでもちゃんと出ているし、マイクを口からずいぶん遠ざけても音量が下がらないなど、声帯そのものが天才的に強いのだと思い知らされる。30年ずっと休むことなくアルバムを作りツアーを続けてきたことが大きいのだろう。加齢はあっても劣化はない。むしろ長年使い込んだギターがより丸みを帯びた音を出すように、体全体を使い込んだ楽器のごとく鳴らしているのが今の加藤だ。強いけれど、甘くて深い歌声。ピロウズがロマンの塊なら、コレクターズは存在感の塊である。

 中盤、ニューアルバムの一曲目「悪の天使と正義の悪魔」が終わった後に1993年発表の代表曲「世界を止めて」が続くのだが、24年というタイムラグがまったく感じられないのも考えてみれば驚きだ。広義でいえばロックンロールだが、R&Bやソウル・ミュージックに通じる気の利いた転調がたっぷり散りばめられ、古沢'cozi'岳之(Dr.)がぶっ叩くビートの激しさに対し、加藤は熱量で応じず、あくまでクールに、スウィートでジェントルなスタイルを乗せていく。つまるところはモッズの一言だが、コレクターズが30年ずっとやってきたのはモッズというカルチャーの翻訳なのだろう。

 

 だから彼らの曲は、いわゆる洋楽志向のバンドとも、この国だけで進化したJ-ROCKとも違う、不思議なオリジナルになっている。新曲も20年前の曲もまったく同じようにキラキラしていて、ロマンティックな日本語の歌詞も完全にオリジナルなのだけど、その向こうにThe WhoやSmall Facesにつながる扉がはっきり見えるのだ。タンバリンを叩く加藤の仕草ひとつを取ってもブリティッシュ・ロックの美学に貫かれているが、前述の「悪の天使と正義の悪魔」がアニメ『ドラゴンボール超』(フジテレビ系)のエンディング主題歌になったように、彼らの曲は紅茶も特に嗜まない日本のお茶の間に届く。売れる・売れないは別としても、こういうポジションで音楽を続けられるバンドというのは、あらゆるミュージシャンにとって理想のひとつではないかと思う。幸せだ。ライブの間ずっと浮かんでいたのは、そんな言葉だった。

 「今日バスターズ(=ピロウズのファン)がチケット買わなかったら……ピロウズとは縁を切る!」

「武道館がソールドしたら、俺とコータローくんでワルツ踊るから」

 相変わらずMCで笑いを誘いながら、新旧混ぜ合わせたベスト・オブ・コレクターズな10曲を披露した本編。そのあとのアンコールでは山中さわおが再びステージに呼び出される。ゲストというよりは呼び出し。「増子から聞いたけど、お前、俺たちのプロモーションそろそろ飽きてるんだって?」(加藤)「ちょっ……なんすかそれ!」(山中)などのやり取りは後輩をいびる悪い先輩の見本のようで、ついつい笑ってしまう。だが歌が始まればそこはプロの仕事だ。ピロウズがコレクターズのトリビュート盤でも演奏していた「1・2・3・4・5・6・7DAYS A WEEK」が始まり、山中と加藤が息を合わせながら交代でボーカルを取るスペシャル・セッションが始まっていく。前週は怒髪天全員がステージで共演したから、次週はフラワーカンバニーズと何かが起こるのだろう。そうやって共演者全員に背中を押され、コレクターズはいよいよ、3月1日の武道館に立つのだ。

(写真=柴田恵理)

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

■ライブ情報
『THE COLLECTORS “MARCH OF THE MODS” 30th Anniversary』
日程:2017年3月1日(水) 開場 17:30/開演 18:30
会場:日本武道館

THE COLLECTORSオフィシャルサイト

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