Suchmosはなぜ大ブレイクしたか? 『THE KIDS』の“今の時代らしさ”を読む

 それにしても、Suchmosの大ブレイクは正直なところとても驚いた。「ロックフェスを経由してブレイク」というここ数年における定番ルートではないし、彼らが当初属していた「シティ・ポップ」的なムーブメントからここまで大きくなったバンドはいまだ存在していない。前述のCMソングやSNSでの「もうgood night」大喜利など細かなネタはたくさんあったが、まさかマスレベルで「聴いているとかっこいいバンド」というポジションをあっという間にゲットしてしまうとは……楽曲が素晴らしいというのは大前提としたうえでキーワードを抽出してみると、「地に足の着いた自由」「品のいい不良感」といったところだろうか。ホームタウンを愛する土着性を持ちながら、それでいて(もしくはだからこそ)既成概念に縛られないような雰囲気を醸し出している。その自由さは今回のアルバムのバラエティ感にも反映されているが、そこでのトーン&マナーは「普通っぽい人たちがロックを鳴らす」というような類ではなく「ちょっと悪そうだけど色っぽい人たちがそのままかっこいい音楽をやってしまう」といった趣。でも、その「悪そう」も不法行為をするとかではもちろんなくて、話が通じそうな感じ。いつの時代も「不良/ヤンキー」的な要素は日本のエンタメ界におけるヒットの必要条件になっているが、そういった普遍的な価値を今の時代らしいソフトさ・洗練さで提供しているのがSuchmosなのではないかと思う。

 ところで、「地に足の着いた自由」「品のいい不良感」と書きながら思い出したのが、SMAPの存在である。「『SMAP×SMAP』にSuchmosが出てほしかった」という話はすでに各所でされているが、『THE KIDS』を聴くとこの2つのグループはほんとに相性が良かっただろうなと思う。2017年は(もしかしたらその先も)新たなスターが誕生するたびにSMAPの不在を実感してしまう1年となるのかもしれない。

■レジー
1981年生まれ。一般企業に勤める傍ら、2012年7月に音楽ブログ「レジーのブログ」を開設。アーティスト/作品単体の批評にとどまらない「日本におけるポップミュージックの受容構造」を俯瞰した考察が音楽ファンのみならず音楽ライター・ミュージシャンの間で話題に。2013年春にQUICK JAPANへパスピエ『フィーバー』のディスクレビューを寄稿、以降は外部媒体での発信も行っている。

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