“何も語らなかった”SMAPの願いーー『SMAP×SMAP』最終回に感じたこと

 12月26日、『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)のスペシャル番組が放送され、20年9カ月の歴史に幕を下ろした。内容は、約5時間にわたって過去に放送された映像を振り返ったもの。そして、事前収録された「世界に一つだけの花」のラストステージのみだった。この時間から何が生まれるのだろうか。タモリがゲスト出演して「乾杯したらもう仲良し」とメンバーがみんな笑顔で終わった先週のオンエアのほうが、最終回にふさわしかったのではないか、そんな気持ちを抱きながら番組を眺めていた。

 だが、過去の映像から見えたものもあった。SMAPを思うとき中居正広は、カメラの前でも顔をくしゃくしゃにして泣いていたこと。中居が涙で声をつまらせると木村拓哉は、すぐにトークを繋いでいたこと。中居の涙につられて草なぎ剛は、すぐにもらい泣きをしていたこと。草なぎが目を赤くすれば香取慎吾は、肩を抱いたり頭を叩いたりして茶化していたこと。そんなやり取りを目の当たりにしたとき稲垣吾郎は、愛しそうに微笑んでいたこと。かつてのメンバーである森且行が卒業したときも、稲垣や草なぎが不祥事を起こしたときも、どんなときもSMAPの5人は思いを自分の言葉で伝えてきたこと。そして今、彼らは何も語らないということ。

 ラストステージで、中居は手を掲げて指を折り“5”を強調してみせた。何度となくカメラの前でくしゃくしゃにして泣いてきた彼が、涙を見せないように背を向けていた。そして、ただだ深く深く頭を下げた5人。以前のように声を掛け合うことはなく、最後に木村が重い足取りでスタジオを去っていった……メンバーの気持ちも、番組が終了することへの思いも、グループが解散を決めた真相も、何も彼らの口からは語られない。これが事実だ。真実は、事実から推し量ることしかできない。

 どう解釈するかは、人それぞれ異なるだろう。なぜなら、その人の人生にSMAPの存在が、どれだけ深く浸透しているかによって読み取れるものが違ってくるはずだから。彼らが10代の頃から応援してきた人たちにとっては、息子たちのように感じていたかもしれない。ある人は、彼らを理想の恋人として、憧れのアニキたちとして、日々を過ごしてきただろう。震災で辛い思いをした人たちにとっては、復興への希望となっていたかもしれない。そんなふうに多くの人が、改めてSMAPと自分との関係性を考える一夜になったこと。それが、この最終回の持つ意味だったように思う。

 これまでも、数々のスーパースターや人気番組が誕生しては、別れがやってきた。その循環は、いつの時代にも行なわれてきたが、やはり20年以上続いた番組、そして約28年第一線で活躍してきたアイドルグループは、もはや文化のひとつ。当たり前のように私たちの日常に溶け込んでいた。ファンではなくとも、その存在を失う感覚は十分にある。

 「一つの時代が終わった」最終回を受けて、ネット上ではそんな感想が多くつぶやかれていた。たしかに、オンエア画面に何度となくテロップで表示された30%近い視聴率の数字は、最近ではなかなか目にすることがない。BGMで流れるSMAPの楽曲は、ミリオンセラーとなったものも少なくないが、そんなCDの売上枚数も近年ではなかなか見ない。みんなでひとつのものを愛でる時代から、個々で細分化された娯楽を楽しむ時代へ。この20年超の間に、テレビと視聴者の距離が変化してきたようだ。

 そんな個の意識が強い今の時代においても、大勢の視聴者が『SMAP×SMAP』の最終回という瞬間に関心を持ち、テレビ画面を見つめた。そして、グループの歩みを追体験した。SMAPは、これほど多くの人を引き寄せ、時間を共有し、思いを繋げることができる力を持っているのだ。そして最後の最後まで続けた、義援金の呼びかけ。これは番組が終わっても、SMAPが繋いだ復興支援の輪が途切れないでほしい、というメッセージに見えた。

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