ファン参加MVは新たな段階へ? ハジ→の“親子参加”型映像を検証する
今回の映像は、基本的には「アーティストが主役/参加者はエキストラ」といった雰囲気だった従来のファン参加型ミュージックビデオとも大きく異なり、主役が参加者/サポート者全員であるという意味でも新鮮だ。ハジ→が「おやじ。」という楽曲に込めた気持ちに、ファンの想いが加わり、様々な人々の「体験」として広がっていくプロジェクトの全体像は、フェスやライブといった昨今の「体験型コンテンツ」の盛り上がりを楽曲にも反映させる試みであると同時に、何より「おやじ。」という楽曲のテーマを大切に伝えようとする雰囲気に溢れている。いくら斬新な形を用意しても、伝えたいものがなければ人の心を動かすことは出来ないが、そうした意味でも今回のミュージックビデオ/動画企画は、アーティストが楽曲に込めた想いを最新のサービス/技術で表現した理想的な形のひとつと言えるのではないだろうか。
『WIZY』では8月の立ち上げ以降、ほかにもAIによる母親も安心して楽しめるライブ企画が行なわれ、現在もBluetoothスピーカーとして使用可能な「Amadana Music Radio」の制作プロジェクトや、amazarashiのミニアルバム『虚無病』に付属した書き下ろし小説のアナザーストーリーをピクチャーブックとして制作するプロジェクトが進行中だ。また、今後、同社が運営する『クラブレコチョク』メンバー(会員数約1000万人)にも、よりアーティストとの距離を縮められるような、新しい音楽体験を提案していく予定(参考:WIZYが打ち出す“共創型クラウドクリエイティング”とは? 新プラットフォームの責任者に訊く)。
エンターテインメントの世界を離れても、「ユーキャン新語・流行語大賞 2016」にノミネートされたAirbnbをはじめとする「民泊」や、Uberを筆頭にしたライドシェアサービスを筆頭に、「協働型サービス」は大きな注目を集めている。そうした時代における音楽の新しい在り方として、これらの形態はますます話題を呼びそうだ。
■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。