星野源はなぜ“踊る”のか? 逃げ恥「恋ダンス」で示した、新たなポップスター像
星野源が踊るときの基本スタイルは、セットアップのスーツだ。それは、彼がかねてから好きだったというクレイジーキャッツへの敬意も込めてのことだろう。クレイジーキャッツが1950~60年代にかけて音楽と演芸を同時に極めていたように、2016年の今、星野源はエンターテインメントの全方位において、その才能を発揮する存在となった。曲を作って、歌って、踊る。演じる。本を書く。バラエティ番組でトークをする。笑いをとる。こんなにもオールマイティにすべてをこなすアーティストは、これまでなかなかいなかった。
昨年12月にリリースした『YELLOW DANCER』は、オリコンの週間アルバムランキングで1位をとり、売り上げは35万枚を超える大ヒットとなった。そしてその約1年後の今、「恋ダンス」の一大ブームが沸き起こっている。インタビューの中で、星野源は『YELLOW DANCER』の反響を受け、「自分の音楽趣味や自分が追求していたことを、ようやく受け入れてもらえたような感覚がある」と語っている(参考:星野源が語る“イエローミュージック”の新展開「自分が突き動かされる曲をつくりたい」)。自らが目指す理想像と、大衆が求める理想像が限りなく一致するという、とても健全な環境に身を置きながら、星野源は、2016年の終わりに新たなポップスター像を見せてくれた。
(文=若田悠希)