クラムボン・ミトの『アジテーター・トークス』Vol.3 大沢事務所・松岡超

花澤香菜は声優&アーティストとしてどう成長してきた? クラムボン・ミト×花澤マネージャーが語り合う

 

「新たな音楽の扉を開いたのかもしれない(笑)」(ミト)

――いままでの経験が活かされてきている状況で、彼女の楽曲を再解釈する『KANAight~花澤香菜キャラソンハイパークロニクルミックス~』が出るのも面白いですね。DISC1の選曲はどのような基準で決めていったのでしょうか。

ミト:基本的にはアニプレックスさんからリリースのあった音源がベースにしつつ、千石撫子(『物語』シリーズ)に関しては「恋愛サーキュレーション -Yunomi “Kawaii EDM” Remix-」と「もうそう▽えくすぷれす -folclore Remix-」の2曲があるのでどちらかを外そうかと思ったのですが、やっぱり神前暁ワークスは外せないよねと。※(「▽」は白抜きのハート)

松岡:特に「恋愛サーキュレーション」はどこへ行っても「この曲が好きです!」と言ってもらえる代表曲のようなものですからね。

――リミキサーもYunomiさん、LLLLさん、NorさんとSound Cloudなどで人気の高い若手陣がいるかと思えば、MONACAの石濱翔さんやyamazoさんなど、アニメ界隈の手練も名を連ねていますよね。この選定もミトさんが?

ミト:かなり入り乱れているように思えるかもしれませんが、この作品を手に取ってくれるのって、8割はアニメファンか花澤さんの活動を応援している方だと思うので、そこから極端にずれてオーバーグラウンドしてしまうような作家さんは避けました。あと、今回のリミックスにはリミキサーの理解力が極端に求められるものだと感じていたので、そこは意識しましたね。例えばYunomiさん。会ったことはないけど、kz(livetune)君から「彼、普通にオフィシャル外で4回ぐらいリミックスやってますよ」って紹介を受けたんですよ(笑)。で、実際にお願いしたら紛れもなく良いものが出来ていて。

松岡:原曲のハードルが高いから心配したけど、杞憂に終わりましたね。個人的には「Delicateにラブ・ミー・プリーズ -More Delicate Remix-」と「sweets parade -lyrical Remix-」も好きです。

――石濱さん(「Delicateに~」)とKei Satoさん(「sweets~」)ですね。

ミト:Kei Satoさんの曲は、他の人に比べて想像の幅がすごく広いリミックスなので、最後に置きました。彼は歌の読解力がすごくある人で、この曲をチョップしたらどうなるんだろうと思っていたので、そのあたりも理解してくれてよかったなと思います。で、石濱君はMONACAということもあって、やっぱり神前暁のDNAですよ。彼は今期の『アイカツ!』でもフューチャーベースを取り入れながらMONACAイズムに落としこむような楽曲を出していたり(「episode solo」)して、いまオーバーグラウンドすべき存在だと思ったので、曲書きではなくいちアーティスト・リミキサーとしてお願いしました。

松岡:ほんとミトさんのまとめ方は流石だなと思いますね。造詣がないとできない。

ミト:造詣というか愛情と言う名の思い込みですよ。DISC2のキャラソンリミックスが特にそうで、キャラソンって、それぞれに思い入れがあるから、僕らは丁寧にその曲をしかるべきタイミングで流してあげなきゃいけない。でもそれって極論を言ってしまうと、普段僕がリスペクトしているテクノ・ヒップホップのDJたちが発言していることと変わらないし、結局は聴きたいと思ったその場所にちゃんと置いてあげることができるかなんだと思います。

松岡:花澤は「ヘンな神様」と「Qunka!」の繋げ方に驚いてましたよ。「ミトさん流石だ!」って。制作チームも実は同じところに興奮したんですけど(笑)。

ミト:僕もこれが繋がった瞬間は「マジか!」って机から立ち上がりました。全体的にはBPMをある程度一定にして、MIX CDとして踊れるものにしなきゃいけないのですが、声優好きとしてピッチやスピードを変えたりするのは自分のなかで許せなくて。BPMと歌っている人間が同じというだけで、ここまで場面がひっくり返ってもいいものなのかと思ったのですが、ぶっちゃけた話、花澤香菜というファクターが中心にあるから、声の魅力で全部引っ張られちゃって、音楽が後ろについて回ってきている感じに聴こえるんですよ。それはMIX CDとしてどうなんだという部分もあるのですが(笑)。キャラソンオンリーのMIX CDだからこそ出来る新しいことかなと。

――ひとりの声優さんが歌っているキャラソンだけを集めてMIX CDを作るという行為自体が元々無いわけなので、新しい価値観が生まれるのも必然のような気がします。

ミト:メジャーという中では、新たな音楽の扉を開いたのかもしれませんね(笑)。やってみた感想としては、極論かもしれないですが、「自分はこういう歌しか歌わない」というその他大勢のアーティストたちには、ぜひ前提を全部ひっくり返して違うジャンルで歌うことに挑戦してみてほしいと思いました。すごい純度の高いものを出すことに集中しすぎて、自分のスタイルだったりキャラクターがどんどん小さくまとまってしまっている人とかも、わからないうちにいるので。

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