洋楽、邦楽、タイポップスも? ハロプロによるカバー楽曲を振り返る

 カントリー・ガールズの4枚目となる両A面ニューシングル『どーだっていいの/涙のリクエスト』がリリースされた。「どーだっていいの」は中島卓偉の作詞作曲によるオリジナルナンバーだが、「涙のリクエスト」は男性7人組グループ、チェッカーズが1984年に2ndシングルとしてリリースしたヒット曲のカバーだ。

カントリー・ガールズ「涙のリクエスト」

 過去の名曲カバーはポップス界における一手段だが、ハロプロにおいてもカバー楽曲はこれまでいくつも発表されてきた。今回、カンガルのカバーが出たこのタイミングで、過去のハロプロ楽曲におけるカバー曲を振り返って、その傾向を考察してみたい。

 シングルのほかにアルバムでもカバー曲はいくつかあるが、今回はシングルのみに的を絞って考えていく。また、同じハロプログループからのカバー、つまりハロプロオリジナル楽曲の共有カバーは除外して考える。ハロプロのシングルにおいてカバー曲は、これまで43曲あった(2016年9月末時点)。それらは傾向別に8個のカテゴリに分けることができる。

<01.洋楽>

・卒業 ~TOP OF THE WORLD~/平家みちよ(1998)
・サン・トワ・マミー/後藤真希(2002)
・サン・トワ・マミー (Musical Version)/後藤真希(2002|c/w曲)
・月影のナポリ (Tintarella Di Luna)/W(2004|c/w曲)
・悲しき16才 (Heartaches At Sweet Sixteen)/W(2004|c/w曲)
・ジンギスカン/Berryz工房(2008)
・ジンギスカン タルタルミックス/ジンギスカン×Berryz工房(2008)
・ランラルン ~あなたに夢中~/カントリー・ガールズ(2016)

 ハロプロの歴史上、一番最初のカバー曲は平家みちよの2ndシングルだった。アメリカの兄妹デュオ、カーペンターズの代表曲のひとつ「Top of the World」をシャ乱Qまことの訳詞でカバー。

 「サン・トワ・マミー」の原曲はベルギーの歌手サルヴァトール・アダモが歌ったシャンソンだが、日本では岩谷時子の訳詞により越路吹雪が歌ったバージョンが有名で、後藤真希のカバーもこの訳詞で歌唱している。

 「月影のナポリ」「悲しき16才」もそれぞれ原曲はミーナ・マッツィーニ、ケーシー・リンデンだが、森山加代子、ザ・ピーナッツが歌ったバージョンの方が有名だろう。戦後の邦楽シーンでは外国曲をカバーしてレコード発売するのが主流だった時期があり、これらの楽曲はその流れの中に位置付けられる。

 「ジンギスカン」はドイツの同名グループが70年代末に放ったディスコヒット曲。「ランラルン ~あなたに夢中~」は文脈が少々入り組んでいて、大元はアメリカの作曲家ジェローム・カーンが1930年代に作曲したミュージカル用楽曲「I've Told Every Little Star」が原曲。これを女性歌手リンダ・スコットが60年代に歌ってリバイバルヒット(邦題:星に語れば)。同バージョンはデヴィッド・リンチ監督による2001年公開の映画『マルホランド・ドライブ』の劇中や、現在も放送中のバラエティ番組『マツコの知らない世界』のオープニングで使用されており、そちらで耳なじみのある人も多いはず。このリンダ・スコット版をベースに、三浦徳子が新たに作詞した歌詞で歌われているのが「ランラルン ~あなたに夢中~」である。

カントリー・ガールズ「ランラルン ~あなたに夢中~」

<02.タイポップス>

・cha cha SING/Berryz工房(2012)
・Loving you Too much/Berryz工房(2012|c/w曲)
・I like a picnic/Berryz工房(2013|c/w曲)

 この3曲も洋楽ではあるが、別カテゴリとした。3曲とも原曲はタイの歌手トンチャイ・メーキンタイのレパートリー。特に「Loving you Too much」はカバーにもかかわらずBerryz工房ファンに人気のある一曲で、今年2016年にはやはりタイ人歌手のジェームス・ジラユもカバー。つんく♂がBerryz工房版から男性目線の歌詞にアレンジし直した訳詞を提供したのがニュースとなった。

ジェームス・ジラユ「Loving you Too much」

<03.60年代ポップス>

・君といつまでも/後藤真希(2002)
・涙の太陽/メロン記念日(2004)
・恋のバカンス/W(2004)
・恋のフーガ/W(2005)
・ふりむかないで/W(2005|c/w曲)

 60年代にリリースされた邦楽曲のカバーは5つ。「君といつまでも」は加山雄三の代表曲で、前述の後藤真希「サン・トワ・マミー」との両A面カバーシングルとしてリリースされた。「涙の太陽」はエミー・ジャクソンをはじめ安西マリア、田中美奈子らのバージョンも有名。「恋のバカンス」「恋のフーガ」「ふりむかないで」の3曲ともオリジナルは女性デュオ歌手のザ・ピーナッツで、それを辻希美&加護亜依のWがカバー。Wはこの他にもカバー曲を歌う機会が多く、1stアルバム『デュオU&U』は女性デュオ歌手のカバー15曲で構成されていた。

 なお、60年代にはGS(グループ・サウンズ)のブームもあったが、アップフロント提供により1999~2000年に放送されていたテレビ番組『ガレージ』(テレビ東京系)からはシングル「ガレージ・オープニングソング集」が4作リリース。モーニング娘。、太陽とシスコムーンなどのハロプロメンバーがコーラスやメインボーカルを担当して「亜麻色の髪の乙女」「ブルー・シャトウ」といったGSソングをカバーしているので、これらもハロプロ楽曲と考えることができる(今回のリストには含めなかったが)。

<04.70年代アイドル>

・ペッパー警部/モーニング娘。(2008)
・ロマンス/モーニング娘。(2008|c/w曲)
・暑中お見舞い申し上げます/℃-ute(2009)

 「ペッパー警部」はピンク・レディー、「ロマンス」は岩崎宏美、「暑中お見舞い申し上げます」はキャンディーズと、いずれも70年代に活躍した女性アイドル歌手のカバー。娘。の「ペッパー警部」カバーは、阿久悠作詞曲のカバーで全編構成された企画アルバム『COVER YOU』からの先行シングルだった。

 また、ハロプロでは2001~04年にかけて、60・70年代の邦フォーク/ニューミュージック曲をカバーする『FOLK SONGS』というアルバムシリーズが5作までリリースされていた(2009年リリースの同傾向のアルバム『チャンプル① ~ハッピーマリッジソングカバー集~』も含めると6作)。

モーニング娘。「ペッパー警部」

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる