新SG『LOSER/ナンバーナイン』インタビュー
米津玄師が考える、音楽表現の過去・現在・未来「自分はスクラップの寄せ集めみたいなもの」
「“もうお前は変わらなきゃいけないんだよ”と誰かに言われているような気がして」
――カップリングの「amen」は素晴らしい曲ですね。打ち込みによるコラージュ的な音作りは、歌詞の世界とも相まって、米津さん自身の心象風景がダイレクトに変換されているような印象を受けました。この曲はどのタイミングで作ったんですか。
米津:両A面で行こうと決まった後、最後に作った曲ですね。日常的に、YouTubeとかで他の人が作った曲を聴いて、“自分ならどんなメロディと言葉を乗せるかな”と考える遊びのようなものをよくするんですけど、その最中に、<お願い パパ ママ この世に生まれたその意味を>というメロディと言葉がいっぺんに出てきて。ここまで長いセンテンスが出て来る経験はこれまでなかったので、拡大させてみようと思ってできた曲です。もう、何も考えずに作ったからこうなった、という感じがしますね。
自分が作った曲のなかで一番暗い曲になったと思うんですけど、要は“祈りって、いったい何なんだろう”というのを考えたときに、問題への対処法としていろんな選択肢をつぶしていった結果、最後に残るものだと思うんですよね。その“どうしようもないもの”がけっこう普遍的なもので、みんな持っているじゃないですか。生まれ育った環境なんてどうしようもないし、そこで人格が形成されている部分も多分にある。そういうものは今さら悔いたところで仕方がなくて、それを踏まえた上で前向きに生きていかざるを得ない。音楽を作る上で、そういう部分を見つめていく機会が多いからこそ、たまに吹き出物みたいな感じで、こういう曲が出てくるのかなと。
――“祈り”がテーマになっているからか、とてもホーリーな空気があって、最終的には暗い方向には落ちていない。
米津:そうですね。そういうつもりで作ったわけじゃないんですけど、“聴いていて救われる”という人がけっこういて、共感してくれる人がいてよかったと思います。
――3曲通じて、米津さんの創作意欲が高まっていると感じます。実際にはどうですか?
米津:今は「かいじゅうずかん」という、架空の怪獣を描いてその生態を解説する、みたいな音楽雑誌にあるまじき連載を書籍用にまとめていて(編注:「かいじゅうずかん」はロッキング・オン・JAPANでの連載企画)、そのテーマソングみたいなものを作っているんですけど、それがすごい楽しくて。なので、今は創作と言っても、作曲モードというより絵のモードですね。
「かいじゅうずかん」は自分のパーソナルなものだったし、『Bremen』を作り終わって“そういう段階じゃなくなったんだな”と思ってやめたんですよ。でも、最近また楽しくなってきて。心境の変化もあったのかもしれません。
――普遍的なものを志向しながらも、かつて好きだったものに思いを寄せたり、思わずできた曲があったりして、最新の作品には米津さんの原点も出ているかもしれないですね。一方で、米津さん自身がダンスを披露する「LOSER」のMVは非常にインパクトある、新しい内容です。
米津:あれは地獄の日々でした(笑)。ダンスを一カ月ぐらいずっと練習したんですけど、中学時代のテニス部を最後に、全然運動をしてこなかった人間が、今になってダンスなんて踊れるわけない……それはもう大変でした。日本人として初めてシルク・ドゥ・ソレイユのダンサーになった辻本知彦シーア「Alive」の日本版MVで土屋太鳳さんに振り付けをした、辻本知彦さんという先生にいろいろ教えてもらいました。
――米津さんのスラッとした手足の動きがキレイで、カッコいいと思いましたよ。
米津:いろいろ考えたんですけど、監督との話し合いの結果、「お前はアーティストなんだから、お前が踊りたいように踊ればいいんだよ」という感じになって、最終的にはなんとなく動きたいように動いたんですよね。
――曲のぶっ飛んだイメージと、ダンスが合っています。このMVも含めて、新たな部分がドンドン出ていますね。今年は夏フェスの出演も多かったですが、振り返ってどうですか。
米津:今年はコラボも多かったし、充実した年になっている気がします。ただ、夏フェスで大事故があって、最後の「Sweet Love Shower」で、まったく声がでなくなってしまったんです。昔からライブが苦手で、“こうしたいのにできない”というフラストレーションが溜まっていたなかで、最後にこういうことがあるのは、“もうお前は変わらなきゃいけないんだよ”と誰かに言われているような気がして。自分の肉体だとか、モードだとか、ちゃんと見直した上で音楽を作っていくのが、今年後半の課題ですね。
――そんななかで、今後リスナーに向けてどんな音楽を届けていきたいですか。
米津:一貫して“遠くに行きたい”というのを基本理念にしているので、僕の音楽を好きでいてくれる人は、たぶん振り回されていると思うんです。そこはもう、ついてきてください、と言うしかなくて。みんなから好かれるためにはどうしたらいいか、ということはすごく考えているけれど、音楽を作っている者として、そればかりではしょうがない。まずは自分が好きなものを作りたいし、その時々によるとは思いますけど、それが聴いてくれる人のためにもなるんじゃないかって。
(取材=神谷弘一/構成=橋川良寛)
■リリース情報
米津玄師 ニューシングル『LOSER/ナンバーナイン』
発売:9月28日(水)
LOSER盤(初回限定)
【CD+ドッグタグ+ルーズパッケージ】
¥1,950(+tax)
ナンバーナイン盤(初回限定)
【CD+DVD+7inchサイズ ギャラリーパッケージ】
¥1,800(+tax)
通常盤
【CD】
¥1,200(+tax)
<収録曲>
1.LOSER
2.ナンバーナイン
3.amen
※初回特典(全形態共通)
「米津玄師 2016 TOUR / はうる」チケット最速先行応募券封入
応募期間:9月27日(火)12:00~10月2日(日)23:59
応募制限:1公演につき2枚まで
<特典概要>
TSUTAYA Records全店(一部店舗除く):LOSERクリアロゴステッカー(TSUTAYA ver.“YELLOW”)
HMV全店(一部店舗除く):LOSERクリアロゴステッカー(HMV ver.“PINK”)
アニメイト全店(一部店舗除く):LOSERクリアロゴステッカー(アニメイト ver.“BLUE”)
『LOSER/ナンバーナイン』応援店舗(店舗詳細は公式HPでご確認ください):オリジナルLOSERステッカー
※特典は「先着」となり、数に限りがあります。一部の店舗/ECサイトでは特典が付かない場合がございます。
ご予約ご購入の際は、特典の有無を必ず店頭/ECサイトでご確認下さい。
■Sony Music Shop
・LOSER盤 初回限定(CD+ドッグタグ+ルーズパッケージ)
・ナンバーナイン盤 初回限定 (CD+DVD+7inchサイズギャラリーパッケージ)
・通常盤
■amazon
・LOSER盤 初回限定(CD+ドッグタグ+ルーズパッケージ)
・ナンバーナイン盤 初回限定 (CD+DVD+7inchサイズギャラリーパッケージ)
・通常盤
■TOWER RECORDS ONLINE
・LOSER盤 初回限定(CD+ドッグタグ+ルーズパッケージ)
・ナンバーナイン盤 初回限定 (CD+DVD+7inchサイズギャラリーパッケージ)
・通常盤
■HMV ONLINE
・LOSER盤 初回限定(CD+ドッグタグ+ルーズパッケージ)
・ナンバーナイン盤 初回限定 (CD+DVD+7inchサイズギャラリーパッケージ)
・通常盤
■楽天ブックス
・LOSER盤 初回限定(CD+ドッグタグ+ルーズパッケージ)
・ナンバーナイン盤 初回限定 (CD+DVD+7inchサイズギャラリーパッケージ)
・通常盤
■ツアー情報
『米津玄師 2016 TOUR/はうる』
11月23日(水・祝)豊洲PIT
11月28日(月)Zepp Nagoya
11月29日(火)Zepp Namba
12月2日(金)仙台PIT
12月8日(木)Zepp Tokyo
※全会場 OPEN:18:00/START:19:00