ハロプロの真髄は“ハロプロ研修生”にあり? 彼女たちのオリジナルアルバムから考える

 さらに、曲中の歌声からも各メンバーのたどってきた“歩み“を感じ取れるが、本稿ではとくに秀逸だった5曲から、彼女たちについて改めて考えてみたい。

1トラック目「Say! Hello!」

 いわば“出囃子”的な曲である。ここ最近の公演では「Hello!まっさらの自分」という曲に置き換わりつつある印象もあるが、アルバムの1トラック目としても、公演の1曲目としても幕開けにふさわしい。メンバー全員によるユニゾンが目立つ曲で、アイドルとしても人としても、未来に向け成長途中のハロプロ研修生たちが“人生”を軽快に語るという壮大なテーマには圧巻。曲中のフレーズにもあるが、地球に思いを馳せるというのも他のハロプロ楽曲でも時折みられる“つんく♂節”を彷彿とさせる。

3トラック目「Crying」

 なぜか泣ける。タイトルに込められた通りの思惑にがっつりハマっている感じだが、思春期の淡い思い出をとにかくふんだんに盛り込んだ曲である。曲中のフレーズ「実力テスト」は、研修生が日頃の活動の集大成として年に1度、歌やダンス、衣装までも個人でプロデュースして挑む『春の実力診断テスト』を思わせることからニヤッとしてしまう。

6トラック目「恋したい新党」

 現場では、千手観音を模した振り付けがいやがおうにも記憶に焼き付く。知人の女性ファンによれば「どうしてつんく♂さんは女の気持ちがこうも分かるんだろう」と、知らしめてくれる曲だという。少女というよりは現実の恋に悩む女性が主人公であるような曲だが、研修生の歌声を聴くと、色恋にわき目もふらず、アイドルに青春をかける彼女たちの努力と決意がにじみ出てくる。

8トラック目「おへその国からこんにちは」

 のっけから「何じゃこりゃ!?」と目を引くタイトルは、もはや“つんく♂イズム”というほかない。音源やMVではこぶしファクトリーの浜浦彩乃が放つ第一声の“どなり”、「なあ、みんなへそんとこよろしく!」が忘れられなくなる。日頃から抱えるストレスや今日あった嫌なコトなどすべて吹き飛ばしてくれる曲だが、おへその国がどこにあるかは、推して知るべし。考えるのではなく、感じる以外にない。

9トラック目「彼女になりたいっ!!!」

 ジャケットには映っていないものの、今年9月11日にメジャーデビューから3周年を迎えたJuice=Juiceの宮本佳林の歌声が目立つ。曲中で<東京はカワイ子 いっぱいですが>とあるが、モーニング娘。'16の「Tokyoという片隅」もしかりで、つんく♂はなぜ、時折“東京”へのジェラシーがにじみ出るのだろうという疑問もひしひしとわいてくる。なお、曲自体の歴史が最も古く、ハロプロ研修生初のオリジナル曲として2012年9月23日の『スマイレージ ライブツアー 2012秋 〜ちょいカワ番長〜』の初日に初披露された。いわばハロプロ研修生の“真の”ルーツとなる1曲である。
 
 さて、かいつまんだ形とはなったが一部の楽曲を紹介してきた。音源はもちろん、何よりも実際の公演を通して、彼女たちの成長を追えるというのはハロプロ研修生ならではの魅力。加えて特筆すべきなのは、歌やダンス、MCといったパフォーマンスの向上のみならず、グループへの加入や昇格もあいまって、ファンもメンバー間にみられるある種の競争によりいっそう熱くなれるという部分である。

 ハロプロ各グループの合同コンサートである通称・ハロコンや先輩たちへの帯同、そして、目玉となる年に1度の『春の実力診断テスト』や定期公演など、その活躍にふれられる機会も比較的多い。ハロプロとは何か、ハロプロ研修生の公演はその真髄を感じさせてくれる。

■カネコシュウヘイ
編集者/ライター/デザイナー。アイドルをはじめ、エンタメ分野での取材や原稿執筆を中心に活動。ライブなどの現場が好きで、月に約数万円はアイドルへ主に費やしている。単著に『BABYMETAL 追っかけ日記』。執筆媒体はWeb『ダ・ヴィンチニュース』『クランクイン!』『ウレぴあ総研』、雑誌『日経エンタテインメント!』など。

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