石井恵梨子のチャート一刀両断!

RADWIMPS『君の名は。』が2週連続首位 国民的バンドの風格手にした転機の作品に?

 最後に、本当の話題作。チャート1位はRADWIMPS『君の名は。』。先週と今週で累計9.7万枚の売り上げで、初の1位獲得も、それが2週連続となることも、実はバンドにとっては初の記録です。前作の場合は1位に少女時代が、前々作の時は1位にEXILEがいて、彼らはずっと2位に甘んじていたわけですね。初の首位。2週連続。これを彼らは名誉と受け取るのか、それともチャートなどどうでもいいと思っているのか。ちょっと気になります。

 また、そういう本人の認識とは別に、客観的に見て重要なのは、『君の名は。』に収録された楽曲が、オリコンのトップに君臨する国民的人気バンドに相応しいスケールを持っている、ということ。たとえば収録曲のひとつ「前前前世」は、トリッキーなアレンジを極力排したストレートなギターロックで、後半、いよいよサビが再び登場というタイミングの前に、〈Oh〜Oh〜Oh〜〉というコーラスパートがわりと長く用意されています。サッカーのスタジアムに響き渡るような大合唱。これをRADWIMPSがやるのが興味深い。数年前なら野田洋次郎は誰にも追いつけない速度でラップをしていたかもしれないし、急にアレンジが切り替わり複雑なセッションが展開されたかもしれない。でも今は「みんなで唄えるコーラス」なのです。『君の名は。』は映画の脚本ありきで作られたサントラだから、100%今の彼らが反映されているとは言えないものの、長い目で考えれば、RADWIMPSがチャート1位に相応しい風格を手にした転機の作品、と言えるのかもしれません。

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

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