渋谷からPARCOが消えた日ーースカパラと欅坂46が表現した「共通の感覚」とは

渋谷からPARCOが消えた日に寄せて

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『SHIBUYA Last Dance_』
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東京スカパラダイスオーケストラ展示スペース

 ちなみにこのストリートライブが実現したのは、パルコミュージアム(渋谷パルコ PART1・3F)で行われた最後の展覧会『SHIBUYA Last Dance_』で招待アーティストとして展示に参加したという背景があったからだ。以下は、『SHIBUYA Last Dance_』に寄せて書き下ろされた谷中敦の詩の一部抜粋だ。

  もどかしいけど気楽な毎日
  自信も不安もふんだんにそこにあった
  映画館も洒落た服も舶来の音楽も
  手には入らないけど
  手に触れるように感じた

  その頃から何も変わってない
  いまは最も東京特有の感覚
  様子を窺ってる、そして
  新しくなろうとしてる
  (『ラスト・ダンス』谷中敦)

 そして谷中の綴る気分は、世代が二回り以上も違うアイドルの楽曲からも感じられる。

 『渋谷からPARCOが消えた日』。これは、8月10日に発売された欅坂46の2ndシングル『世界には愛しかない』に収録されている曲のタイトルで、センターの平手友梨奈のソロ曲だ。注目したいのは、その歌詞の内容だ。〈PARCO PARCO PARCO……〉のリフレインも印象的な同曲に込められているのは、成長や変化を受け入れる葛藤と覚悟だ。セーラー服姿と大人っぽい衣装の2ポーズに身を包んだ平手と夜の渋谷に煌めくPARCOのサインが交差するMVを見ていると、一人の少女の物語を街全体が包み込む息遣いが聞こえるようだ。

「様子を窺ってる」と表現する谷中と、「まだまだ人混みの中にいたい」と歌う平手の感覚は、街=渋谷を媒介とすると驚くほど近しい。そして両者の視線は、確実に訪れる変化へと向けられる。

  聴いている間には分からなかったことが
  踊り出すと見えてくるのに
  (『ラスト・ダンス』谷中敦)

  2019その頃私は大人
  (『渋谷からPARCOが消えた日』)

 パルコが渋谷にできる以前、公園通りはまだ公園通りでもなく、区役所に通じる寂しい通りだった。パルコができ、通りに名前がつき、そして人が集まるようになって街が変わっていった。

 2019年、新しくなったパルコができる。少女が大人になるように、地続きに、ボーダレスに。

  さよならじゃない
  渋谷PARCO
  (『渋谷からPARCOが消えた日』)

(文=谷岡正浩)

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