『TOKYO IDOL FESTIVAL』インタビュー
『TIF』総合P 濵田俊也氏に訊く、マスメディアがアイドルフェスを手がける理由
「『TIF』はどんどん大きくなる」
——今年の新しいトピックとして、昨年までお台場夢大陸内にあったステージがなくなり、船の科学館に隣接する場所にSHIP STAGEが新設されます。
濵田:『TIF』は長く続けなければならないフェスだと考えています。長く続けるには、どれだけ続けられる要因を増やすか、逆に続けられなくなる要因をどれだけ減らすかということが大きいと思っています。その中で、船の科学館にステージを新設したのは、僕らだけの力で用意できるステージだったからです。例えば、フジテレビのスタジオを使う場合、元々放送業なので番組制作をしなければならず会社にとっても負担がかかる。夢大陸の会場も同じくそうです。そうなってくるとできるだけ自分たちで準備ができ、ほかにどれだけ迷惑をかけないかがものすごく大きいことだと思ったんです。3日間開催にするとき、まず念頭にあったのが新ステージを作るということでした。SHIP STAGEは、お客さんが船を背にして森と海の方角にステージを設営します。少し遠いですが、観にいって頂けるだけで価値のあるステージがご用意できていると思っています。
——SHIP STAGEをはじめ、HOT STAGE、SMILE GARDENでは、欅坂やチーム8などかなりの動員が見込まれるアイドルに対して整理券が配布されます。これはメジャー級のアイドルが多く参加しているということを物語っています。
濵田:整理券制については昨年、SKE48が出演したトークステージで実施していたのですが、ここまで広く大きくやったことはないです。今年導入することにしたのは、安全面の確保が理由です。残念ですが、安全な入退場を意識して運営せざるを得ない理由となったトラブルが、昨今何件か様々なフェスで起きていますので、やむを得ずそう判断したというのがあります。
——SMILE GARDENは無料エリアですが、配布する2000人より多くの方が観に来られる気がします。
濵田:SMILE GARDENの前方エリアは有料のお客さんのゾーンなんですね。今回その2000人というのは有料ゾーンだけを示しています。その後ろに数千人無料の方が入るので、多くの方が楽しめると思います。……無料でも楽しめちゃうんですよ、このフェス(笑)。
——そうですね(笑)。多数の無料ステージがあるのも狙いなのでしょうか。
濵田:僕らのフェスは絶対、無料エリアはなくさないんですよ。社是みたいなものです。「無料エリアはなくならない。なくさない」。日本一のアイドル見本市であることが絶対なので、「なんだ、あれ、あの子かわいいな」と通り掛かりのお客さんも観て楽しめるようにしています。放送、配信に関しては僕が直接担当していて、アイドルフェスの中でも特に力を入れています。フジテレビ、CS、BS、スペースシャワーTVで放送、ニコニコ生放送、ニコニコチャンネル、フジテレビオンデマンド、楽天SHOWTIME、SHOWROOMなどで配信していますが、これもやはり有料だけでなく無料でも楽しめて、どれだけお客さんに観てもらえるかが重要だという上での取り組み。もちろん有料で会場に来ていただけると僕らは助かるわけですが、「今日は無銭でいいや」というのであれば、それはそれで一つの楽しみ方ですので。
——今では、無銭というのがアイドルシーンの中では定着していますし、インストアイベント、もっと言えばストリートでライブをやるということが活動の原点だったりします。『TIF』が長く続いているからこそ、SMILE GARDENでライブを観た人が、翌年チケットを買うということがフェスに繋がっていくことだと思います。
濵田:そうですね。最初が無料という「フリーミアム」のようなものですよね。そういう意味で一番機能しているのは、僕はアイドルとの握手会会場であるGREETING AREAだと思っています。チケットがなくても無料でふらっと入れて、アイドルと触れ合うことができるので、そういう場所があることが『TIF』の継続にいい効果があると思っています。
——無料ステージのSMILE GARDEN、フジテレビ湾岸スタジオ屋上に位置するSKY STAGEに言えることですが、昨年からジャンプやリフトに対しての呼びかけが特に強くなりました。
濵田:はっきり言って、本意ではないです。規制されたりするのは、気持ちがいいわけないですよね。安全面を考慮して事故防止のため、やむを得ず禁止させていただいております。
——昨年はその規制からドラマが生まれるアイドルもいました。
濵田:ブッキングの段階で激しいお客さんがいるグループは前もって分かっているわけです。それをなぜ、我々はSKY STAGEに置いてたのかという話ですよね。反省もほかにいろいろある中で、改善の一つとして、セキュリティレベルの高い会場でライブをしてもらうなど、前もって分かっているのであれば対応はしようと思います。
——『SUMMER SONIC』などではすでに導入しているVIPチケットの販売も特徴的です。
濵田:VIPチケットは、整理券制がないところには優先で入れるし、整理券制があるところには整理券を持った上で優先入場ができます。フジテレビということで、本気でVIPをやると面白くないので面白い企画を大量に作ろうとしてますね。実はVIPチケットは2010年に一度販売していて、その時は当時のプロデューサーがハードなクレームやご意見を終日受けたということを伝え聞いてはいたのですが、今年またやってみるかと始めてみました。当日が怖いですよね……(笑)。
——当日、楽しみにしています(笑)。改めて今年の『TIF』はどのようなフェスになるのでしょうか。
濵田:とにかく、様々な方々とコラボをしたり手を組んでいる、その多様性を感じていただきたいです。先ほど挙げた放送配信に関してもそうですし、雑誌とのコラボで言えば、『週刊プレイボーイ』『週刊ヤングジャンプ』『Zipper』などとの取り組みですね。考えられるメディアを網羅して取り組ませていただいているつもりです。『TIF』に参加するということは、そういった多様性の中にアイドルファンが身を置くということですので、その幅の広さに浸りながら、自分が推しているアイドル、まだ見ぬアイドルがそこでどのように活躍するかを感じていただきたいと思っているのがあります。あとは、企画としてのライブイベントは例年通り充実させます。『スパークリングNIGHT!!』などバラエティー要素の企画もあります。アイドルとどれだけ触れ合える企画についても相当多様です。1日では体が2つ3つ欲しいと思われるかもしれません。
——最後に、濵田さんが考える今後の『TIF』の展望を聞かせてください。
濵田:『TIF』はどんどん大きくなると思います。規模の拡大の仕方がどんな風になっていくのか、これはアイドルシーンのトレンドに寄り添っていくことになりますが。そして、その時々のアイドルの活動と良さを、変な角度をつけずに伝えることがテレビ局がやるアイドルフェスの姿だと思います。一番に良いものを見つけるというよりは、「これいいよ」と言われ始めたアイドルを見つけてきて、皆さんに触れ回るのが『TIF』の役割だと思います。メディアとしてのアイドルフェスの運営の仕方がこの7年で出来たという自負があるので、これからもアイドルシーンの良さを余すことなく伝える存在でありたいと思っています。国内だけでなく海外に向けてもそうですし、男性ファンのみならず女性ファンに対しても、アイドルの良さを伝えていければと思います。
(取材・文=渡辺彰浩)