OBLIVION DUST、新作『DIRT』でロック最前線へ! 兵庫慎司がバンドの歩みと現在地を読む

 話を戻すと、ブンブンが「ダンスからロックへのアプローチ」だったとするなら、その逆の「ロックからダンス・ミュージックへのアプローチ」の、当時もっとも早く、そしてもっともすぐれた例がOBLIVION DUSTだったのではないか。

 申し訳ないが、当時はそんなふうには思っていなかった。前述のプロディジーのオープニング・アクトのステージも観ているのに、新しくて本格的なオルタナティヴ/ヘヴィ・ロックのバンドなんだな、という認識をしていた。いや、「当時は」というか、再結成した最初のアルバムの頃になっても、まだそんなふうに思っていた気がする。

 ただ、僕みたいなどんくさい奴はわかっていなかったが、ちゃんとそこにひっかかっている耳のいい人もいる。それが後続のミュージシャンたちだった、ということだ。

 たとえばCrossfaith、たとえばcoldrain、あと、もっと上の世代だとPay money To my Painあたりまで入れてもいいかもしれないが、それらのバンドの新しくてラディカルな音を聴いたり、すばらしいライブ・パフォーマンスを観たりした時に、「あ、でもこの空気、なんか知ってるな。どこかで出会ってるな」と感じることが何度もあったのだが、「そうだ、OBLIVION DUSTだ」と気がついたのだった、『DIRT』を聴いて。

 前作や前々作でそう感じたってよさそうなもんなのに、なんで今。というのは、僕がどんくさいのもあるが、バンド側の音のアプローチも変わったのかもしれない。よりストレートに、よりシンプルな方向に。

 元々プレイヤーとしてすぐれたメンバーが集まっている上に、K.A.Zのコンポーザーでありアレンジャーでありサウンド・プロデューサーでありエンジニアでもある、という資質もあってか、とてもハイ・クオリティだが、そのレベルの高さや複雑さが必ずしも聴き手に伝わらないこともあったりもする。OBLIVION DUSTのサウンド・プロダクトはそういうものだったのかもしれない。と、シンプルでストレートな楽曲が並んだ『DIRT』を聴いていると思う。ギターをギャーン!が鳴った瞬間に「うわあかっこいい」と思考放棄して盛り上がってしまう、ロックにはそういうよさもあるが、これまでの作品の中で、もっともそんな直接性が前に出ている気がする、この7曲は。

 リズムは重くて速くてまっすぐで、リフはシャープでかっこよく、シーケンスは不穏さや危険さをかきたて、そして歌はドラマチックに。それ普通じゃん、と言われそうだが、やっているのがOBLIVION DUSTだから普通にはならない。そして、そんなようにシンプルになったことで、「ルーツであること」と「現在であること」の両方が表れている音になった、と言える。

 VAMPSはすごく精力的に活動しているし、RIKIJIはOBLIVION DUST以前からMEGA 8 BALLのベーシストである上に、現在も特撮などのサポートを務めているし、再結成時からサポートを務めるドラムのARIMATSUは、K.A.Zと共にVAMPSで、RIKIJIと共に特撮でもプレイしている。KENのFAKE?も続行中だ。

 というような状況なので、常にこのバンドが動いている状態にするのは、どうやら難しいことのようだ。再結成以降、短いツアーは毎年のように行っているが、新作はこの『DIRT』で3枚目、しかも前作から4年も空いている。

 ただ、この作品と、8月に行われる5本のツアー以降は、何かが変わってくるのではないか、という予感がする。こんなに攻めた、こんなに今の音の作品を作ってリリースする、ということは。

(文=兵庫慎司)

※記事初出時に一部内容に誤りがございました。訂正してお詫び申し上げます。

■リリース情報
New Mini ALBUM 『DIRT』
発売:2016年7月20日(水)
価格:¥2,100(税抜)
全7曲入り
<収録曲>
1 Death Surf
2 Lolita
3 Evidence
4 Under My Skin
5 Nightcrawler
6 Caprice
7 In Motion

■ツアー情報
5大都市ツアー
『Dirty Heat Tour 2016』
8月3日 福岡BEAT STATION open18:30 start19:00
8月5日 大阪UMEDA QUATTRO open18:15 start19:00
8月6日 名古屋SPADE BOX open18:00 start18:30
8月09日 仙台darwin open18:30 start19:00
8月11日 渋谷TSUTAYA O-EAST open18:15 start19:00

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