KinKi Kids、“歌謡”のワードで結ばれた吉井和哉との必然コラボ 7月20日発売の注目新譜5選

THE BAWDIES × go!go!vanillas『Rockin’ Zombies』(SG)

 レーベルもマネジメントも同じ先輩・後輩バンドによるスプリット・シングル。THE BAWDIESの「45s」はノイジーかつエッジーなギターリフ、シンプルで荒々しいビートが突き刺さるガレージテイスト満載のナンバー。原点回帰とも言えるアグレッシブなサウンドメイク、ROYの乱暴なボーカリゼーションも強烈なインパクトを放っている。そしてgo!go!vanillasの「ヒンキーディンキーパーティクルー」はカントリーのテイストをたっぷりと取り入れたパーティ・チューン。気持ちよく開放されていくメロディラインからは、このバンドのポップセンスの高さがしっかりと伝わってくる。“ロックンロールへの憧れと愛着を2016年の音楽へつなげる”というテーマを掲げる両バンドだが、そのスタイルはほとんど真逆と言っていい。本作を通してバンドの個性の違いを確認できたこと、そして、ロックンロールという音楽の多様性を改めて感じられたことの意味はきわめて大きいと思う。

THE BAWDIES × go!go!vanillas - Rockin' Zombies Parallel Documentary Trailer

YEN TOWN BAND『diverse journey』(AL)

 前作『MONTAGE』(1996年)以来、20年ぶりとなる新作アルバム。“もともと映画『スワロウテイル』(1996年)の劇中バンドとして立ち上げられたYEN TOWN BANDが今活動する意図は?”という論考は多くのメディアでなされたわけだが、まずはそういう文脈を抜きして、真っ新の状態でこのアルバムを聴いてみてほしい。60〜70年代のオーガニックなロックミュージックの手触りを残しながら、2010年代の新しいロックサウンドを構築する試み、そして、アルバム全体を通してディテールを作り込み、それを壮大な世界観ーー本来の意味通り、世界全体を定義しようとする行為ーーへと結実させるコンセプトワーク。ヒットメイカーは数多いが、アルバムというフォーマットをここまで有意義に機能させられるプロデューサーは小林武史以外には見当たらない。情報をチェックするように聴き流すのではなく、じっくりと時間をかけて音楽を堪能することの豊かさをぜひ体験してほしいと思う。

YEN TOWN BAND「アイノネ」

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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