柴那典「フェス文化論」 第13回
10-FEET主催フェス「京都大作戦」はなぜ特別な場所であり続けている? 2日間の熱狂を5つのポイントから解析
仲間意識とスペシャルなコラボ
4つ目のポイントは、ここでしか見れないレアなコラボが多数飛び出すということ。主催者の10-FEETはトリに出演するだけじゃなく、ちょくちょく他のバンドのステージに飛び入りする。出演陣同士のコラボもある。
今年は東京スカパラダイスオーケストラが「コラボ祭り」を見せてくれた。まずはTAKUMAを迎えて10-FEET「hammer ska」カバーを披露し、「閃光」では10-FEETの3人に加えてROTTENGRAFFTYのNOBUYA&N∀OKIも乱入。さらにはお揃いの白いジャケットに身を包んだKen Yokoyamaが登場して最新シングル曲「道なき道、反骨の。」と「Punk Rock Dream」のカバーを披露。スペシャル尽くしのステージだった。
他にもリスペクトの意を込めて10-FEETのカバーを披露するバンドも多い。今年はWANIMAのKO−SHIN(G)がTAKUMAから貰ったというギターを掲げて「VIBES BY VIBES」をカバーし、Dragon Ashは「under the umber shine」をカバーしていた。そのたびにTAKUMAもステージに表れ、共演する。
2日間のトリをつとめる10-FEETのステージでもコラボは目玉の一つだ。1日目の「super stomper」では、「ずっと太陽が丘を一緒に盛り上げてくれている仲間を呼んでいいですか?」とTAKUMAが告げ、屋内ステージ「鞍馬ノ間」で行われているバスケの3on3大会に出場している大阪籠球会のメンバーがステージに登場。バスケットボールを用いた鮮やかなダンスを繰り広げた。2日目では「STONE COLD BREAK」にFIRE BALLの4人が登場、「2%」ではアルバム『6-feat』でもフィーチャリング参加していた湘南乃風が飛び入りし、「RIVER」ではkjがオーディエンスを力強く煽る。まさにその日のオールスターが集うようなステージとなっていた。
コラボを通して、10-FEETを中心としたバンドやアーティストたちの強い仲間意識が感じられるのが、京都大作戦という場所なのである。
10-FEETが持つ巨大な求心力
そして5つ目のポイントは、上とも重なるが、全ての出演陣からバトンを渡されてトリに出演する10-FEETが、とにかく素晴らしいライブを見せること。いまや日本のフェスシーンを代表するバンドになった10-FEETだが、京都大作戦で見せるライブでは他とは段違いの一体感が生まれる。「goes on」「4REST」「RIVER」「その向こうへ」など、クライマックスがずっと続くような熱狂に包まれる。
今年はリリースを控えた新曲「アンテナラスト」が初披露されたことも大きかった。TAKUMAはMCで「過去の悲しみが今日の楽しさを照らしています」と語り、「お前らもいろいろあるんやろ! 絶対負けんなよ!」と叫び、切々と歌い上げるメロディからアグレッシブな爆音に展開する4年ぶりの新曲を披露した。この曲の持つとても真摯なメッセージ性が、オーディエンスの一人ひとりに伝わっているのも感じ取れた。
以前に、当サイトの連載「フェス文化論」にて、怒髪天・増子直純、10-FEET・TAKUMA、G-FREAK FACTORY・茂木洋晃の3名に鼎談をしてもらったことがある。(参考:怒髪天・増子 × 10-FEET・TAKUMA × G-FREAK FACTORY・茂木、これからのフェス文化を語る)
そこで増子直純が語っていたのが、バックヤードの雰囲気はお客さんにも確実に伝わる、ということ。出演するバンド同士の結びつきの強さはステージ上にも必ず表れる。その結束力がオーディエンスに伝わるからこそ、参加者が「お客様」にならず、一人ひとりが主体性を持ってイベント全体を成功させる一体感が生まれる。
いまやミュージシャン主催型フェスの代表格となった京都大作戦。その特別な雰囲気は、10-FEETというバンドが持つ求心力と信頼感、TAKUMAという人が持つ人間力そのものと、強く結びついている。
だからこそ、京都大作戦はここまで広く、深く愛され続けているのだろう。
(写真=HayachiN)
■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」/Twitter